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第8回「さまざまなセックスのかたち」その3
トランスジェンダーと名前
こんにちは。 2008年8月、チベット弾圧と、抗議のゆくえで注目を呼んだ
北京オリンピックも競技が始まり、選手たちの活躍に目が釘付けになってしまう
夏ですが、みなさまはオリンピックはご覧になっていますか?オープニングでは、
中国選手団の先頭を、ちいさな国の英雄(四川の地震で損壊した小学校の中で、
歌を歌うことを呼びかけて同級生を励まし、友だちを助けた小2の少年)が旗手
と共に歩いていました。頭にまだ残る怪我の痕も画面に映っていましたね。
開会式の行進を演出したのは、張芸謀(チャンイーモウ)監督。
彼は、中国56民族の民族衣装姿を世界に示しました。
わたしは、それを見ていてなかなかやるなぁと思ったの。
中国政府にしてみたら、少数民族も人民共和国の一員として行進することで、
党の組織力、国の統率力を世界に誇る狙いがあったでしょうし、その意図を十分
知って取り込みながら、監督は、この大国に生きる人々の一様ではない文化を形
に取り出して見せることで、言葉以上に雄弁に、堂々と「多様性と人の生きる力」
を伝えたのではないだろうかと、わたしは感じました。
みなさんは、どう思われたでしょうか。
わたしは、民族衣装が大好き。ミクロネシアのアースカラーや、西アフリカの
インパクトの強いカラフルな色調も楽しいし、日本の選手団だって、浴衣や甚平
さんを着てうちわで扇ぎながら、からんからんと下駄で入場行進すれば、中国の
熱い夏に、粋だったのになー。
そう、7月7日の朝につぼみをつけた月のうさぎ家の蓮ですが、見てください!

18日、雨の日に生まれました。
一輪の蓮はほんとに息を呑むほど美しくて、いつまでも飽かず眺めていました。
ぴんと張った花びらにすうっと入った縦の筋、先端の濃いピンクから少しずつ
透んだ乳白色に近づいていくグラデーション、自然界の精緻な営みに打たれます。
何とも言えず、懐かしい古代の香りがベランダ一帯に漂い、出勤したくないほど
でした!(ゆたか~な気持ちで出勤しましたが)蓮の一輪の寿命は4日。今は、
大切な友人がくださった苔の鉢の横で、花が終わった後の果托が、まだ緑色に
輝いています。
さて、前回までに男女の性別はどうやってきまるの?について、胎児の時代から
お話ししてきました。性別というのはくっきり白か黒か、XかYかと決まらない
元々連続性のものなのだという説明でした。
それが、どうして医療と関係するのか、というところでコンティニューでしたね。
わたしが以前、働いていたある外来に、こんな電話がかかってきました。
「おりものの具合が悪いんです。実は、手術で造った膣なんですけど、診察をして
もらうことはできますか?」通常、手術後の不調があれば、その手術をした病院に
行っていただくことが一番よいのです。どのような手術をしたのか、手術後の経過
はどうだったのか、カルテには記されるので、継続してかかってさえいればたとえ
手術を担当した先生でなくても、的確な対処をしてくれるからです。
しかし、その方がおっしゃっていたのは、手術直後のトラブルではなくて、手術を
受けてから何年か経った後の、膣の炎症症状のようでした。そして、その方が膣の
造成の手術を受けたのは、海外の病院だったのです。電話をくださったAさんは、
すでにいろんな病院に問い合わせをして、受診を断られていたようでした。
わたしは、その方が来てくださるのを待っていました。
男性としての外観で戸籍も男性として育てられてきたけれど、自分に与えられた
男性としての性別に違和感を感じ、物心ついた時から「本来は女性のはずなのに、
どうして・・・、」という思いに苦しんでいる方は、大勢いらしゃいます。
その反対に、女性として暮らすことを余儀なくされながら男性としてのアイデン
ティティが本来であると感じていらっしゃる方もあります。
こうした方々に共通するカテゴリーとして使われているいくつかの言葉があり、
そのひとつが「トランス・ジェンダー」、医療の枠組みとしては「性同一性障害」
という診断名が使われます。
生まれたときの外観で性別を割り当てられたけれども、物心がつき=自分と外界、
自己と他者がちがうことがわかってくる頃から、その性別に違和感を持ち始める。
やがて、アイデンティティの確立、自立に向かう思春期に漠然としていた性別違和
に、定義(名前)が欲しくなっていくのは「私は何者?」という万人が持つ問いと
して普遍的欲求かもしれません。
そこで「トランスジェンダー」という考え方、あるいは「性同一性障害」という
診断名を発見したときに、自分をそこに当てはめるのではなくても、苦しんできた
のは自分だけではなかったんだ、と光明を見出したような気持ちになるでしょう。

男性として育ったけれど、ご自身では女性であると感じている(MTF)、女性
として育てられたけれど、男性の自認である(FTM)というクリアな反転だけで
なく、両性の特徴をどちらも持ち合わせていると感じている方もいらっしゃいます。
また、前々回から「満月の部屋」が扱ってきたテーマは生物学的な性別の分化、
その後の性自認にしぼって話していますが、私たち人間の生涯の発達課題である
セクシュアリティとは、さらにさらに奥深いものですよね。
その領域に医療がかかわるというのは、たいへん限られた中でのアプローチに
過ぎませんが、役割の限界は押さえつつ、当事者からの期待や社会的責任もまた
小さくはありません。そのひとつが、「性同一性障害」のための医療的支援です。
現在日本では「性同一性障害」の治療的枠組みは三段階に分けて提供されます。
一段階めは、専門的なカウンセリングです。
100人100通りのその人らしさがあり、社会的な背景(ジェンダー)も同時に
背負って生きているわけですから、その人自身と分かつことはできないセクシュ
アル・アイデンティティを扱うためには、非常に高度な専門性が必要です。
その一段階めをずっと継続しながら、二段階めの次のテーマは性ホルモンの治療
を受けるかどうか、ということになります。これは、日本では18歳にならないと
始めることはできません。しかし、あまり時期が遅くなると骨格も出来上がって
いくので、とくにMTFの場合、ごつごつした感じが残るため、諸外国のように、
