マンスリーレポート

2005年6月号 2005/06/01

 6月になりました。

 私の5月の最大の出来事と言えば、28日から30日まで京都の国際会議場で開催された「WONCA」という国際学会でした。

WONCAとは、World Organization of National Colleges, Academies and Academic Associations of General Practitioners/Family Physiciansの略で、簡単に言えば、「国際家庭医学会」のことです。

 WONCAは、数年に一度しか開催されず、それが今回は日本で開催されたわけですから、現在の日本が、いかに、家庭医(プライマリ・ケア医/総合診療科医)の成長期であるかということが伺えるように思います。

 そして、WONCAと共に、日本家庭医学会、日本プライマリ・ケア学会、日本総合診療科学会の3つの学会も同時に開催されました。私はこれら3つの学会すべてに所属しているため、まさに何があっても参加しなければならないといった感じの大会になりました。

 通常、大きな学会では、著名な医師の講演や発表がたくさんあり、それらが同じ時間に異なる会場でおこなわれます。そのため、是非とも聞きたい講演や発表が同じ時間に重なれば、どれかを犠牲にしなければならず、これははがゆいものです。今回のWONCAでも、そのはがゆい思いを何度か味わいました。

 それでも、今回の大会ではいくつもの興味深い講演や発表を聞くことができて、私としては非常に満足のいくものでした。家庭医という領域は、他の専門医療に比べると、扱う範疇がかなり広く、今回聞くことのできた講演や発表も、喘息、うつ、頭痛、神経痛、神経症などのプライマリ・ケアの疾患から、全人医療、疫学、電子カルテや医学教育まで、幅広いものとなりました。

 大会に参加しているのは、国際学会ですから外国人も多かったですし、また学生や研修医も大勢参加していたのが印象的でした。

 こういうアカデミックな学会に年に数回参加できるのは、医師の醍醐味のひとつと言えます。参加費の他、交通費や宿泊費もかかるため、金銭的にはかなりの出費になるのですが、得るものの方が圧倒的に大きく、私としては大好きなイベントのひとつです。

 よく研究された講演や発表を聞いていると、書籍や日頃の臨床経験では分からないことが学べますし、今後の自分の臨床に役立てることができます。今回私は何も発表しませんでしたが、いずれ大きな学会でも何か発表できればと考えています。自分の経験したことや研究したことを多くの医師に知ってもらって臨床にいかせてもらえるというのは、このうえない幸せであるのです。そして、このような意見交流を通して、医学というのは日に日に進歩していくわけであります。

 さて、6月は私にとって大きなイベントがふたつあります。

 ひとつは、6月4日に開催される「大阪STI(性感染症)研究会」です。これは、国際学会であるWONCAと比べると、会員のほとんどが大阪の医師ですから非常に小さな研究会なのですが、私は前回に続いて、今回もひとつの演題を発表することになっています。

 前回(2004年11月開催)は、「タイ国のエイズ事情」というタイトルで、タイのエイズホスピスやHIV/AIDSに関する社会的な考察を発表しました。今回は「HIV抗体検査の受診動機」というタイトルで発表をおこないます。前回の発表が45分間だったことを考えると、今回私に割り当てられた時間は10分間なので気楽と言えば気楽なのですが、それでも気合いが入ります。

 今回の内容は、私が2004年の5月から7月まで研修に行っていた「大国診療所」に、HIV抗体検査を目的に受診した患者さんに対するアンケート調査をまとめたものです。アンケートの作成や回収は、大国診療所でおこない、私はその結果をまとめるだけです。アンケートの結果をまとめさせてもらって、発表までさせてもらえる大国先生には、感謝の気持ちで頭が上がらない思いです。

 もうひとつ、私にとって大きなイベントがあります。それは6月28日に「羽衣学園」という大阪の学校で、中高生を対象におこなう講演です。講演の内容は、「受験について」です。これまで医学に関する発表は何度かおこなってきましたが、受験についての講演は初めてです。しかも講演時間は1時間もあります。拙書『偏差値40からの医学部再受験』に興味を持ってくださったある方のご好意で、今回の講演が決まったというわけです。

 受験についての講演という初めての体験を想像すると、まだ一ヶ月近くも先だというのに少し緊張感を感じます。けれども、このストレスがなんとも言えない心地よいプレッシャーを与えてくれるので、私はこういうイベントが大好きです。なんとしても、成功させたいと考えています。
 
 2つの発表/講演については、来月のマンスリーレポートでお話することにいたします。
 
 最近、メールでの問い合わせが増えてきて、内容も受験相談から、私のエッセイの感想、病気の相談まで多岐に渡っています。できるだけ返事を書かせてもらいますので、みなさん、お気軽にメールをくださいね。

 それではまた・・。