医療ニュース

2010年6月25日(金) 世界の飢餓人口は増加する一方

 「ミレニアム開発目標(MDG)」という言葉をご存知でしょうか。

 ミレニアム開発目標とは、簡単に言えば、世界の平和・安全・貧困・環境・人権などの問題に関して地球規模で取り組んでいきましょう、という、国連が主体となって掲げている目標のことで、2000年9月にニューヨークで開催された国連サミットで採択されました。(先日お伝えした医療ニュース「5歳未満の子供の死亡数は世界で約880万人」のなかでもミレニアム開発目標について触れています)

 そのミレニアム開発目標のなかに「飢餓の撲滅」という項目があり、「2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる」という目標が掲げられています。

 しかし、この目標達成は実現しそうにありません。6月23日にReuterが、同日に国連が発表したミレニアム開発目標の年次報告を報道しているのですが(注1)、2008年~2009年の食糧危機や金融危機のために、飢餓人口は増加傾向にあるようです。栄養不足の世界の人数が1990年~1992年に8億1,700万人だったのが、2005年から2007年に8億3千万人に増え、さらに2009年には10億人を超えたと試算されています。

 ミレニアム開発目標には「貧困の撲滅」の項目もあります。1日1ドル25セント(注2)で暮らす人口の割合は、1990年には18億人でしたが、2015年には9億2千万人にまで減少すると国連は推測しています。ミレニアム開発目標では「2015年までに貧困者の割合を1990年の水準の半数に減少させる」としていますから、こちらの目標はもうひとがんばりで達成できそうな見込みです。Reuterは、この原因として中国やインドの経済成長を挙げています。

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 最近、患者さんに対する食事指導に使う目的で、『外食カロリーブック』という本を購入しました。この本自体は大変わかりやすく実用的なのですが、外食するときに「食べ物をいかに残すか」という観点で書かれています。例えば、マカロニグラタンなら「1/2を残す」といった感じです。我々は、食べ物をいかに残すかを考えて健康管理をしなければならない、というわけです。

 一方、世界に目を向けると飢餓人口は増加傾向に拍車がかかっています。10億人以上もの人が毎日食べるものがなくて苦しんでいるのが現実だというわけです。だからと言って、お金を途上国に送れ、と言いたいわけではありません。ただ、食べ物を残すときには、飢餓で苦しんでいる人たちが大勢いることを忘れてはならない、と私は感じています。

(谷口恭)

注1:このニュースのタイトルは、「Fight against hunger hit by economic crisis-UN」で、下記のURLで読むことができます。

http://www.reuters.com/article/idUSN23223467._CH_.2400


注2:Reuterの記事では、「1日に1ドル25セント未満」とされていますが、ミレニアム開発目標が設定されたときは、「1日に1ドル未満」だったはずです。実際、外務省のウェブサイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html)にはそのように書かれています。これは目標設定が変わったのでしょうか。ご存知の方おられましたら教えてください。