もっと早い段階から始められるようになってほしい、と当事者の声も出ています。
そして、二段階めの治療が進むと、第三段階は「性別適合手術」です。
しかし、日本ではこの手術が行える病院が非常に乏しいため、何年も手術待ちを
している方が全国に大勢いらっしゃるのです。早く本来の性になり、日常生活を
当たり前にしていきたい。仕事や、勉強や、恋愛や、趣味や・・・、このような
普通の健康的な暮らしを実現するための医療が、もっと遠い夢のようなことでは
なく、提供されなければ、当事者の願いとして、早く手術を受けたいために基準
にのっとっていないところで手術することを選ぶ人が出てきます。
時に、新聞にも死亡事故が載ったりしていますし、海外に出て手術を受ければ
以前わたしが働いていた外来に電話をかけてこられた方のように、その後不調が
あった場合に、どこに相談したらいいのか判らなくて、つらい思いをするかもし
れません。Aさんの場合は、症状から、おそらくカンジダ膣炎ではなかったか、
と推察されました。女性の膣は卵巣から出るホルモンが作用し「デーデルライン
桿菌」という乳酸菌が常にいてくれるために、雑菌から守られています。
しかし、手術で整えた膣にはその菌が保たれないために、どこにでもいるような
雑菌、バクテリアの侵入にたえずさらされることになります。そこで、おりもの
の変化など、何か症状を感じたら、できるだけ早めに診察を受ければ、どんな菌
がいるのか検査をし、膣錠や注射など、適切な治療を講じることができます。
すてらめいとクリニックでは、「どのような方の、どのような健康上の悩みにも」
応えていくミッション・ステイトメントがあります。もちろん、このような感染
症の治療を行っていますし、また性別適合手術を受けてペニスはとったけれども、
膣と子宮は残しているMTFの方の子宮がんの検診などもお勧めしています。
もちろんプライバシーは厳守されます。余裕をもってご予約(午前診)の上、
ぜひ、安心して受診をなさってください。

実は、かつて電話をくださったAさんは、のちに判ったことなのですが、
20歳を過ぎたばかりでした。
「来てくれたらいいのにな、どうなったのかな」と当時、私たちスタッフは
Aさんを待っていましたが、その後も受診されることはありませんでした。
ずっと後になって、彼女が自ら命を絶ったことをききました。
その前夜、子どもの頃から一緒に遊んでいた幼なじみの女の子Mちゃんの家に
「Mちゃん、いますか?」と電話をかけてこられたそうです。でも、彼女は
たまたま外出していて出られなかった。家族からそのことをきき、
Aさんの自死を知った彼女は、「あのときに私が家に居て、あの子の呼び出し
に飛んでいけたなら、もしかしたらAちゃんは思いとどまったかもしれない」
と、泣きながら話してくれました。
少しでも接点になれたかもしれない私たちも、同じ気持ちでした。
私たちの外来に電話をくれたその頃、Aさんに何があったのかわかりません。
でも、ずっとお金を貯めて、海外まで行って造った膣の不調が続いたことが、
絶望につながる一つの要因だったかもしれない、と思うと、電話をいただいた
その時に「よかったら、ぜひこちらにいらしてください」と言わなかったこと
が悔やまれました。Aさんが、ひとりぼっちだと思って死んだのなら、つらい。
そんな痛手があり、わたしは子どもたちへの性教育を大事にしてきました。
「ひとつだけの花」今までも、そしてこれから先も同じあなたという人間は
二度と生まれてこない。強く「生まれたいよ」と思ったから、あなたはこの世
に生まれてきた。幸せになるために、人は生まれてきます。
いのちは家系図に書かれた“血縁”だけで育まれるのではありません。
ある高校生の言葉が忘れられません。 「中学の時の性教育で、第二次性徴
を習ったときに、本当にほっとしたんです。多くの人は生まれた時から自分の
性器の形のままで大人になるけど、第二次性徴というのがきて、自分も本当の
性になっていくんだ、と思った」と。周りは知らないだけで、どの地域の学校
にも、こうした問題に悩む生徒さんはいらしゃいました。
すてらめいとクリニックでは、「性同一性障害」の診療に関して相談があれば、
適切な専門機関にご紹介をさせていただきます。日本の医療の壁に希望を失って
インターネットから危険なホルモン剤の個人入手など、しないでください。
ネットで手に入れた薬の信頼性、血液検査もしないで使い続けることのリスクは
命と引き換えです。また、Aさんのように困った症状があり、誰にも相談できない、
受診先がないと思っていらっしゃる方は、ぜひおいでください。
クリニック内では、戸籍名・健康保険上の氏名とは別に普段使っていらっしゃる
お名前をおっしゃってください。
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当クリニックでは初診時の問診表に書いていただいた「呼ばれたいお名前」、
または番号札のご希望があれば対応しています。それは「名前が知られたくない」
ニーズに対応する、といったプライバシーの観点だけでなく、受診された方が生活
の中で常に使われている通称を、人として尊重したいクリニックの姿勢なのです。
具体的には、戸籍の性別変更がかなわず、違和感を持つ性別の戸籍名で呼ばれる
のが苦痛の方もいらっしゃるトランスジェンダーの方や、健康保険証に書かれた
通名ではなく、祖国の名前を使うことを選ぶ在日の外国籍の方がいらっしゃいます。
すてらめいとクリニックは、あらゆる人々が、その人らしく健康に生きることを
医療の立場からサポートしたいと願っているのです。
医療従事者は、業務上知り得た個人情報に関して、その人を守るため以外には
口にしてはならない倫理綱領を持っています。わたしは、蓮に勇気を与えられながら
鎮魂の8月に、初めてAさんのことを書きました。Aさんが私たちに教えたことを
伝えていく社会的な責任と、彼女の魂に再び出会う日が来ることを祈って。
読んでくださった方に。ありがとうございました。
2008/8/12
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第7回「さまざまなセックスのかたち」その2
人は、両方の性を併せ持って生れてくる。
こんにちは!驚くなかれ、月のうさぎ家のベランダで2年目の夏を迎えた蓮が、
なんと ピンク色のちいさなつぼみをつけたんです!
