はやりの病気

第2回 花粉症 2005/02/22

 花粉症が流行っています。スギ花粉の少なかった去年に比べると、今年は20~30倍もの花粉が浮遊しているという報告もあります。昔から花粉症だという人もいれば、今年突然花粉症になったという人もいます。いったん発症すれば、今後長い間お付き合いをしなければならない病気だけに、症状を持っている人は大変です。

 花粉症の原因や免疫応答のメカニズムなどについては、いろんなところで紹介されていますので、ここでは「花粉症の上手な医者のかかり方」についてお話したいと思います。
 まず、病院嫌いの人や病院に行く時間のない人は、薬局で薬を買うことになります。それで治るという人もいますが、治るという人によく聞いてみると、薬の副作用に苦しめられると言う人が大勢います。副作用の代表は「眠気」です。この眠気の副作用があるために、仕事に影響が出る、とか、車を運転できなくなる、とかいった理由で薬を飲みたいけど飲めないという人も少なくありません。

 この眠気を惹起する花粉症の薬というのは「抗ヒスタミン薬」です。抗ヒスタミン薬がもたらす眠気は相当なもので、我々医師は、術後などで内服のできない入院患者さんが不眠を訴えたときに、眠気を誘発する目的で抗ヒスタミン薬の注射をおこなうこともあるほどです。たしかに鼻水や目のかゆみを止めるのに、抗ヒスタミン薬は劇的な効果がありますが、これだけ強い眠気が起こるのでは、実際には服用しにくいと言えます。

 ではどうすればいいのでしょうか。答えは、「眠気の起こらない抗ヒスタミン薬を医者に処方してもらう」です。最近の抗ヒスタミン薬は、この眠気がいかに起こらないか、といった観点から開発されています。喉が渇くなどの副作用は依然として起こりえますが、最大の難点であった眠気はほぼ解消されたのです。ただ人によってはそれでも眠気が起こることがありますが、その場合は他の抗ヒスタミン薬に代えてみるとうまくいくことが多いと言えます。多くの製薬会社が眠気の起こらない抗ヒスタミン薬を開発していますから、じっくりと取り組めば眠気の起こらない薬が見つかることは充分期待できるのです。

 どうしても抗ヒスタミン薬を使いたくない、という人は、漢方薬を試してみるのもいいでしょう。西洋薬である抗ヒスタミン薬に決して劣らないような漢方薬もあります。実際私は、何を飲んでも治らないという難治性の花粉症の患者さんに、ある漢方薬を処方して嘘のように治った、という経験をしたことがあります。

 花粉症の対策として、飲み薬だけでは不充分であることも多いでしょう。そんなときは、点鼻薬や目薬を使います。この場合も薬局で処方箋なしで買えるものより、医者が処方する薬の方がよく効きます。
 
 さて、先日ある患者さんからこんな質問を受けました。「先生、花粉症のときは何科にかかればいいんですか」というものです。正解を言いましょう。答えは「アレルギー科」です。アレルギー科を標榜している医師なら、専門的な見地から花粉症の治療をおこないます。ただし、アレルギー科を標榜している診療所というのはそれほど多くありません。かといって、私が他のところで述べているように、花粉症で紹介状もなく大きな病院に行くのも不適切だと思います。

 鼻水が出て、目が充血して、アレルギーがでる病態だからということで、患者さんによっては耳鼻科にいったり、眼科にいったり、あるいは皮膚科を受診する患者さんもいるようです。すると、極端に言えば、抗ヒスタミン薬は皮膚科で、点鼻薬は耳鼻科で、目薬は眼科で処方してもらわなければならない、などといった事態になるかもしれません。

 これは私が繰り返し主張していることですが、そもそも人間の病気を臓器別で考えることには無理があるのです。だからこそ何でも相談できるかかりつけ医(プライマリケア医)が必要なのです。どこの科を受診していいか分からないような症状でも、何でも相談できるプライマリケア医の診察を受ければ、多くはその場で治療できますし、より専門的な検査や治療が必要であるような場合は、適切な診療所、あるいは病院を紹介してもらえるのです。

 私の診療所でも花粉症の治療をおこなっていますが、多くは抗ヒスタミン薬、点鼻薬、目薬で症状が軽快します。場合によっては、抗ロイコトリエン薬という他の内服薬を加えることもあります。また、漢方薬を加えたり、あるいは漢方薬単独で治療する場合もあります。それ以上の専門的な治療、例えばレーザー焼灼法や脱感作療法というものが必要であったり、希望される患者さんに対しては、然るべきアレルギー科の診療所・病院を紹介するようにしています。
 
 では、今日のポイントをまとめましょう。

   薬局で医師の処方箋なしで買える花粉症の薬は眠気の副作用で苦しむことが多い。
   医師にかかるときは、アレルギー、鼻、目などを総合的に診る医師を探すべき。
  そのためにはアレルギー科を標榜している診療所、あるいはプライマリケア医が最適。・多くの眠くならない抗ヒスタミン薬や漢方薬がある。場合によってはレーザー治療などの専門治療もある。必ず適した治療法が見つかるから決して治療をあきらめない。 

 これを読んでくれている人のなかで花粉症の方がおられましたら、決して治療をあきらめないでくださいね。きっとあなたに合う治療法が見つかるはずですから。