マンスリーレポート

2008年12月号 駆け抜けた2008年

 一年間ってこんなに早かったかな・・・

 最近とみにそのようなことを感じます。2008年がスタートしたのがついこの前のような気がしてなりません。

 今年のクリニックの新年会のとき、スタッフのひとりが「患者さんの数も増えるだろうし今年は忙しくなるね」と言っていたのを覚えているのですが、結果はこのスタッフの予言どおり、クリニックは多忙極まりないものになりました。

 増えていく患者さんの人数に対応するため、スタッフを増やし、予約システムを何度も改良し、業務システムの見直し・改善を図ったため、昨年に比べると随分効率よく診察ができるようになったとは思いますが、毎日のようにイレギュラーが起こりますし、重症や緊急性を要する患者さんが来られることもありますから、なかなか思うようには業務が進行しないこともあります。(そのため患者さんの待ち時間が長くなってしまうこともあります。この場でお詫びいたします)

 新しいスタッフの採用、業務の見直し、毎日診察終了後に深夜までおこなわなければならないカルテ記載、経理業務、労務業務、レセプト業務、・・・・、とこのような日常の業務に追われていると時間がたつのがあっという間です。そして、診察がない日には、日々たまっている業務の消化、学会発表の準備、クリニック以外での診療の準備、など、これまたやらなければならないことが山ほどあります。

 目の前に現れる仕事を次々とこなしていくと、いつの間にか年の瀬だった・・・。そんな感じです。

 これまでの人生を思い出してみても、ここまで忙しい一年間があったかな・・・、と感じます。たしかに、医学部を受験する前の一年間はプレッシャーの中で勉強を強いられていましたからそれなりのストレスはありましたし、医学部の6回生の頃は、実習と卒業試験と医師国家試験がありましたからやはり時間のやりくりが大変でした。けれども、今年の一年間のように、次から次へと責任ある仕事が目の前に立ちはだかり息つく暇もない、という感覚はこれまでにはありませんでした。

 勤務医、特に研修医の頃は、病院に拘束される時間は今よりも長かったと思いますが(週に100時間以上は拘束されていました)、例えば、病棟の患者さんが安定しているときや、深夜の救急外来が落ち着いたときは、研修医室で比較的自由に勉強をすることができました。

 忙しくてあっという間の一年間だったことは感覚としては事実なのですが、では、私がおこなった仕事はどれほど"かたち"になったのでしょうか。我々の仕事は、モノをつくるような仕事ではなく、治療をして病気を治したり、あるいは研究や発表をおこなったりすることです。

 クリニックの診療は月にだいたい20日程度ですから、1日の平均患者数が70人として、月に1,400人、1年間では16,800人!となります。本当にこんなにも大勢の患者さんを診察したのかな、と信じられないような数字です。このうち新患の患者さんはカルテ上で4,102人(12月13日現在)で、今年新たに4千人以上の人と出会ったんだ・・・と思うと不思議な気持ちになります。

 一般のクリニックでは1日に100人以上診るところも珍しくなく、多いところでは1日あたりの患者数が200人を超えるそうです。しかも医師は1人で、です。太融寺町谷口医院では、1日およそ9時間の診察となりますが、患者数が70人を超えると2時間以上待ってもらう人がでてきます。けれども、一人当たりの診察時間を減らすようなことはしたくないので(これでも昨年に比べると一人当たりの診察時間は確実に短くなっています)、来年からはもっとたくさんの患者さんを診察させていただきます、とは言えないのです。

 クリニック以外での仕事を振り返ってみたいと思います。まず、他の病院や夜間救急外来の仕事は年明けから少しずつ減らしていき、9月以降はほとんどゼロとなりました。せっかく依頼をいただいてもクリニックの業務が多すぎて断らざるを得ないのです。

 産業医の仕事は2~3ヶ月に一度程度、医師会経由の依頼で労働者の面接をおこなっています。産業医の仕事については将来的には増やしたいのですが、現時点では時間の確保がむつかしそうです。

 それ以外の仕事としては、学会や研究会での発表(これは「仕事」になるとは思いますがお金をもらえるわけではありません。むしろ参加費が必要となるため「赤字」になります。医師の仕事というのはお金をもらうものばかりではないのです)が5回、講演が5回(うち1回は来週の予定)、論文執筆が1本(ただし現時点でほとんど未着手)です。

 これ以外にはGINA(ジーナ)の仕事がありますが、今年は他のスタッフにまかせっきりで本格的な活動は私自身としてはほとんどできませんでした。予定していた日本エイズ学会での学会発表も、クリニックの行政手続き上の関係で急きょ参加できなくなったほどです。

 私は2008年の自分のテーマを「バランス」としました。様々な仕事のバランスをとっていこう、そしてできればプライベートとのバランスもとろう、と考えたのです。プライベートが充実した、とはとても言えない1年間でしたが、仕事だけでみてみると、昨年末の行き詰っていた頃よりは少しはましかな、という気がします。今の自分にとって優先順位が低いと思われる仕事は、依頼をいただいてもお断りさせてもらいましたし、まずはクリニックの患者さんのことを優先的に考えて、できる範囲でその他の仕事に取り組みました。

 自分の仕事のことを考えるときにいつも思うことがあります。これだけ多忙のなかで、それほどストレスを感じずに仕事をおこなうことができるのは、やはり私を支えてくれるスタッフの存在があるからです。今年新たに加わったスタッフも昔からいるスタッフも全員が、クリニックに来られる患者さんの立場にたって一生懸命に仕事をしてくれているから私が全力で走ることができるんだなぁ・・・、と思うのです。

 日本漢字能力検定協会が発表した2008年を表す漢字は「変」だそうです。我々のクリニックではクリニックの名称が「変わり」、予約システムが「変わり」、スタッフの何人かが「変わり」ました。しかし、ミッションステイトメントにもある「患者さんの立場にたって・・」という我々の姿勢は「変わっていない」のです。

 来年からも、スタッフと意識を共にして患者さんと接していきたいと思います。患者さんはもちろん大切ですが、別の意識のところでスタッフはもっと大切・・・。この私の気持ちも「変わることはありません」。