はやりの病気

第15回(2005年8月) 日焼け -日光皮膚炎-

 夏に受診する患者さんの訴えに「日焼け」があります。「日焼け」は炎天下に肌を露出していればほとんど誰にでも起こりえますから、「病気」ではなく単なる「生理現象」と考えている人もいます。

 もちろん、軽症であれば単なる「生理現象」と考え、冷やす、安静にする、などの対症療法で、別段医療機関を受診する必要もありません。しかし、度を越して痛みが強いようなら「疾患」と考えるべきです。

 そして、疾患としての日焼けは「日光皮膚炎」と呼ばれます。さらに、日光皮膚炎が重症化すると皮膚症状だけにとどまりません。むくみ(浮腫)に始まり、頭痛・発熱・悪寒・食欲不振・吐き気・嘔吐・睡眠障害などが起こることもあります。さらに、重症化すると、一気に血圧が下がり(ショック)、生命の危険が脅かされることもあります。

 強い紫外線にさらされた皮膚は、軽症であれば赤くなる(紅斑)だけですが、ひどくなると水ぶくれ(水疱)ができたり、ぶつぶつ(丘疹)とか、ざらざらで厚ぼったい状態(苔癬化)になったりする場合もあります。

 季節的には、当然夏が最も多いのですが、海外旅行で強い紫外線にあたって起こすような場合もあり、年中遭遇することがあります。

 体感的に最も暑く感じるのは、日本では7月から8月あたりになると思いますが、実は紫外線の量は、5月から6月が最も多いとされています。また、4月の紫外線の量でも、日光皮膚炎を起こすには十分であり、4月頃から紫外線対策をおこなう必要があります。5月から6月の紫外線の量は、12月の2倍半程度だと言われています。しかし、少ない紫外線の量でも肌には様々なトラブルを起こす可能性もあり、シミやシワなどを気にする女性であれば、たとえ12月であっても何らかの紫外線対策が必要になります。

 もちろん、緯度によっても紫外線の量は大きく異なり、九州の紫外線量は北海道の2倍ほどであると言われています。

 さらに、標高でも変わってきます。だいたいの目安としては、1000メートル高くなるごとに、2割程度、紫外線量が増加すると言われています。

 真冬にスキー場で日焼けするのはなぜでしょうか。これは雪面が紫外線を反射するからですが、反射した紫外線は通常の約2倍となります。また、乾いた砂面や水面ではだいたい2割増しとなります。

 次に、紫外線を物理的に分類してみましょう。よく化粧品や日用品に「UV」と書かれているのを目にしますが、これは「UltraViolet」の略で、要するに「紫外線」のことです。

 紫外線(UV)は3つに分けることができます。UVA,UVB,そしてUVCです。このうち、UVCは地球上に到達しません。これに対し、UVAとUVBは地上まで到達し人体に影響を与えます。一般的には、日光皮膚炎の原因はUVBが原因であるとされていますが、UVAもある程度は関与しています。

 UVBはガラスを通過しませんが、UVAは通過します。また、UVAの方が波長が長いため、皮膚の深部にまで到達すると言われています。このため、UVAは日焼けやシミよりも、むしろシワに関与していることが指摘されています。

 よく、日焼け止めやファンデーションに「SPF」とか「PA」と書かれていますが、これは、UVBとUVAをどれだけ防げるかということを示しています。

 SPFはUVBをどれだけカットできるかの指標です。日本国内の紫外線量であれば、SPF1で、およそ20分間UVBを防げることになっていますが、もちろんこの20分というのはあくまでも目安であり、南の島や標高の高いところに行けばそんなにもたないでしょうし、汗で落ちてしまうこともありますから、適宜考えなければなりません。

 よく、単純にSPFの数字が高ければ高いほどいい、と考えている人がいますが、SPFが50を超えるようなものは(なかには100を超えるものもあります)、その効果が疑わしいように思われます。なぜならSPF50の場合、20分x50=約17時間となり、これなら朝に塗布すれば一日中効果が持続することになりますが、炎天下に1日中いれば、日焼けしてしまうこともあるからです。

