マンスリーレポート

2024年3月 「谷口医院がすてらめいとビルを"不法占拠"していた」裁判の判決

 2022年6月7日、旧谷口医院が入居していたすてらめいとビルを運営する会社「株式会社すてらめいとジャパン」が谷口医院に対し、「貸していないスペースを谷口医院が不法占拠していた」という理由で3120万円の損害賠償請求の裁判を起こしてきました。

 我々がビルを不法占拠していたとは穏やかではありません。当然のことながら谷口医院はすてらめいとジャパン(以下「すてらめいと」)と賃貸契約を結び、その契約どおりにビルを利用していました。もちろん契約書もあります。では、なぜ「すてらめいと」はこんな無茶苦茶なことを言ってきたのか。

 すでに本サイトでお伝えしているように、階上に突然入居して振動をまき散らすキックボクシングジムに対して当院は防振工事をしてほしいとお願いしました。すてらめいとにとってはどうやらそれが気に入らなかったようです。以下、簡単に経緯を振り返っておきます。

2020年12月 階上にキックボクシングジムが事前相談もなく入居。振動をまき散らし始める

2021年5月 ジムが「防振工事を6月20日を目途に開始する」と文書で連絡してきた

2021年7月  「やっぱり工事はやらない」という連絡が届いた。そのため「約束どおり防振工事を求める」訴訟を起こすことをジム・すてらめいとの双方に伝えた

2021年12月 すてらめいとの弁護士が「家賃を2倍にする」と文書を送って来た。裁判所で当院の弁護士と「調停」がおこなわれ、「調停不成立」となった

2022年1月 当院の弁護士が「当初の約束通り防振工事をすること」を求め大阪地方裁判所に訴状を提出

2022年6月 「谷口医院がビルを不法占拠しているから3120万円を支払え」という裁判(以下「不法占拠裁判」)をすてらめいとが起こしてきた

2023年1月 振動裁判の終結時期の見通しが立たず、振動が悪化したことで針刺し事故のリスクが急増し、また移転先が見つからなかったため「閉院」を決定

2023年6月5日 不動産業を営む当院の患者さんから紹介されたビルを使えることになり「閉院」でなく「移転」できることになった

2023年8月 移転先で新しい「谷口医院」の再開

2024年1月12日 「不法占拠裁判」で谷口恭が尋問を受けた

 「鉄筋」ではなく単なる「鉄骨」のビルで診療している医療機関の階上にキックボクシングジムを入れること自体がおかしいわけですが、今回は振動裁判の件はおいておくとして(現在も裁判中)、当院が防振工事をお願いしたことに対し、すてらめいとは腹を立てたのか、「そんなこと言うなら家賃を倍にする!」と訴えてきたことにまず驚かされます。

 こんなこと法律に詳しくなくても認められないことは明らかでしょう。ですが、法律に詳しい人に相談すると「社会の常識と司法の判断は異なることもあるし、こちらも弁護士を立てるしかない」と言われました。そんなものか、と考えて当院の弁護士に相談したところ「調停」がおこなわれました。

 結果は、もちろん「不成立」です。裁判所もいくら社会常識と異なる判断をするのだとしても、まさかこのケースで「家賃倍増に応じなさい」と当院に忠告することはないでしょう。

 分からないのはすてらめいとの弁護士です。ときに一般人が感情的になって滅茶苦茶な要求を突きつけることはあります。ですが、弁護士はプロの専門家なわけです。専門家ならそんな感情的な訴えは認められないと考えないのでしょうか。私が裁判官なら「この弁護士、ちょっとおかしいな」と判断すると思います。

 私には司法は分かりませんが、ビル会社の立場に立つなら「階上に入ったキックボクシングジムのせいで患者さんや医療スタッフに恐怖を与え危険な目に遭わせて申し訳ない。直ちに防振工事をおこなうから待ってほしい」と言うか、たとえ針刺し事故などのリスクが分からなかったとしても「家賃を下げることで我慢してもらうわけにはいきませんか」という申し入れをするのが普通の感覚ではないでしょうか。

 それを「家賃を倍にする!」と主張するとは今から考えても理解できません。

 2024年1月12日、大阪地方裁判所で「尋問」があり私が呼ばれました。通常、生まれて初めての裁判で、しかも「被告人」となり、相手方の弁護士や裁判官の尋問を受けるのは相当の緊張が強いられると思いますが、私にはそういったものがありませんでした。むしろ馬鹿馬鹿しくてやる気が起こりませんでした。そもそも「当院は契約書どおりに借りていただけです」と答える以外に何を言えばいいのでしょう。

 他のことを聞かれれば正直に答えるだけです。しかしすてらめいとの弁護士があまりにも無茶苦茶なことを言ってくるので、つい「嘘を言わないでください!」と一喝してしまいました......。なんと、「入居後数年してから貸していないスペースに勝手にレントゲンを置いた」と言い始めたのです。

 レントゲンは2007年の開院当初から設置してあることは調べればすぐに分かることです。レントゲンは一般のオフィス機器とは異なり保健所への登録が必要で、保健所の職員がきちんと法律に従って設置しているかを見に来ます。当然その記録も残っています。器械の販売会社にも記録があるはずです。それに、2007年にはすてらめいとの社員の健康診断も請け負ったのです。当然レントゲン撮影もしています。つまり、すてらめいともすてらめいとの弁護士も自分たちの主張が嘘であることが分かっていて、しかも調べればすぐにバレる嘘であることも知っていながら堂々と嘘をついてきたのです。裁判では嘘を言ってはいけないのではなかったでしょうか。さすがに私が一喝した後は黙っていましたが。

 呆れる嘘はまだありました。弁護士はなんと「不法占拠するために谷口医院がドアを改造して医院のスペースを広げた」と言ってきたのです。しかし、すてらめいとビルはセキュリティの関係でそのような改造や工事をすることができません。実際、他のフロアと同じ構造になっていることはビルに立ち入ればすぐに分かることです。そもそも、すてらめいとの本社はビルの2階にあって、その2階の入り口と谷口医院が入居していた4階のドアの構造や外観はまったく同じなのです。なぜこのようなすぐにバレる嘘をつくのか。そもそもこの弁護士は賃貸契約書を何と思っているのでしょうか。
 
 2024年3月4日、大阪地方裁が判決を下しました。「原告の請求を棄却する」というものです。つまり、当院の全面勝訴です。しかし、我々としては達成感や充実感はまったくありません。馬鹿らしい裁判に付き合わされた上、費やさざるを得なかった総額200万円ほどは裁判に勝利しても返ってこないからです。数字だけみれば「3120万円もの訴えを起こされ無傷ですんだんだから200万円程度の費用は安いものだ」となるのかもしれませんが、やりきれないものがあります。

 おそらくすてらめいとの目的は我々を疲弊させることにあるのでしょう。勝ち目のない裁判でも我々の時間と費用を奪うことはできます。彼らも時間と費用がかかるわけですが、いわば「Lose-Loseの関係」を目指したのでしょう。あるいは、この裁判の敗訴が"貸し"になり、振動裁判では有利になると考えたのでしょうか。「不法占拠では負けてあげたんだから振動裁判では谷口医院が譲歩しなければならない」と思っているのでしょうか。

 司法の世界では当事者が相手側の弁護士と会うことは禁じられているそうですが、いつかすてらめいとの弁護士から真相を聞きたいと考えています。その前に、メインの振動裁判の方を終わらせなければなりませんが。

参考:
階上ボクシングジムの振動・騒音の問題について