それも、夏至の最後の日、7月7日の朝でした。おお~っ、すごい。
凛と立ち上がった蓮の茎の先端にコロンと美しい色合い、葉っぱの背丈を越して、
日々、つぼみは豊かさを増していきます。また、前後するように春に満開の季節を
終えたマダガスカル・ジャスミンが再び花をつけ、蓮との協演を奏でています。
わたしは、以来 日々の楽しみが増え、水やりの後も、長い間ベランダで蚊に刺され
つつ、至福のときを過ごしているのです。

さて、6月の『満月の部屋』では、自分自身のことであっても“知らない”領域、
「性別はどうやってきまるの?」その1=胎児の時代、おかあさんのお腹のなかで、
自ら分泌する性ホルモンのシャワーを浴びることによって、卵巣から精巣に分化して
いく段階を書きました。第一段階が「染色体の性」、ここでも多様な表現形があり、
第二段階の「性腺の性」においても、クリアに男女には分かれないこと、またその後
に続く外性器の性も、ホルモン・シャワーの出方、時期は大きな個体差があるんだ、
って話をしました。
このときの胎児自身が出しているホルモンのシャワーとは、目には見えない、非常
に微量であるけれども、その人の一生に大きな影響を与えるものです。
小学校高学年に始まる思春期の「第二次性徴期」も、“疾風怒濤の季節”と呼ばれ、
男女とも性ホルモンをどんどん分泌させて、一人立ちの準備を始めていきます。
個人差はありますが、10代半ばから20代の性欲の旺盛さは、春から初夏の野の丘に
広がるたくましい雑草のようですよね。大地のミネラルや水分を吸い上げながら、
太陽に向かって背を伸ばすとともに、ぐんぐんその根を四方に拡げていく。風に揺れ、
踏み倒されても、また体勢を立て直していきます。中高生の部室とかって、なんか汗
くさくてすごかった・・・って覚えがありますが、そんな感じね。
また、妊娠、出産、授乳期にある母体も、ホルモンの大変動を乗り越えていくこと
になります。特に妊娠時期は、気持ちも落ち着かず、急に悲しくなったり、いらいら
したり、誰もわかってくれないような孤独感を感じたりします。まるで思春期の再来
ですねー。しかし、それにもまして、人の一生のうちで、最も大量に性ホルモンの波
を浴びるのは、胎児となって間もない、早い時期なんです。
性器の形は基本が女性系です。そこにアンドロゲンの刺激が加わり、クリトリスから
ペニスに、陰唇が左右から合わさっていって、袋ができます。でも、このときなかみ
はまだ入っていません。精巣は、卵巣と同じく元々はお腹の中にあり、誕生までの間
に下に降りていって、いんのうの袋に収まるのです。次の生命につながる卵子のもと
や精子を作る細胞は、すでにおかあさんのお腹の中にいる、胎児の頃から準備されて
います。
卵巣でつくられる卵子のあかちゃんは、体温の高いお腹の中で温められ、精子は温度
が低い方が好きなので、精巣はお腹の外に降りていくのです。
そのようにして外性器も発達していきますが、同時に脳の発達にも性ホルモンは作用
します。

性別分化第三段階が、「脳の性」ですね。
この時期はデリケートな性ホルモンの変化、脳が浴びるホルモン・シャワーの影響
によって、「脳で感じる性」が形成されるといわれています。
「自分が男であるか、女だと感じるか。または両方の性質を偏りなく受け継ぐか」
脳で感じる性のことを、『性自認』と呼んでいます。
しかし、外性器はすでにつくられ発達途中にあるので、性器のつくりと脳で感じる
性とが異なる場合も少なくないのです。それは、各臓器や器官の成長時期がずれる
ことから、誰でも生じ得るものなんです。これまで見てきたように、性の分化とは、
複雑な段階を踏んで発達していくので、おちんちんに見えるからといって「男の子」
とは限らないし、「女の子」として生まれ育ち、思春期の性徴を迎えたからといって、
自分自身では「女」であることに違和感を感じている人も わたしたちの社会には
大勢いるのです。
あかちゃん誕生のシーンで、「おめでとうございます、元気な女の子ですよ。」とか
「男の子ですよ」とか、取り上げた助産師さんや医師によって、あかちゃんの性別を
知らされる場面を見たことがあるでしょうか。(超音波エコー検査で生まれる前から
きいている人もいますね。)それって、あかちゃんの外性器の特徴を見て、判断して
いるんですよね。
以前テレビの「金八先生」で上戸彩さんが演じた中学生は、その人自身が認知する
男性としての性質と、からだつきの特徴が対極であるといった「性同一性障害」の
クリアなパターンでした。でも、誕生時に決められた性別に違和感を持つ人すべてが、
上戸彩さん演じる「性同一性障害」のような像「脳の性」と「性器の性」が正反対、
というわけでもありません。性の分化のプロセスは、グラデーションなのです。
わかっているのは、私はわたしであるということだけ、(でも「わたし」って、どう
いう存在なのか、性自認に悩まない人でも、よく分からないんじゃないでしょうか。)
次回は、なぜこのことに医療が関係するのかを含めて、探求してみたいと思います。
(つづく)
2008/7/14
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第6回「さまざまなセックスのかたち」その1
性別はどうやって決まるの?
こんにちは!お元気ですか? 雨の恵みを受けてあらゆる命が輝く6月。
月のうさぎ家のベランダでは、今年も鉢咲きのくちなしがアイスグリーンの
蕾からまばゆい白のグラデーションへと開きました。京都からやってきた
蓮のちいさな葉っぱも、水滴をはじいて、すくすくと育っています。
わたしは、蓮が大好き。そして雨が好き。不思議です。
なぜ、特定のものを「好き」だとか「懐かしい」と感じるのか・・・、
同じ場面や対象でも、ある人にとっては特別に心惹かれるものとなり、別の
人にはまったく何でもないことだったりするのは、よくあることですね。
そして、自分がはまった世界によって生涯に受ける影響は、大きなものです。
野口英世博士がご自身の開発された黄熱病ワクチンが効かずに亡くなる最期
の病床で、「私にはわからない」と呟かれたとか、熱力学の先駆的研究者で
あった科学者で、なまえは忘れましたが、熱とエネルギーの研究のために
ご自身を被検者にして服をたくさん着こんでいたために、階段から足を滑ら
せて頭を打って亡くなった人もいたでしょう。そこまでいくと、本当に凄い
けれど、よく、「自分のことは自分が一番知っている」と言われますよね。
しかし、わたしは必ずしもそんなふうに自己完結していないと思うんです。
自分のことであっても、“知らない”領域がいっぱいあるのでは?
