医療ニュース

2010年5月24日(月) 妊娠中の飲酒、子供の白血病のリスク上昇

 最近、飲酒が(それも大量の飲酒が!)血液系の悪性腫瘍のリスクを低減させる、という(意外な!)研究結果をお伝えしましたが(下記参照)、今度はまったく正反対の研究結果が発表されました。

 妊娠中の飲酒で、産まれてくる子供の白血病のリスクが上昇する・・・

 これは、仏パリ大学栄養疫学研究部のPaule Latino-Martel博士らが調査をおこない、医学誌『Cancer Epidemiology, Markers & Prevention』2010年5月号(オンライン版)に掲載された研究結果(下記参照)です。

 研究者らは、「妊娠中の女性のアルコール摂取と2種類の白血病(急性骨髄性白血病と急性リンパ芽球性白血病)との関連」を検討したこれまでに報告されている21件のデータを分析することによって調査をおこないました。

 8,000人以上の飲酒をするグループと、10,000人以上の飲酒をしないグループで比較した結果、子供が急性骨髄性白血病に罹患するリスクが56%も高まっていたことが判りました。妊娠してどれくらいの期間がたってからの飲酒でリスクが上昇するかについては一定の傾向はなかったそうですが、アルコールの摂取量が多ければ多いほどリスクは高くなるのは明らかなようです。一方、急性リンパ芽球性白血病では飲酒による差は認められなかったとのことです。

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 妊娠中の飲酒の危険性は以前から指摘されていたことです。

 胎児アルコール症候群という病名を聞いたことがあるでしょうか。これは妊娠中に母親が飲酒することにより、生まれてくる子供に成長障害、知的障害などみられることを言います。有効な治療はなく、「妊娠中の飲酒を控える」以外に予防方法はありません。

 今回の白血病のリスクが上昇するという研究結果も、広い意味では胎児アルコール症候群の1つの症状と言えなくもないでしょう。

 参考までに、どれくらいの妊婦が飲酒をしているかについて、この論文では、米国12%、フランス52%、ロシア60%、としています。日本のデータについては、厚生労働省の平成12年の報告書に18.1%とあります。(アメリカより日本の妊婦さんの方がよくお酒を飲むのですね・・・)

(谷口恭)

参考:医療ニュース2010年5月21日 「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」

注:上記論文のタイトルは、「Maternal Alcohol Consumption during Pregnancy and Risk of Childhood Leukemia: Systematic Review and Meta-analysis」で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://cebp.aacrjournals.org/content/19/5/1238.abstract