ピルの効用
2006年2月1日、社団法人日本産婦人科学会が、ピルの使用のガイドライン改訂版を発表したのをご存知でしょうか。(ガイドラインの正式名称は「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」)
これにより、ピルの処方のハードルが一気に低くなりました。「低くなった」と言っても、1999年に発表されたガイドラインが諸外国のものから大きく逸脱していたために、実際には「諸外国と同じようになった」というのが正しい見方です。
ガイドラインが改訂される前は、ピル服用までに数々の検査を自費でおこなわなければならなかったために、6万円以上もの費用がピル代以外に必要となっていました。
今回ガイドラインが改訂となったために処方前の必須検査はほとんど不要となり、必要な人に必要な検査をおこなうのみとなりました。その結果、ピル代以外の料金がほとんど不要になったというわけです。
ピルの使用で注目すべき点は他にもあります。以前はピルと言えば「避妊」のために使うものという認識が一般的でしたが、最近はそれ以外の用途に使う人の方がむしろ増えてきています。具体的には、ニキビの改善、過多月経や不正出血の治療、生理痛の緩和、貧血の改善、リウマチの症状の緩和、などに用いられるケースが増えてきており、これらの効能についてはガイドラインにも明記されています。
太融寺町谷口医院でも様々な目的でピルを処方しています。ここでは日頃患者さんからよく受けるご質問をQ&A方式でまとめておきたいと思います。
Q1 ピルを飲みだす前に必要な検査は?
Q2 ピルが飲めない場合があるって聞いたんですが・・・
Q3 ピルの避妊以外の効果って?
Q4 ピルは生理をずらすこともできるって聞いたんですけど・・・
Q5 妊娠してからでも効果があるピルのことを聞いたのですが・・・
Q6 ピルの副作用は?
Q7 ピルを飲むと太るって聞いたんですけど・・・
Q8 ピルの価格は?
Q1 ピルを飲みだす前に必要な検査は?
A1 ガイドライン改訂後に必要となった検査は、問診、血圧、体重測定(自己申告可)のみです。これらはすべて診察代金に含まれます。患者さんによっては、血液検査(特に凝固系)が必要となります。また、ご希望があれば、子宮頚癌の細胞診や他の性感染症の検査をおこなうこともあります。患者さんによっては乳がんの検査が必要となりますが、当クリニックではできないために、この場合のみ近くの専門クリニックに検査を受けに行っていただいています。
Q2 ピルが飲めない場合があるって聞いたんですが・・・
A2 ピルを飲むべきでない、または飲むにあたって注意が必要な人は次のとおりです。
@35歳以上のヘビースモーカー
ABMIが30以上の肥満(BMIとは、体重(kg)/身長(m)2であらわす肥満の指標です。例えば、身長160センチの人であれば、1.6x1.6x30=76.8kg以上であればピルは飲めません)
B高血圧 (収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上であればピルは飲めません)
C本人もしくは血縁者が静脈血栓塞栓症を起こしたことがある場合
D片頭痛のある人(絶対に飲めないというわけではありませんが片頭痛がピルにより悪化する可能性があります)
*ただし、上記に該当する方であっても、半年に1回を目安に定期検査を行った上で、安心してピルを服用していただける方も多くいらっしゃいます。診察時、ご相談ください。
Q3 ピルの避妊以外の効果って?
A3 改訂されたガイドラインには次のようなピルの効用が記載されています。
@月経困難症(生理痛、生理が不定期など)
A過多月経(生理の量が多い)
B子宮内膜症(痛みをやわらげます。ただし子宮内膜症の治療自体は当クリニックではできません。必要に応じて専門医を紹介します)
C貧血(生理の量が多くて貧血になっている人に効果があります)
D卵巣嚢胞/卵巣嚢腫(これらにも効果があります。ただし手術が必要な可能性のある場合は専門医を紹介します)
Eニキビ(個人差はありますが非常に効果があります)
F関節リウマチ(はっきりとした機序は不明ですが関節痛の緩和が期待できます)
Gその他(良性乳房疾患、子宮体癌、卵巣癌、大腸癌、骨粗しょう症など)
また、ガイドラインに記載はありませんが、不正出血や月経前緊張症候群などにも効果があったと答える人は少なくありません。
Q4 ピルは生理をずらすこともできるって聞いたんですけど・・・
A4 通常、生理をずらす場合は、より確実な効果を期待して、低用量ピルではなく中用量ピルを用います。生理を早めることも遅らせることもできますが、より確実なのは生理を遅らせる方法です。中用量ピルを予定日の5〜7日前から必要な日まで1日1錠飲みます。
Q5 妊娠してからでも効果があるピルのことを聞いたのですが・・・
A5 あります。
緊急避妊ピル(モーニングアフターピル)と呼ばれているものです。妊娠したかもしれない瞬間から72時間以内に中用量ピルを2錠内服し、その12時間後にさらに2錠内服します。これで完全に100%とは言えないもののほぼ完全に妊娠を防ぐことができます。ただし、避妊目的で
緊急避妊ピル(モーニングアフターピル)を飲むべきではありません。
緊急避妊ピル(モーニングアフターピル)の適用は、コンドームが破けたなどのアクシデントやレイプのときなど、あくまでも緊急時の対応です。
Q6 ピルの副作用は?
A6 中用量ピルであれば5人に1人程度は吐き気を訴えます。当クリニックでは、
緊急避妊ピル(モーニングアフターピル)や生理をずらす目的で中用量ピルを内服してもらう場合、患者さんによっては吐き気止めを一緒に処方するようにしています。
低用量ピルの場合は、副作用はほとんどないと言っても過言ではないと思いますが、報告されているのは、吐き気、乳房緊満感、湿疹、頭痛(特に片頭痛)、乳房痛などです。ほとんどは、ピルを飲み続けるうちに減少していきますが、片頭痛が起こった場合は中止した方がいいこともあります。
Q7 ピルを飲むと太るって聞いたんですけど・・・
A7 これは日常患者さんから最もよく聞かれる質問です。しかし、ピルを飲んで太るという根拠はありません。OC情報センターによる「2005年度版低用量ピルに関する意識調査」でも、「飲み始める前の不安」の項目に「太る」と答えた人は少なくありませんが、「服用を開始してから不満な点」に「太った」と答えた人はひとりもいません。
また、これまでに世界規模の5つの研究がおこなわれていますが、いずれも、ピルは太るという結果は出ていません。
しかし、たしかに患者さんのなかには「ピルを飲みだしてから太った」と答える人がいます。この原因は、生理痛がなくなったために食欲が亢進していることや、乳房が大きくなったことが関係しているのではないか、と私は考えています。
Q8 ピルの価格は?
A8 当クリニックで常備している低用量ピルは、アンジュ、トリキュラー、トライディオール、マーベロン、シンフェーズの28日型およびオーソMの21日型です。価格はいずれも2,600円です。他のピルについてもご希望があればご相談ください。
ピルの処方には初回には必ず診察が必要で診察代もかかります。診察代金は3,300円です。ただし、当クリニックに他の症状でかかっていて新たにピルを処方する場合(例えば、ニキビや生理痛で通院していて新たにピルを処方する場合など)、新たな初診料は不要です。
2010年8月9日
太融寺町谷口医院
院長 谷口恭
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