そのうちのひとつが、性の領野です。今回はとくにセックス(SEX=性別)
について考えてみたいと思います。
私たちは、いつの頃からか、自分の性別について自然に気づいていきます。
女であるとか、男だとかあるいはもう少し別の感覚で。自分の中のセックス
(SEX=性別)をどのように認知するか、これを「性自認(せいじにん)」
といいます。
わたしが昔、看護学校で勉強した頃は、「性別決定は受精の瞬間になされる」
と教わりました。「卵子と合体した精子が、Yの遺伝子を持っていれば受精卵
は男の子に、Xの遺伝子なら女の子になる」と。
ところがその後科学的かつ臨床的研究が進み、性分化の過程は何段階もあって、
性別というものは、どこか一点において男(女)に「なる」というような、
白黒どっちか、みたいな問題ではないということがわかってきました。
元々、お母さんのおなかの中にいた胎児の時代には、性器になっていく部分
(性線原基=せいせんげんき といいます)は、誰もが同じ形をしています。
たとえると、あんこが内側につまったお饅頭のようなものです。
みんな、もともとはおんなじおまんじゅう。
人間以外の動物たちを見ても、たとえば絶滅種のウミガメさんなどは、どう
やって性別が決まるかと言うと、それは卵を温める砂浜の温度なんだそうです。
ひとつの卵が、ある一定の温度よりも平均して高ければメスのウミガメに、
低ければオスのウミガメに育つのだそうです。両性具有の種だってあります。

人間の場合、精巣決定遺伝子(せいそうけっていいでんし)という因子が加わり
性腺原器・おまんじゅうのあんの部分が発達し、精巣に育ちながら、自分自身で
どんどん男性ホルモンを出していきます。精巣決定遺伝子がなければ、おまん
じゅうのかわの部分が発達していき、性腺原器は卵巣になります。
多くの場合、精巣決定遺伝子はY染色体の上に乗っかっているので、XY
=男性、って思われがちですが、全員が同じではありません。
X染色体に精巣決定遺伝子が乗ってくる場合、さらには常染色体に乗ること
もあるのです。
また性染色体自体もXXかXYに限らず、X0とか、 XXX、 XXY・・・等、
数の上でも稀な出生ではないのです。
染色体のくみあわせや細胞分裂の段階で、多様な個別の様態があり、かつ
精巣決定遺伝子にしても、ファジーな要素がたくさんあります。
そして、おかあさんの温かい子宮に守られて、あかちゃんに育っていく蕾の
ような存在(胎芽=たいが といいます)は、自らの細胞をぐんぐん伸ばし
血管を作り、栄養や酸素を受け取るための基地(胎盤=たいばん)を、子宮
の中に創り出します。胎盤って、おかあさん側がつくるんではなくて、そこに
生じた命の側が創り出すんですよね、えらい。
「十月とおか、おなかを痛めて産んだ」といわれる母の偉大さも驚異的ですが、
わたしは、生まれてくる命の側のすごさに目を見張ります。
妊婦さんにとって、「母体」とは自分自身であると同時に、何か別のエネルギー
に突き動かされている、自分でもよく解らない憑依状態なんですね。

胎児は、自らアンドロゲンシャワーとよばれる男性ホルモンの雨を降らせ、
その量とタイミングによって性器の発達を刺激します。もともと同じ組織から
ペニスとクリトリスは分かれていきます。男性性器でいえば、ペニスの根元の
背面から、いんのう(きんたま)にかけて、たての筋が入っていると思いますが、
それは女性性器の大陰唇のわれめが左右から合わさってくっついたものなんです。
自分でも知らない、胎内での出来事。まだまだ不思議は続きます。
この続きは、また来月にお届けします。夏至を過ぎて、雨が上がる7月は、
いよいよ蓮の月。想像するだけで、ほの甘い太古の蓮の香りがしてきました。
一年の半分を終えた、今年のまんなかです。 いそがしさに追われ、焦りや怒りや悲しみの渦に巻き込まれて
時の連続の中に潜む、いま与えられた幸せの瞬間をこぼれ落とさないように、
わたしは、日々のプロセスを愉しんでいきたいと思っています。(つづく)
2008/6/10
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第5回「性器と個性」
1、みんな顔が違うように
すてらめいとクリニックは、開院以来、性別や年齢、国籍・言語をはじめと
する文化的背景も問わず、また診療科の制約のためにどこにいったらよいか
わからない症状や、あらゆる健康上の悩みに対して、まずはおいでください
と幅広く受け入れ、診療させていただいています。
もちろん、必要があれば、適切な検査、医療機関へのご紹介を行っています。
私たちは、どんな方にも「ここやったら、安心して診てもらえる。これまで
言えなかったこと、言いにくかったことでも相談ができる」と思っていただ
ける「かかりつけ医」、保健医療機関でありたいと願ってきました。
おかげさまで、この敷居の低さが多くの方々に親しんでいただけて、「この
クリニックに来てよかった」とお声をかけてくださる方や、笑顔で近況報告
をくださる方、わざわざお礼のメールを送ってくださるなど、谷口院長以下
スタッフが励まされることも多々あります。こうした心の触れ合いを感じる
時は、大変に嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいになります。
つい昨日も受診された、ひまわりのような笑顔が周りをぱっと明るくさせて
くれるお馴染みの女性が「こんにちは!いそがしいね!」と目線を送って
くださり、お待たせしているのもかかわらず、逆にこちらに気遣いをもらう
温かさが思いがけなくて、じいんとなりました。ありがとうございます!
☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・
2年目の春を過ぎた当院ですが、この間は、一日に受診される方の数が大幅
に増え、とくに休み明けや週末は直前だと予約も取りにくい状況で、診療の
待ち時間も、以前と比べ平均して長くなってきました。
私たちはそういった状況を見越して予約電話回線を増やし、診療の予約電話
と問い合わせのダイアルを分け、予約の組み合わせがスムーズにいくように
試行錯誤し、比較的空いている時間帯をご案内したり、お仕事等のご都合で
遅い時間にしか受診できない方が、お疲れの中不公平にならないよう、18時
以降は全員予約なしで、どなたも受付されたご順に入っていただくシステム
としたり、また診察までの待ち時間に看護師・相談員が必要に応じてお話を
おうかがいするなど、少しでも快適な診療環境が保てるように努力を続けて
います。
これからも、受診される方々を「受ける側」、保健医療の供給側が気づかない
みなさまお一人おひとりの視点を、ぜひお寄せください。どのような助言、
感想もすべてクリニックを育てます。どうか、よろしくお願いいたします。
大多数のニーズに応じる社会的責任とともに、私たちは目の前のたった一人
の方にとって、役に立つ支援をしていきたいと願っています。
☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・
2、性器と個性
さて、今回はご挨拶に特別な紙幅を割かせていただきましたが、今月の予告
テーマは「性器と個性」でしたね。楽しみにしてくださっていた方、お待た
せいたしました。(そんな方いらっしゃるんでしょうか・・・♪v(*'-^*)^☆)
ときどき、「あのぅ、こんなことを相談してもいいんでしょうか?」と、
性器の形や色が他の人と違っていないか、おかしくないかと不安に思われて
いる悩みを打ち明けてくださる方があります。これは、性別を問わずですね。
昔むかし、私がローティーンの頃に、雑誌「平凡」とか「明星」(今もあるの
かな?)にアイドルの写真が乗っているのを見たくて、こっそり隠れて家に
持ち込んでいたのを覚えています。天地マリちゃんのデビューの時は「ソニ
ーの白雪姫」というキャッチコピーで登場して、デビュー曲の「水色の恋」
あまりにも下手すぎの歌唱力だったけど、いい歌で、本当に可愛かったです。
それにしても、どうして雑誌を見るのに“こっそり?”親に見てはいけない
と言われると思っていたし、たぶん見つかったら怒られたに違いありません。

グラビアページは前の方、後ろの方には、性の悩み相談や具体的なハウツー
ものの記事が出ていたように記憶しています。
そこには、「包茎は手術しなければいけないんでしょうか?」とか「小陰唇
の大きさが左右で違う」「性器の色が黒ずんでいるので白くしたい」「陰毛が
濃過ぎるのではないか」などという具合に書かれていたのですが、こうした
古典的な悩みは、時を経てもあまり変わらないんだな、と思います。
また、不安に拍車をかけているのが、雑誌の最後尾にたくさん載っている、
通信販売やサロンやクリニックの宣伝です。「包茎は女の子にもてない」とか
「乳首の黒ずみをピンク色にしましょう」などと、包茎やダークな皮膚色だと
何かわるいことのように書かれていて、誰にも相談できない若者の不安をかき
たてます。そのまま成人し、かつての悩みを忘れた頃に、何か泌尿器に関する
心配を持つ機会があると、「そういえば」と不安がぶり返して来る方もいます。
とくに、性教育をキチンを受けたことのない世代では、迷信を信じて違法な
「医療」行為の被害にあっている人も少なくありません。
性感染症を心配して受診した先のクリニックで、いきなり「あなた、今日は
カードを持っていますか?」とその場で「すぐ済みますから」と包茎手術を
受けるように促され、「がんになります」などと詐欺まがいの話を白衣を着た
人がたたみこんできた、値段がだんだんつりあがって、40数万円、さらに
上がる勢いだったので何とか逃げてきた、とか、前金制で残額返金と言われ
80万円振り込んでしまったとか「後から冷静に考えると、なぜ他の医療機関
にも相談しなかったのだろう?」とおっしゃる実際の話をしばしば聞きます。
包茎の場合、まったく包皮が下がらない完全包茎では、排尿が不十分になる
ので、子どもの段階で小児外科に入院して、見た目が大きく変わらない程度
少しだけ皮を切除する手術を受ける必要があります。
しかし、勃起したときに亀頭が出てくる不完全包茎であれば、まったく手術
の必要はありません。アジア男性のおよそ7割はこの不完全包茎だと言われ
ています。その場合、包皮の内側を、子どもの頃からお風呂でしっかり洗う
習慣を身につけてほしいです。
洗う習慣を教えてもらっていない人は、包皮の内側に垢が溜まって、臭いの
もとになったり雑菌が繁殖して炎症のもとになったりします。
ケアの方法ですが、一気に皮を下げたら痛いので、石鹸をよく泡立てて手の
平に取り、1日1ミリずつ皮を下げていって、包皮の内側の清潔を保ちます。
デリケートな場所なので、ごしごしとこすったりはしないでくださいね。
不用意に「包茎手術」を受けたりすると、勃起した時に皮がひきつれて痛み
が走り、セックスどころではなくなったり、見た目が馴染まないために逆に
コンプレックスを生み、引っ込みじあんになったりと、取り返しがつかない
事態にもなりかねません。
☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:・
性器も、顔や指のかたちが人それぞれ違うように、みんなちょっとずつ違う
のは当然です。ペニスが左右どっちに傾いているとか、陰唇の大きさに左右
差が著しいとか、性器の色調が黒いとか白いとかブラウンだとか、会陰部:
えいん部と読みます(肛門からペニスの根元/肛門から膣までの距離のこと)
の距離が長いとか短いとか、ペニスやクリトリスが大きいとか小さいとか、
いろんな悩みをおききしますが、もしそれらが私たち人類、または仮にモン
ゴロイド全員おなじで、工場から出荷される規格品のようだったとしたら、
変じゃないですか?
ブラジャーのカップひとつだって、同じサイズのたとえば70Dだったとして
底の半径の長さ、カップの頂点までの高さ、中心点から脇までの距離や肩紐
が付いている位置など、人によってジャストサイズは違います。きゅうくつ
なブラを1日着けているとすごく肩が凝ってきますよね。
先日、私はよく歩く友人に教えてもらって、様々な角度から足について測定
した結果をコンピューター解析して選んでくれるお店に行ったんですね。
そこで知ったのが、私は長いこと自分の足のサイズは、23.0か23.5cmだと
思っていたら、右が23.0cm、左が 22.5cmだったんです!
おまけに左足が右に引っ張られて、たえず外側が浮いた状態になるために、
左足のゆびや底がこすれて、マメを作ったりしていたんだそうです。
びっくり。今頃になって、自分の足のサイズや、靴トラブルの原因について
知るなんて、ほんとうに驚きでした。
わたしは以前、病院勤めのときに糖尿病の方のフットケアなどにも携わって
いましたし、「なぜ履きにくい、ナースシューズ」という看護の調査研究の
論文をまとめたりもしていたのです。
にもかかわらず、自分の足を知らなかったんですね!