 ですから、うまく日焼け止めを使うコツは、単にSPFの高いものを選ぶのではなく、何度も繰り返し日焼け止めを塗りなおす習慣をつけることです。

 PAは、UVAを防ぐ効果を示します。表示はSPFのように数字で示すのではなく、+、++、+++の3段階で示されています。通常、海や山で過ごす場合にも++であれば十分だと思いますが、状況によっては繰り返し塗りなおす必要があります。

 もうひとつ、言葉の整理をしておきましょう。日焼けを示す英語に、サンバーン(sunburn)とサンタン(suntan)があります。サンバーンは、真っ赤に腫れあがった皮膚、すなわち、日光皮膚炎の状態を指します。これに対し、サンタンは、炎症がおさまってからの皮膚が黒くなった状態(色素沈着)を現します。日本語では、同じ「日焼け」ですが、英語では、皮膚が赤い状態と黒い状態を別々の単語で区別しているというわけです。

 日光皮膚炎の対策としては、もちろん予防が最も大切です。すなわち、紫外線にさらされるときには、あらかじめ適切な日焼け止めを繰り返し塗ることが重要です。

 日焼け止めの選択には、2つの点に注意することが必要です。まずは、SPFとPAの値をチェックして、環境にあったものを選ばなければなりません。

 もうひとつは、日焼け止めの成分が、紫外線吸収剤か、紫外線散乱剤かということです。紫外線吸収剤には、一般的にパラアミノ安息香酸と呼ばれる物質が使われており、これにはかぶれる人がいます。このかぶれが起こると、日光皮膚炎なのか、この物質による接触皮膚炎なのか、区別がつきにくくなることもあります。ですから、化粧品などでかぶれたことのある人は、あらかじめ紫外線散乱剤を使用するのが無難と言えるでしょう。

 日焼け止めによる予防を怠ったり、忘れたりして、日光皮膚炎になってしまった場合はどうすればいいでしょう。軽症であれば、市販の抗炎症剤を使ってもいいかもしれませんが、重症化すれば医療機関を受診しなければなりません。

 日光皮膚炎の患者さんを診たときに、軽症であれば、非ステロイド性の抗炎症剤を処方するだけで様子をみますが、それでは炎症がおさまらないような場合には、ステロイドの外用剤を短期間使用してもらうこともあります。また、吐き気や頭痛、発熱などの強い全身症状が出ているようなケースには、ステロイドの内服薬を処方することもあります。さらに、症状が強いような場合、例えば血圧が下がっているときや意識がもうろうとしているときは、緊急入院となります。

 日光皮膚炎は、しばらくすると、症状が痛みから「痒み」に変わります。そして、この痒みは、例えば虫刺されや水虫のときのようなかわいらしい痒みではなく、耐え難い劇的なものになります。患者さんは、「こんなに痒いなら痛い方がずっとマシ!」と言います。この場合も、ステロイドの外用を処方します。痒みに対し、ステロイドの内服薬を処方することは滅多にありませんが、抗ヒスタミン薬を内服してもらって痒みを抑えることもあります。

 日光皮膚炎は、紫外線以外の要因が原因となっていることもあります。その要因とは「薬剤」です。特定の薬剤を内服したり外用したりすることによって、日光に対する過敏性が強くなり、わずかな紫外線の量でも容易に日光皮膚炎を起こしてしまうことがあるのです。(これを「薬剤性日光皮膚炎」と呼びます。)

 具体的な薬剤は、ある種の高血圧の薬や、抗生物質、鎮痛薬、リウマチの薬、抗癌剤、精神科の薬、抗てんかん薬、などです。また、外用薬では痛み止めの湿布や塗り薬で起こることもあります。

 治療法は、紫外線のみによる日光皮膚炎のときと同じですが、まずは原因となっている薬剤の内服、外用を中止することが先決です。

 もうひとつ、日光皮膚炎をおこしやすくするものがあります。それは「食べ物」です。その食べ物とは、パセリ、セリ、イチジク、ライム、レモンなどです。これらには、日光過敏の原因となるソラレンという物質が含まれていることが原因です。ですから、これらを大量に摂取したり、あるいは美容目的でパックをしている場合にも注意が必要です。

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