マンスリーレポート

2007年9月号 相乗効果を発揮する、ということ 

早いもので、すてらめいとクリニックがオープンして8ヶ月以上が過ぎました。

 クリニックは都心部にありますから、お年寄りの集まる郊外や地方の診療所とは異なり、繰り返しの再診を必要としない働き盛りの若い患者さんが多数を占めることは当初から予想していましたが、それでもこの間におよそ2,500人の新患の患者さんが来院されたことには少し驚いています。

 最近は、職場のストレスなどからくるメンタルヘルスの問題を抱えている患者さんが増えてきており、現代社会が孕んでいる職場の環境問題をあらためて実感しています。

 さて、患者さんが増えてくるとクリニック内に様々な問題が生じてきます。「待ち時間が長い」「(私も含めて)スタッフの患者さんへの対応に問題がある」「事務処理が迅速にできていない」、といった多くの問題をスタッフ一同は認識しています。

 クリニックのスタッフは、オープン当初から比べると入れ替わりもあり、またスタッフ総数が増えてきているのですが、以前に比べると「問題を発見して改善しよう」という空気が次第に強くなってきています。

 これは、スタッフのそれぞれが、常に「問題はないか」という視点から業務に取り組んでいるために、少しでも改善すべき点があれば、それをミーティングや会議の場で、あるいは業務中にでも問題提起をし、同時に改善策も提示するような習慣ができているからです。

 例えば、こんなことがありました。

 患者さんが集中する時間帯にはたくさんの患者さんのファイルが混在するという問題がありました。このファイルの患者さんは診察がまだなのか、尿検査や血液検査の結果待ちなのか、診察が終わって会計待ちの状態なのかが、ときに分からなくなることがあったのです。以前は、おおまかにはルールを決めていたのですが、患者さんが集中したときにはそのルールで対応しきれておらず、その結果、患者さんに不必要な待ち時間を与えてしまうということがありました。

 ある日のこと、業務が終わってから誰かがこの問題を提起しました。(誰が提起したかは覚えていません。今のスタッフであれば誰もが提案するような空気になっています)

 すると、他のメンバーがそれに同意し、次々と改善案が出されました。みんなが一生懸命に案を出した結果、なんと15分後には、誰がみても同じ問題を繰り返さないようなシステムが確立され、さらにそのシステムを実行できるような環境がととのったのです。実際、翌日からは同じ問題は一切おこらなくなっています。

 もうひとつ例をあげましょう。

 クリニックには女性の内診台があります。私は産婦人科専門医ではないために、妊婦健診や中絶手術などはしていませんが、性感染症や子宮がんの検査目的の患者さんは大勢おられるため、子宮けい部(子宮の入り口)や腟内の診察はおこなっています。

 内診台に上がるのは初めて、という患者さんも少なくなく、そういう方はたいへん緊張されるでしょうし、恐怖感をもたれている方もいるに違いありません。

 内診台でリラックスして検査を受けてもらうにはどうすればいいか・・・。この問題に対しては何度かミーティングで取り上げられ、ブレイン・ストーミング(大げさ?)が重ねられました。

 現在は、安らぎが得られるような香りの芳香剤を置き、さらに内診室にも有線放送のスピーカーを設置してリラックスできる音楽を流すようにしました。こうすることによって、以前から通われている患者さんからも「以前よりも心地よくなりました」という言葉をいただくようになりました。しかし、もちろん、これからもさらなる改善につとめていきたいというのが我々の考えであります。

 最近のクリニックでは、誰かが何か問題を見つけると、すぐにそれを提案し話し合いがもたれ、実行にうつすような雰囲気ができあがっています。私は、仕事の醍醐味のひとつが「相乗効果を発揮する」ことだと考えています。もちろん、これはクリニックに限った話ではなく、どのような職場であっても、あるいは家族の場においても同じことです。相乗効果を発揮できているかどうか、これが仕事や家庭生活を楽しめるかどうかのひとつのポイントだと思うのです。

 今のクリニックでは、誰かがひとつの問題を提起すると、他のスタッフが様々な意見を述べます。その結果、問題提起をした人が考えていた改善案よりもずっと優れた解決策が見つかることも少なくなく、まさにこれが「相乗効果」なのです。

 さて、相乗効果を発揮できている、という意味において今のクリニックは非常にいい状態なのですが、これほどいい状態を維持できているのは、すてらめいとクリニックが大きすぎる組織ではないから、というのがひとつの理由です。これが大きな組織になると、例えば有線放送のスピーカーを設置するのにも稟議書が必要となり、多くの人のはんこが必要となり実行までにかなりの時間がかかってしまいます。

 しかし、小さな組織であれば、それだけでどのような組織でもうまく事が運ぶかというとそういうわけではありません。スタッフどうしの信頼関係が樹立されていなければなりませんし、スタッフのそれぞれの能力を誰もが認めていなくてはなかなかできることではありません。

 相乗効果を発揮するには、まずはメンバーのそれぞれが強い責任感と実行力を有していることが条件であり、さらに互いが互いを尊重するような土台がなければなりません。

 そういう意味で、現在のすてらめいとクリニックはまさに「理想の職場」であるように思えます。

 もちろん、相乗効果を発揮し続けるには、各自が高い自律性を維持し続ける必要があり、そのためにはそれなりの努力を強いられます。

 また、スタッフが思っていることと、患者さんの考えにズレが生じる(すでに生じている)可能性もあります。

 現在のクリニックのスタッフは、ミッション・ステイトメントの第1条にもあるように、「常に患者さんの立場にたって考える」というミッションを遂行すべく努力しています。

 すてらめいとクリニックを受診された患者さんで、クリニックの改善すべき点に気付かれた方がおられましたら、ご提案いただければと思います。

 院内には意見箱も設置してありますので、お気づきの点がございましたらご協力をお願いいたします!