そのようにして選んだ初夏のサンダルは、とっても快適です。
このように長く履ける靴は、これから歩くであろう、私の人生の道づれ、
友だちとなってくれるでしょう。
きっと性器もおなじ。
あなたも、あなた自身の人生を共に歩んできた、自分自身とは切り離すこと
のできない大事な身体の一部である性器をいたわり、よく観察し、自分だけ
では判らない変化や気になることがある場合は、迷うことなく専門家に相談
してください。
早めに受診してくださったおかげで、中には、たとえばセックスで移し合う
性感染症のひとつ、性器周辺にぽちっと小さなイボのような変化からやがて
拡がる「尖圭コンジローマ」をごく早期に発見でき、時間がかからずに治療
された方や、同時に行った子宮がん検診で変化が見つかり、迅速に適切な
対処を受けることができた方などもいらっしゃいます。
また、性別によらず、パートナーを紹介してもらったり、カップルで一緒に
受診していただくことも、すてらめいとクリニックならではの利点ですので
大いに活用してくださいね。
今月の「ポジティブセックス&ライフ」を読んでくださったあなた、もしも
心当たりがあれば、できればご予約の上受診され、相談員にリクエストして
ください。予約専用電話(06-6364-4177)問い合わせ電話(06-4792-7877)
です。電話相談は行っておりませんが、受診をしていただいた上、ご相談を
お受けいたします。もちろん保険診療の範疇ですので、保険証は使えます。
気軽にご相談ください。一同、お待ちしています。
2008/5/12
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第四回「ひと粒のピルのちから」
春爛漫♪ 桜が風に散った後は、ライラックの生き生きとした花房が 開花を待って、若い青葉のあいだから顔をのぞかせています。 このページに来てくださったあなたは、2008年の新しい季節を満喫され ているでしょうか。すてらめいとクリニックも、この春 受付・ナース チームともにスタッフの体制を充実させ、みなさまに満足していただけ るよう、張り切って取り組んでいるところです。
さて、今月の『満月の部屋』は、“一粒のピル”の選択がもたらす豊か なセックス&ライフへの可能性について、お話ししたいと思います。
ピルといえば避妊を連想されると思いますが、ピル(低用量ピル)を 手にする方の動機はさまざまです。たとえば、生理の量やサイクルを安定 させ、生理痛をやわらげる働きを始め、生理前のむくみ、肌荒れ、ニキビ といった周期的な肌のトラブルや、精神面での落ち込み、イライラなどの 影響=PMS(月経前緊張症)を人によっては素晴らしく改善したりと、 さまざまな効用(ききめ)があります。 日本は諸外国に比べ、低用量ピルの普及が遅れた国ですが、認可に慎重 な意見を出していた方々が根拠とされていたのは「ピルを飲むことでコン ドームを使わなくなり、性感染症が増えるのではないか」ということでし た。しかし、それよりも実際には「女性が自分の意思で妊娠をコントロー ルする」ことに対する、意識の違いが大きな理由なのではないか、と私は 考えています。
セックスは生理的欲求であると同時に、たえず今を生きる文化の中に 位置づけられます。 いつ、誰とセックスするか。しないのか。 子どもを持つのか、今は持たないのか。 また、妊娠を希望するとしたらその時期は? どのように妊娠期間を過ごし、どんなお産をする? ベッドでも、ベッドの外でも・・・、あなたは大事なパートナーとそんな 対話を持ったことがあるでしょうか?
私は、かつて妊娠をめぐるケアにたずさわる中で、喜びの妊娠・出産 とともに予定外の妊娠を中断せざるを得ない場面、多くの人工妊娠中絶 の現場にもかかわってきました。 事情を知らない人たちは、「若い子が安易にセックスして中絶に至る」と 非難されたりしますが、私が経験したことは、まったく逆なんです。 2006年の人工妊娠中絶術の件数は27万6352件、このうち10代で手術を 受けた人は2万7367件。 男女ともに、「外だしなど、避妊を安易に考えて妊娠してしまう」人は いっぱいいても、中絶を安易に考えている人は、とくに中学生、高校生 や10代の人たちではひとりも見たことがありません。
また、あまり言われないことですが、中絶件数だけでみると出産件数 と同じく20代~30代の方が多いですが、妊娠した場合に中絶を選択する 割合は、若い女性よりも40歳以上の主婦層の方が多く、40歳以上の女性 が妊娠した場合、その68.4%、3人に2人は中絶に至っています。 この比率は、1960年代から大きく変わってはいません。 このことは、過去40年間ずっと、妊娠のコントロール(避妊)に関して 女性の意思決定が反映されてこなかった、パートナー間での避妊の意識と 方法に限界があったことを示していると考えます。 ある調査で、「コンドーム装着をしたのに妊娠した」と答えた人は14%に も上りますが、もしも正しい装着方法をとっていたなら、その数値は3% になります。(これに対してピルの服用による失敗率は、飲み間違いをし なければ0.1%です) 日本では、きちんとした性教育の機会に乏しいために、大人の男性でも、 正しいコンドームの着け方を知らない、また、「外だしでいいや」と思い、 避妊(+感染予防)が習慣となっていない方が大勢いらっしゃいます。 「断ると関係にヒビが入る」から、と夫婦間の望まないセックスによる 予定外の妊娠から中絶に至る状況は、この40年間変わっていないのです。
当院では人工妊娠中絶術は行わず、相談があれば信頼できる産婦人科を ご紹介いたします。手術は可能な限り早く受診していただくことが望まし く、その方法は、妊娠11週と6日までの妊娠初期の手術では、注射で全身 麻酔をかけて長いスプーンのような器具で子宮内の手術(または吸引)を します。 麻酔から覚めたばかりの女性は、吐き気やお腹の痛みとともに、生まれ なかった生命に対する罪悪感や心の痛みに涙し、あるいは封じ込めます。 そんなときに、痛みを分かち合うパートナーの存在が側らにいてほしい。 しかし、たった一人でこの出来事を耐えることになるならば、誰か信頼で きる人に気持ちをきいてもらう必要があります。
もしもあなたが、過去の妊娠中絶によるショックを数年間、数十年間も 「無かったこと」として封じ込めているのなら、それは手当てが必要かも しれません。すてらめいとクリニックでは、毎週金曜日予約制で、専門の
担当ナースによるカウンセリングを行っていますので、受診の上 ご相談ください。
豊かなパートナーとの関係、そしてセックス&ライフをあなたの手に 握るステップとして、一粒のピルのちからはあなたを潤すでしょう。 また、コンドームがはずれた、望まない性行為があったなどのアクシデ
ントで妊娠を避けたい場合、72時間以内に対応する緊急避妊ピルも
取り扱っています。 あなたが、あなた自身の人生の主人公であるように、私たちはあらゆる選択 へのお手伝いをしたいと思っています。お気軽に声をかけてくださいね!
