マンスリーレポート

2008年3月号 "新聞が読める"という幸せ

以前にも書きましたが、私は今年に入ってから仕事を大幅に減らしています。去年の年末までは、すてらめいとクリニックが休診の木曜と日曜のほとんどは、別の病院で勤務をしていたのですが、今年に入ってからは、他病院での勤務は月に1から2回のみとしています。

 ただ、休みにしているとはいっても、大学病院(医局)の行事や、学会や研究会、他の会合などで丸一日休める日はほとんどありません。けれども、それでも去年までに比べれば自由になる時間がかなり増えたのは間違いありません。

 今年になってから、集中してやらなければならない事務仕事などを木曜と日曜に回して、平日の朝と勤務終了後(といってもカルテを書き上げる頃には日付が変わっていますが・・・)に少し自由時間をつくるようにしています。

 時間をつくることで、私が真っ先におこなったのは「新聞を読む」ということです。

 私は、おそらく20歳頃から、新聞を読む習慣があって、半年ほど前まではほとんど毎日読んでいました。医学部受験のときにも新聞だけは毎日読みましたし(受験生だからこそ新聞を読まなければならない理由は、拙書『偏差値40からの医学部再受験 実戦偏』にも書いたとおりです)、医師国家試験の前も、研修医時代にも、数日間遅れることがあったとしても夕刊も含めてできる限り読むようにしていました。

 GINAの活動などでタイに渡航しているときも、「Bangkok Post」、「The Nation」などの英字新聞、あるいはタイ語の「タイ・ラット」などを読むようにしていました。

 ところが、昨年の秋ごろからクリニックの仕事が多忙を極めるようになり、新聞を読む時間すら捻出できなくなってしまったのです。これが、私にとっては大変なストレスで、「時間を使う」のではなく「時間に追われている」といった感覚で毎日を過ごさなければなりませんでした。

 今年に入って、平日に時間がつくれるようになり新聞を読めるようになったことは私にとって大変"幸せ"なことだと感じています。

 ところで、最近は「インターネットで記事が読めるのだから(紙の)新聞は不要ではないのか」と言われることあります。

 しかし、私はそうは思いません。紙の新聞にはインターネットにはない長所がいくつもあるからです。

 まずひとつは、紙の新聞であれば、重要な記事とそうでない記事が、スペースの広さ、見出しの大きさ、などで簡単に分かるということです。時間のないときは、一面と二面だけ読むとか、各ページの大きな見出しだけ読む、といった調節ができます。これで、大きなニュースに付いていけなくなることが防げます。

 次に、紙の新聞には、コラムや社説、連載記事(コラム)、特集記事などが読めるというメリットがあります。これはインターネットの記事配信にはないサービスです。

 私は20年近く、日経新聞を愛読していますが、同新聞の連載コラムや特集は非常に充実していると感じています。私は(医学専門誌を除けば)週刊誌や月刊誌をほとんど読みませんが、これは日経新聞を読んでいるだけで充分と感じているからです。様々な分野の人がコラムやエッセィを書かれ、経済や金融などについては特集記事が充実していますから、毎日朝刊と夕刊を読んでいるだけでかなりの勉強ができます。しかも月4千円ちょっとの費用しかかからないのです。

 一方で、インターネットで新聞を読むメリットもたしかにあります。保存が簡単なことも理由ですが(新聞のスクラップはタイヘン!)、最大の利点は、「キーワード検索ができる」ということでしょう。各新聞を横断して検索できるサイトを使えば、多くの新聞の記事を一度に拾ってくることができます。

 紙の新聞を愛読する私も、検索機能と保存の便利さについてはインターネットを用いてその利便性を享受しています。いくつかの新聞記事配信サービスを申し込んでいますし、保存は(古典的な紙のスクラップではなく)インターネット上の記事をテキストファイルに変換してパソコン上に取り入れています。紙のスクラップだと、いったん保存したものを取り出すのに大変な時間がかかりますが、パソコンの中にテキストファイルで保存してあれば、その中身が煩雑になっていたとしても、再び「キーワード検索」をかけることで簡単に呼び出すことができます。ちなみに、この検索機能を発揮するのは、ワードなどのワープロよりも、エディタ(私は「秀丸」を使っています)の方がはるかに優れています。

 インターネットで新聞を読むもうひとつのメリットは「英字新聞の記事が簡単に入手できる」ということです。

 これは本当にすばらしいことだと思います。インターネットには様々な利便性がありますが、この「英字新聞の記事の入手」が私にとっては最大のメリットだと考えています。

 インターネットが普及していなかった頃、私は紙の英字新聞を買っていました。当時最も安かった「Daily Yomiuri」を購読していましたが、日本語の新聞と英字新聞の両方を購読するとそれなりのコストがかかります。それに、じっくり読もうと思えば必ず辞書が要りますから、新聞を読むのにちょっとした"やる気"が必要になります。

 インターネットを使えば、(新しい記事であれば)ほとんどは無料で読めますし、パソコン上の(またはウェブサイト上の)辞書を使えば重たい辞書を用意する必要はありません。(ちなみに翻訳ソフトは、現時点では私の知る限り役に立つものはなく、単語を調べる辞書が現実的です) さらに、検索機能を利用すると、実に世界中の新聞記事が瞬時に手に入るのです!

 今のところ、世界中の新聞の横断検索ができる検索サイトで使い勝手がいいものは、私の知る限りありませんが、いくつかの新聞のトップページからキーワード検索をかけると、必要な記事がごく簡単に手に入ります。参考までに、私がよく閲覧する新聞は、「Reuter」、「AP」、「CNN」、「BBC」、「China Daily」、「The Independent」(UKのタブロイド紙)、「News.Com.Au」(オーストラリアの新聞)、「Bangkok Post」(タイの英字新聞)、などです。

 もちろん、英字新聞は単にニュースを得るだけでなく、英語の勉強にもなります。英語の勉強を意識した英字新聞配信サービスでは、記事をネイティブ・スピーカーが読み上げてくれるものもあり、こういうサービスを利用して、聞き取りやディクテーションなどをおこなえばリスニングの上達につながります。ということは、インターネットで英字新聞を読むことで、かなり効率的な英語の勉強ができるということになります。しかも、コストはほとんど無料!なのです。

 さて、新聞を読むことで得られるメリットをまとめてみましょう。

 まず、社会・経済・政治・金融・科学技術・医療・文化など各領域の最新の情報についていけます。各分野で活躍する人のコラムなどが読めて、特集記事では様々な領域の勉強ができます。インターネットを用いれば、検索が容易にできて、保存と取り出しが簡単にできます。さらにインターネットで英字新聞を読めば、世界中のニュースを瞬時に入手することができて、英語の勉強がほとんど無料でできます。

 平日に少しの時間をとることで、このようなことが再びできるようになった私は、"幸せだな・・・"と思うのです。