はやりの病気

第1回(2005年2月3日) インフルエンザ

 冬の病気と言えばやっぱり風邪ですね。どこの病院の外来をしていてもやっぱり冬は風邪の患者さんが一番多いです。そして今年の流行といえば、お腹に症状がでる風邪ですね。最初喉が痛くなって鼻水がでてきて、軽い風邪かなと思っていたら、吐き気と下痢に襲われて、ひどい場合は点滴が必要になる......、というパターンです。これに今年は今流行りのノロウイルスが引き起こす食中毒の患者さんも大勢来られますから、時間外の待合室は、嘔吐と下痢の患者さんばかりになることもあります。

 ノロウイルスにしてもお腹に症状が出る風邪にしても、まあたいていは1日か2日会社を休んで点滴治療を数回受ければ治ります。ところが同じ風邪のなかでも非常にやっかいなものがあります。そう、インフルエンザです。私も過去に一度感染したことがあります。40度近い発熱に、強烈な頭痛、恐ろしいほどの倦怠感、トイレに行くのも這いつくばりながら死ぬ思いで行かなければなりませんでした。

 今年はまだインフルエンザがそれほど流行っていないように思います。去年の今頃はすごく流行っていて、発熱の患者さんが来れば、インフルエンザ抗原の迅速検査を行なっていました。今年も何人かはインフルエンザ陽性の患者さんがいましたが、去年と比べるとかなり少ないような印象があります。

 けれどもおそらくこのままでは終わらないでしょう。実は去年も医師どうしで「今年はインフルエンザ少ないね」という会話を年末までしていたのです。ところが、年が明ければ一気に広がって日本中で大流行しました。それを考えれば今は落ち着いていても来週には大流行、ということが充分にありえます。

 さて、インフルエンザ対策としては何をすればいいでしょうか。これは一番大事なことはワクチン接種です。インフルエンザワクチンを接種すれば100%感染を防げるわけではありませんが、ワクチンをしていると、仮に感染したとしても症状が軽くすみます。行政に義務付けられているわけではありませんが、小児と高齢者は全員接種された方がいいでしょう。また我々医療従事者もほぼ全員が接種しています。

 ワクチンは普段病院と縁のない人はなかなか接種する機会がないかもしれませんが、何とか時間をみつけて接種することをおすすめします。特に人と接する仕事をしている人には強く勧めます。料金は自費になるため少々高くつきますが、インフルエンザに感染するあの苦しみを考えると接種しておいて損はありません。ただ、今年はもう遅いかもしれません。抗体ができるまでに数日間かかりますから、ワクチンの有効性が出る前に感染してしまった、ということも起こりえます。

 インフルエンザのワクチンはできれば11月くらいまでに接種するのが理想です。これを読んで納得していただいた方は、来シーズンこそ早めのワクチン接種をしましょう!

 さてインフルエンザの薬ですが、実はよく効く薬があります。タミフルといって非常にすぐれたカプセルの薬です。これはワクチンが存在しない新型インフルエンザに感染したとしてもある程度の効果が期待できる優れた薬です。

 ただ、ひとつだけ欠点があるんですね。それは、早めに飲まないと効果がない、ということです。どれくらい早めに飲む必要があるかというと、症状出現後48時間以内です。だから、「インフルエンザかもしれないけど、もう病院はしまっている時間だから明日の朝受診しよう」と考えていたのでは間に合わなくなることもあるのです。今は20分程度で結果の分かる優れた検査もあって、これはどこの診療所にも置いています。だから「疑えばすぐに受診!」がコツなのです。

 最後にインフルエンザのポイントをまとめておきましょう。

 1 ワクチン接種を11月までにおこなうべし!
 2 特効薬は48時間以内に飲まないと効果がない!
 3 疑えば夜間でも病院を探して受診すべし!

 インフルエンザは誰にでも感染する病気です。「自分は健康だから大丈夫」という理屈はこの病気に対しては通用しません。油断大敵なのです。それから言うまでもないことですが、日々の手洗いとうがいはお忘れなく!