マンスリーレポート

2007年3月号 都心のプライマリケア・クリニック

すてらめいとクリニックがオープンして2ヶ月がたちました。

 すてらめいとクリニックの最も基本的なコンセプトは"どんな方のどんな症状でも診ます"ということもあり、この2ヵ月の間に、本当に様々な患者さんが来られました。

 単に、「風邪をひいた」「包丁で指を切った」「肩がこる」「じんましんが出た」「眠れない」などの訴えもあれば、問診だけで数十分かかる大変複雑な悩みもあります。

 また、遠方から来られる方も少なくなく、遠いところでは、岐阜県、高知県、広島県などからも、すてらめいとクリニックに受診する目的で大阪までやって来られた方もいました。診察代よりも往復の交通費の方がはるかに高額になることを考えると、申し訳ない気持ちになります。

 よく、「日本の医師は僻地では不足しているけれど都心部では余っている」と言われることがありますが、すてらめいとクリニックの最初の2ヶ月だけをみても、医師は余っているどころか、まったく足りていないことが分かります。

 ちなみに、2005年に財団法人社会経済生産性本部が発表した「国民の豊かさの国際比較」によりますと、「人口あたりの医師数」は先進国30か国中、日本は27位です。「人口あたりの看護師数」は19位で、医師よりは少しはましにみえますが、これは看護師の資格を持っている人数で算出されていますから、日本の看護師が結婚や出産を契機に辞めていく人が多いという特徴を考慮すると、看護師不足も医師不足と同様に深刻であると言えます。

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 この2ヵ月間のすてらめいとクリニックの患者さんを振り返ると、やはり季節の影響もあって花粉症とインフルエンザが目立ちます。また、すてらめいとクリニックでは提携エステティックサロンと協力して美容医療もおこなっていますので、ピーリングや脱毛といった施術を希望される患者さんもおられます。さらに、プラセンタの注射で通院される方も少しずつ増えてきています。

 問診だけでけっこうな時間のかかる複雑な悩みをもたれている患者さんが多いのもすてらめいとクリニックの特徴かもしれません。その内容は、ここに書くべきではないと思いますが、家族や友達、恋人にも言えないような悩みを抱えている方も少なくありません。クリニックの診察室が防音設備をかねそろえていることもあって、患者さんの多くは様々な想いを話されます。なかには、思い余って涙を見せる方もおられます。

 もうひとつ、すてらめいとクリニックを受診される方でよくあるのが、HIVやB型/C型肝炎、クラミジアなどの性感染症の検査や治療目的で受診される患者さんです。実際、ほぼ毎日これらの悩みを持っている人が来られます。すてらめいとクリニックは"どんな方のどんな症状でも診ます"とは言っているものの、標榜科目に「泌尿器科「産婦人科」「性病科」などはありません。にもかかわらず、HIVやB型/C型肝炎の検査目的の受診が多いのは、こういった感染症の増加に対して日本の医療機関が全体として対応できていないということなのかもしれません。

 患者さんの層を年齢別でみてみると、やはり都心部に位置していることから若い方が目立ちます。データはまだきちんととっていませんが、平均患者年齢はおそらく30歳前後だろうと思います。これは(小児科を除く)医療機関ではかなり若いのではないかと思われます。(私は今でも毎週木曜日にある大病院の皮膚科外来をおこなっていますが、そこでの平均年齢はおそらく70歳前後だと思います) 

 男女比については、おそらく半々くらいであろうと思われます。これが不思議なことに、ある日は男性が多かったりまた別の日は女性が多かったりと、なぜか日によって偏りがあります。

 外国人が多いのも特徴といえるかもしれません。いずれ英語のホームページも作成することを検討しているのですが、遅れていてまだ着手すらできていません。しかし、都心部に位置するクリニックでは必然的に外国人の患者さんの割合が増えます。今のところ、英語以外の外国語でコミュニケーションをとらなければならない機会はありませんが、今後は英語以外の母国語しか話せない方も来られるでしょうから、これからの課題となりそうです。

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 すてらめいとクリニックのような都心部でのプライマリケア・クリニックは、従来のステレオタイプ的な古典的なクリニックとは少し趣が異なります。さまざまな環境におられる方がさまざまな悩みを抱えて受診されます。

 電話帳や広告、チラシ、看板などの一切のPR活動をおこなっていないにもかかわらず、いろんな患者さんが来られるのは、それだけ日本の医師が不足しているからというだけでなく、「都心のプライマリケア・クリニック」が不足しているからではないでしょうか。