2008/4/10

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第三回「性ホルモンと美肌」
今月の『満月の部屋』は、性ホルモンと美肌の話です。 恋愛のドキドキ、わくわくの感じを持ってる人はみんな、清らかなピンク のオーラが出ていますよね。好きな人の存在を感じる。それだけで、皮膚の 温度が上がり、いい感じになってくる。まるでデリケートなピーチスキン。 こんなとき、脳の管制塔ではどんなことが起こっているのでしょう・・・。 脳内麻薬とも呼ばれるエンケファリン、エンドルフィンやドーパミン といった「快」の伝達物質が駆け巡り、性ホルモンも刺激されます。
性ホルモンって、男性は男性ホルモンだけを、女性なら女性ホルモンのみ 出すと思われがちですが、性別によらず誰でも、男性ホルモンand女性ホル モンを分泌し、保持しているんですよ。 そのいずれによっても、あなたの身体と心は影響を受けています。
性別の決定については、また別の機会にお話したいと思っていますが、 女性の体内でつくられる男性ホルモンの量は、男性が分泌しているよりも 多いほどです。そして、性差とともに個人差もまた大きいのです。
男性ホルモンは骨格や筋肉を作り、産毛、体毛を発育させます。 女性ホルモンは体にしなやかさ、曲線を与え、妊娠を準備します。 近年、性ホルモンと認知症の研究が進んできましたが、女性ホルモンは 記憶のシステムにも関係しているのですね。 (ペンギン博士、こんなジャンル得意かなぁ。早く登場してほしいなぁ。。。)
円を中心から分かち合うタオ 【陰陽】のマークのように、一個の人間の中 でも、男性ホルモンは外に向かって放射する陽の性質を、女性ホルモンは内 にエネルギーを蓄える陰の性質を持って、お互いに補完しあっています。 わたしは、初めて『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』
(Hedwig and the Angry Inch)
というトランスジェンダーの体験を映し出したロック映画 を観た時、衝撃を受けて、しばらく映画の中で使われる音楽が頭の中で流れ
続けましたが、この映画も、ひとりの人間にタオ が存在する宇宙の摂理への 畏敬の念に満ちていると感じます。
そして、月経周期の不思議。 月の引力と関係するかのように、28日周期ベースですね。 皮膚の細胞の生まれ変わりも28日周期なんです。
寄せては返す波のように、女性ホルモン(エストロゲン=卵胞ホルモンと プロゲステロン=黄体ホルモン)が互いに追いかけっこをしながら、 体内環境、月経のサイクルをリズミカルに保ってくれているのです。
女性がつややかに、血色良くきめがこまかくなって、美しいピーチスキンが 最高のコンディションとなるのは、いつだと思いますか? そう。やはり♪自然界の贈り物。恋人を誘うにふさわしい排卵期なんですね。 「彼女、いつもにも増して魅力的。美しい・・・。」と見えるとき、それは 彼女自身も知らないうちに、性的なパワーが全開し、おなかの中で待機 している卵がまさにはじける寸前なのかもしれません。
その時期を過ぎ、待っていた卵と精子が出会わなかった場合、 新しくその月にベッドメイキングしたあかちゃんのベッド=子宮内膜は、 やがてはがれます。それは、プロゲステロンの作用です。
このプロゲステロンがどんどん分泌されてくる生理前の時期っていうのは、 ピーチスキンの危機!肌の皮脂も多くなり、ニキビができやすくなったり、 バリア機能が下がるため、刺激に敏感になり、肌荒れしやすくなります。 からだのむくみも出やすい時期ですから、目の下のクマや肌のくすみが気に なって、デートを断りたくなっちゃう女の子の話もよくききます。
そこまで敏感でなくても、女性のみなさんは、生理前には化粧品を変えたり、 顔そりやパーマ、ヘアカラーを避けたほうがいい、ってきいたことあります よね。
ですから、彼女をいたわりたいパートナーさんは、生理前の彼女とKISSする 予定があるときは、ちゃんと髭や爪を切っておいてね。
もし、あなたが生理前の肌荒れ、むくみ、そしてこの時期にやってくるPMS (月経前緊張症)といって、いらいら、頭痛、体調の変化がつらくて悩んで いらっしゃるなら、ぜひ一度すてらめいとクリニックに相談においでください。 女性のからだのサイクルに理解のある院長と、すてらナースが素敵なあなたを 応援します。
最後に、性別をこえて、もう一度。 多くの動物たちは、種族の保存のために時期を決めて性ホルモンを分泌し、 「発情期」を起こして交尾します。しかし、人間の発情期は365日ですね。 それは、子どもをつくる目的以外にもセックスをする生き物だから。
素敵なセックスを、あなたと あなたの大事な人と共に在る幸せのために!
2008/3/10

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第二回「生理中でも妊娠、外だし意味ナシ」
「安全日」って、きいたことありますか?
避妊をしなくても、妊娠しない時期、と理解されていますね。
この「安全日」ってじつはくせもの。多々誤解されていて、「生理の最中のセックスなら
避妊なしでも妊娠しない」って信じてる人もいるけれど、そんなことはありません。
毎朝起きてすぐに「基礎体温」を継続的に測っている人以外は、「安全日」であるか、
妊娠の可能性があるかどうかは判らないのです。
女性のおなかの中では、お月様の周期に合わせたように、左右どちらかの卵巣から
成熟した卵子が基本一個ずつ飛び出してきます。それが「排卵」。
その時期に合わせて精子が卵子のところまでたどりつくと「受精」。
新しいいのちのはじまりです。
卵子はおよそ24時間のあいだ浮遊して、精子がやってきてくれるのを待っていますが、
それに対して精子はもっと長く生きています。
最長7日間もサバイバルして、受精の時を待ち構えているんですね。
だから、生理中であっても、妊娠は大いにあるのです。
「排卵」の後は、妊娠に備えて、
子宮の内側では栄養と酸素をたっぷり含んだ、あかちゃんのベッドがつくられます。
でも、せっかく準備したベッドも、受精していなければいらなくなるので、毎回はがれて
落ちて、また次の月には新しくベッド・メイキングし直すのです。子宮の内側につくった
あかちゃんのベッドは、毎月しかえられます。
いらなくなってはがれる時、少量の出血とともにからだの外に出ます。これが生理です。
女性のからだは自然の浄化システムを持っているんですよね。
「排卵」も、生理の周期も、こころとからだのバランス、脳から出るホルモンの指令に
よって調節されています。ちょっとしたストレスで生理の時期がずれたりすることは、よく
あるのです。「排卵」がある場合、その時期は生理からさかのぼって14~16日前。
この日数は一定しています。
でも、生理が終わってから何日後に排卵するかは、一定ではないのです。
だから基礎体温を測っている人以外は、妊娠の時期は予測できないというわけです。
しかも、しかも!
