ステロイド外用の指導


ステロイド外用ほど説明に苦労する薬はないと言えると思います。まず、ステロイドとは何かを理解してもらわねばなりません。ステロイド忌避の人にはある程度慣れないと”完敗”してしまいますし、その逆にOTCのステロイドを不適切に使用し副作用が生じているような人もいます。身体の部位によって強度を使い分けねばなりませんし、部位によって塗る回数を変えるべきことや、量に変化をつけねばならないこともあり、軟膏・クリーム・ローションをどう使い分けるか、何日後に再診すべきか、他のスキンケア製品との相性は、塗る順番は…、と伝えなければならないことが非常にたくさんあります。限られた時間のなかでその患者さんにとって重要なことを効率的に伝えるには豊富な知識と経験が必要になります。
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ステロイドの説明で私が1番患者さんに強く説明するのは、1週間以内にたっぷりと(3~4回/日)ということです。塗る量や回数が少ないと、炎症や痒みはなかなか改善せず、結果的にだらだらと塗り続けてしまうという患者さんが多いからです。なので、説明の時には何度もしつこいぐらい繰り返し言います。ステロイド外用薬で(タクロリムスを用いずに)「治療→維持(プロアクティブ療法)」をする患者さんには、「治療中は1日何回もたっぷりと、維持の段階では1日1回薄く(さらにその後漸減)」ということを説明中たびたび言うようにしています。ステロイド外用薬の副作用を伝えるとともに、ステロイド自体が危険な薬であると誤解させぬよう注意しています。炎症を短期間で抑える分には問題はなく、長期の連用・蓄積で副作用が出るということ、使い方が重要になってくるということをいかに分かりやすく患者さんに伝えるかは思いのほか難しく、日々試行錯誤しています。(看護師・林比加里)


私は当院に来るまでステロイド外用薬の塗り方について意識したことが正直ありませんでした。診察の時に、「前医ではいつまでステロイドを塗るように言われたか」と医師が問診すると、「聞いていません、ずっとは塗っていません。症状の強いときだけです」と言われる患者さんをみることが多いです。当院に勤めて、炎症を短期間で抑えるようなステロイドの使用方法を伝えること、長期の連用・蓄積が原因となる副作用を理解してもらうことが大事だと学びました。また、アトピー性皮膚炎のような使用をやめると症状が再発するような皮膚疾患の場合、維持療法(プロアクティブ療法)といって症状がでないようにする方法があることを知りました。今まで説明してこなかったことを反省しつつ、私のようにこれらを知らなかった看護師さんはぜひ患者さんや他のスタッフに伝えてほしいです。(看護師・安田とよみ)

診察での医師による説明は分かりやすく、はじめはそれだけで充分だと思っていました。しかしステロイドでいったん症状がなくなってもそのあとの維持療法がきちんと理解されていないことが多く、再度悪化して来院される症例や、コントロール不十分なのに患者さんがそれで良いと思っている症例は意外に多くあります。指導の内容は盛りだくさんであり、難しいことに気づかされ、看護師のフォローも大事だと感じるようになりました。指導時は細かいことまで質問され、返答に困り医師に確認することも多いです。うまく説明できたと思ってもなかなか理解されないこともあり、振り返りや日々の症例から学ぶことの大事さを感じています。(看護師・安田とよみ)