医療ニュース

2011年11月14日(月) ビタミンEの発ガンリスク

 ビタミンE摂取は前立腺ガンの発症リスクを上昇させる・・・

 これは医学誌『JAMA』2011年10月12日号で発表された論文の趣旨です(注)。ビタミンEには抗酸化作用があることから、ガンの予防になるのではないか、と言われていた時代もありましたから、長年摂取していたという人にはショッキングな研究かもしれません。
 
 この研究が開始されたのは2001年で、研究途中の2009年の時点で「ビタミンE摂取(及び発ガン抑制に期待されていたセレン摂取)で前立腺ガン発症のリスクを減少しない」ということがすでに確認されていました。今回発表されたのは、ビタミンEは前立腺ガンの発症リスクを下げないどころか、逆に前立腺ガンになりやすくなる、という結果についてです。
 
 この研究を少し詳しく紹介すると、対象者は、調査開始時点で前立腺ガンになっていなかった米国、カナダ、プエルトリコ在住の男性35,533人です。対象者は4つのグループに分けられています。①ビタミンEを摂取するグループ(8,737人)、②セレンを摂取するグループ(8,752人)、③ビタミンEとセレンの両方を摂取するグループ(8,702人)、④両方とも摂取しないグループ(8,696人)の4つです。対象者は、2011年7月5日まで追跡調査がおこなわれ、前立腺ガンの発症率について比較されています。追跡期間は7~12年です。
 
 その結果、追跡期間中に前立腺ガンを発症したのは、①のグループで620人、②、③、④はそれぞれ575人、555人、529人でした。これらを統計学的に分析すると、ビタミンEを摂取すると前立腺ガンの発症リスクが上昇する、という結果が出たというわけです。尚、セレン単独摂取やセレン+ビタミンE摂取では、ガンの予防効果はもちろんありませんが、統計学的にガンのリスクが上昇するとまではいえなかったようです。
 
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 ビタミンEの発ガンリスクと言えば肺ガンが有名です。2008年3月に医学誌『American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine』で、サプリメントでのビタミンE摂取量が1日100mg増加するごとに、肺ガンのリスクが7%上昇するという結果がでました。
 
 また、肺ガンのリスクと言えば、ビタミンE以外にベータカロチンのサプリメントが有名です。ベータカロチンは、元々は大腸ガンの予防になるのではないかと期待されていたのですが、大腸ガンを予防しないどころか肺ガンのリスクを高めることが分かり、これが発表された頃からサプリメントの有害性や効能がないことが次々に指摘されだしたような印象があります。米国ガン協会(American Cancer Society)も「ガン予防のためのビタミン剤のサプリメントは推奨しない」、としています。
 
 ただし、誤解のないように付記しておくと、ビタミン剤のサプリメントが有害(もしくはガンの予防に無効)なのであって、ビタミンEやベータカロチンが豊富に含まれている食品を積極的に摂取すること自体はガンの予防に効果があり推奨されています。結局は常識的な話になってしまうのですが、「栄養のあるものをバランスよく食べましょう」ということに尽きるというわけです。
 
(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Vitamin E and the Risk of Prostate Cancer」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://jama.ama-assn.org/content/306/14/1549.abstract?sid=b60d5330-ce80-445f-9a52-
3420ddea32c2

 
参考:医療ニュース
2011年8月26日 「ビタミン剤で発ガンのリスク上昇」