「うさぎ型排卵」というのもあります。
うさぎをはじめ、性交(交尾)のタイミングで排卵する動物たちがいますが、わたしたち
人間も周期をはずれて、そんなことが起こるのです。
これは妊娠しやすい年齢の女性が、快感の極みに達した ラブラブ・セックスの機会に
起こりやすいようです。
また、「外だし」=膣外射精をすれば妊娠しない、なんて間違って信じている人が、
おとなの男の人の中にも、けっこういらっしゃいます。きちんとした性教育を受ける機会
がなく、ビデオ映像等で「見せる」ための射精に慣れてしまうと、「外だし」すれば妊娠
しないのか、と思いこんだとしても、しかたのないことかもしれませんね。
外だししても妊娠します。ちょろっと漏れてる先走り液の中にも精子はいっぱいいるか
ら、勃起したペニスを短時間でも生で挿入すると、妊娠(+たがいに感染)する可能性
は大いにあります。
「外だし意味ナシ」射精直前に、男性がガマンしてペニスを外に出す努力をしても、
妊娠してしまいます。挿入するなら、立ったらつけよう。コンドーム。
また、射精のあと、膣をコーラで洗う、とかぴょんぴょん跳ねる(まさにうさぎ!)とか
すると、避妊効果があるなんて、まったく根拠のない古典的な伝承を信じてる女の子も
けっこう多いけど、そんなのも意味ありませんよ~。
女性にとっては、予定外の妊娠はたいへんな不安をもたらし、セックス自体が恐くなる
こともあります。一ヵ月後の生理まで不安で浮かない顔・・・にならないために、
いつでも妊娠OK!の時以外は、こころとからだをいたわるセックスをしましょう。
お互いのセックスに対する思い、もし妊娠したら・・・、しないためには・・・、
具体的に話し合って、理解しあった上で「する」「しない」意思を重ね合わせると、ふたり
の関係性もより深まるのではないでしょうか。
また、さまざまな生活スタイルや、職業上、妊娠をコントロールしたい、避妊について
詳しく知りたい、って方はぜひ一度、すてらめいとクリニックにいらしてくださいね。
相談ナースがあなたの悩みをおききします。 2008/2/10

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第一回「セックスと性感染症」
どうして、ひとはセックスするの? セックスって、何。
とかって、考えたことありませんでしたか?
いつ、だれと? する、しない。それは、あなた自身&相手との関係性で決めること。
でも、幸せなセックスは人生を豊かにしてくれる。
セックスをするのは、わたしたち人間が「群れで生きる哺乳類」だから、
種の宿命として一人では生きられないんですね・・・。
安心できる肌の触れ合い、温かくてしっとり濡れている粘膜と粘膜の深い接触で、
哺乳類に与えられた恩恵を得る。理性でない体感覚。呼吸を合わせ、鼓動を伝え合い
細胞の振動を互いに与え合う中で、かさついた気持ち、疲れて乾燥した心もゆっくりと
癒されていく・・・。
ところで、「カンガルーケア」って、きいたことありますか?
生まれたてのあかちゃんを、すっぽりまるごと裸だっこするんです。
もともとはコロンビアの新生児医療センターで、低体重で生まれたあかちゃんに
「保育器」が足りなかったために、保温の目的でおかあさん(もしくはおとうさん)が直接
おなかをくっつけて、(その上から服も着るけど)あかちゃんをカンガルーのように
抱っこして「保育器」の代用をしたんですね。
そうしたところ、あかちゃんたちが感染症にもかからず、すくすく順調に発育したこと
から、その方法が研究されて世界に広まったものなんです。
現在は、日本でもおかあさんが希望されて、親子の状態が安定していれば、
生まれたてのあかちゃんを30分間、カンガルー抱っこすることができる産院も
増えています。 「インプリンティング」といって、生まれてすぐにおっぱいを吸わせて
あげる効用も理解され、多くのお産の現場で行われていますが、あかちゃんは目も
まだよく見えていないけど、自らおかあさんのおっぱいを吸いに行くんですよね~。
やっぱり哺乳類なんですね。
無菌状態からあらゆる微生物がいっぱいの外界に生まれ出てきたあかちゃんに、
このカンガルーケアと、おっぱいをふくませてあげることによって、病原性微生物の
感染から守ることができるといわれています。
人間の体(消化管)は、口から肛門まで外界と交通する一本の管になっていますが、
30分間のケアによって、あかちゃんの口から腸、肛門にいたるまで病原性微生物が
侵入する前に、おかあさんが持っている常在菌がざーっとあかちゃんにプレゼントされ、抵抗力を与えられるのです。
この、常在菌の顔ぶれは、外国の人からみると日本人はみなおんなじ顔に見える、
っていう程度には似てるけど、一人ひとり顔がちがうみたいに、まったく同じではない
んですよね。
人間は、無数のバクテリアと共存して生きています。
菌の安定した存在(細菌(さいきん)叢(そう)といいます)があることで、他の病原体の
感染から守られるのです。
たとえば、健康な女性のワギナ=膣のなかには乳酸菌がすみついていて (だから
汗をかくと、ちょっとすっぱい感じの匂いがします)病原性微生物の感染から守って
くれているの。
一方、菌の側もまた、人間の生きた細胞に寄生してでないと、生きていけない。
お互い自然界の中での大いなる共存をしているわけです。
だから、セックスをするということは、あなたと共存しているバクテリアたちと、セックス
のパートナーが持っている固有のバクテリアの顔ぶれとを交換する行為でもあるので
す。
セックスは、お互いのエネルギーとバクテリアを交換しあう、とっても親密で特別な
行為だから、エロティックなんだよね。ぎりぎりのラインで、お互いを明け渡す。
でも、セックスに伴う感染症のリスクも同時にあるわけで。いかに、リスクを減らし
ながらポジティブに性を楽しむか♪ これぞおとなへのパスポート。
性感染症の予防は、あなたのセックスのスタイルに合わせて、いろいろ工夫できる
ことがいっぱいあります。
また、HIVとかクラミジアとか肝炎とか、感染してても自覚症状がない性感染症も
多いから、必要な時には、タイムリーに検査を受けることも大事ですね。
すてらめいとクリニックは多くの性感染症の迅速検査に対応しています。
どきどき、わくわく☆ 素敵なセックスをしよう。
そのためには、お互いの気持ちを聴きあう、という高いレベルのトレーニングが
要ります。
さまざまな人生の経験に伴って、人や出来事との出会いを重ねるごとに、セックスの
快感も深くなっていきます。
作り物の「セックス」に惑わされず、人間的成長につながる豊かな時を、あじわいたい
ものですね。 2008/1/10

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