マンスリーレポート

2011年1月号 「与える」ということ

このコラムで毎年書いているように、私は年末年始に自分のミッション・ステイトメントを見直し、さらにその年の課題を決めています。課題は、昨年(2010年)は「仲間との時間を大切にする」、2009年は「周りを理解する」(これについてはコラムに書きませんでしたが)、2008年は「バランスをとる」、2007年は「貢献」、2006年は「勉強」、2005年は「奉仕」でした。

 昨年末から新春にかけての数日間、私は国内のある地方都市でほとんど何もせずにゆっくりと過ごしました。この、何もせずにゆっくりする、というのは私にとって「至福の時間」であり、その何もしないなかで、自分のミッション・ステイトメントを見直し、そしてその年の課題(テーマ)を考えます。1年間(2010年)に起こったいろんなことを思い出して、それらに対し反省と考察を加え、これからの目標や課題を吟味します。丸3日間ほどこの作業を続けていると、脳内が洗われてリフレッシュされるような感覚となり、一年間の疲れが取れていくように感じられます。

 そして、そのような脳内のリフレッシュを経て、決定された私の2011年の課題は「与える」です。

 誰もがそうであるように、私も実社会のなかではいくつかの"顔"があります。私の場合は、まず患者さんと向き合う医師であり、太融寺町谷口医院のリーダーであり、NPO法人GINA(ジーナ)の代表であります。

 2011年の課題とした「与える」は、その立場ごとに何をどのように与えるかが異なります。

 まず、医師として患者さんに自分ができる限りのことを与えたい、と考えています。診察・検査・投薬などだけでなく、食事・運動・禁煙などを踏まえた生活指導をおこない、さらに今年はセルフメディケーションに取り組んでいきたいと考えています。

 よく言われるように日本は完全な医師不足です。医師不足の結果、何が起こっているかと言うと、本当はじっくりと時間をかけて患者さんと話をしたいのだけれどそれができずに溜まる医師側のフラストレーションと、もっと話を聞いてほしいけれど医師が忙しそうにしているから言いたいことの半分も言えない患者さん側の不満がぶつかりあい、お互いの距離が離れたままでコミュニケーションの齟齬が生じているように私は感じています。

 医師側は理解を得られずにクレームを突きつけてくる患者さんをモンスター・ペイシェントと呼び、患者さん側は医師の不親切な態度から医療不信に陥り、それが発展すれば医事紛争になりかねません。もしも充分な時間があり、医師と患者さんがじっくりと話し合うことができれば、互いを理解できるようになり双方にとって満足いくようになるに違いありません。

 しかし、実際にはどこの医療機関でも、待ち時間が長く診察に充分な時間がとれない、というのが現実なわけです。そしてこの状況が改善される見込みはありません。ならば、患者さんができるだけ医療機関を受診しなくてもいいように、適切な予防をおこなってもらい、ある程度の医学的知識を持ってもらうようにセルフメディケーションをすすめていくのが得策です。

 健康上のことで気になることがあれば気軽に受診してくださいね・・・。私はこのように患者さんに言うことがしばしばありますが、例えば、同じような症状で何度も受診している患者さんに対しては、気になることがあれば"盲目的に"受診するのではなく、まず自分でできることがないかどうかを考えてもらいたいのです。そのために、患者さんによっては、ある程度高度な医学的知識まで伝授したいと考えています。

 医師として私が伝授したい(与えたい)と思うのは、患者さんに対してだけではありません。2010年は合計3人の研修医もしくはレジデントの医師が太融寺町谷口医院に研修に来られ、私はできる範囲で自分の知識や技術を伝授したつもりですが、これを今後も続けていきたいと考えています。

 次にクリニックのリーダーとして「与える」ことを実行したいと考えています。この場合は「与える」よりも「分かち合う」と言った方が適切かもしれません。自分が日々の診療のなかで感じている問題点を他のスタッフに共有してもらいたいと考えていますし、仕事の内容によっては業務そのものを委譲したいと考えています。例えば、看護師には薬の説明や電話問い合わせに対する対応をおこなってもらい、事務職にはこれまで私がひとりでやっていた事務作業などを譲渡したいと考えています。

 GINA代表としては、もちろんHIV/AIDS患者さんやエイズ孤児の支援というかたちで「与える」ということを実践したいのですが、残念ながら現地(タイ)を訪問する時間はほとんどありません。そこで、これまで通り寄附をおこない、現地の支援をサポートし、さらに「タイにボランティアに行きたい」という有志を探していきたいと考えています。すでに、今年タイにボランティアに行ってくれるという二人の学生と面談をしましたが、今後さらにこのような有志を募っていきたいと考えています。

 私の公的な3つの顔は、医師、クリニックのリーダー、GINAの代表、となると思いますが、実は数年前からもうひとつ地道に続けている行動があります。

 それは、勉強に対するアドバイスです。

 私は『偏差値40からの医学部再受験』など勉強に関する数冊の本を上梓しており、その関係で受験や勉強に関する相談メールがしばしば送られてきます。きちんとした相談に対しては、できるだけ返事をするようにしていますが、全員には返信できていません。(自分の名前を名乗り、きちんとした内容のものについては全例何らかの返答をしているつもりですが・・・)

 相談内容には同じようなものもあり、受験や勉強で悩んでいる人は相当いるのではないかと感じています。そして、以前別のところでも述べましたが、受験というのは何も医学部受験が特異なわけではなく、他学部の受験でも、各種資格試験でも、TOEICやTOFELでも、あるいは試験のないものでも勉強の要領や醍醐味には共通するものがたくさんあります。

 勉強に対するアドバイスをするといっても、具体的にどのようなかたちでおこなうかはまったく決めておらず「白紙」というのが正直なところですが、何らかのかたちで(例えばウェブサイトをつくるなどして)勉強のアドバイスを効率的におこなえる方法を模索したいと考えています。そして私が知る限りの勉強に関するアドバイスを「与える」のです。

 医師、クリニックのリーダー、GINA代表の3つの顔に加え、勉強アドバイザーとして私の持っているものを「与える」というのが私の課題になりますが、これら以外の立場からも「与える」ことを実践していきたいと考えています。例えば、私は大阪市立大学医学部附属病院総合診療センターの非常勤講師であり、日本医師会認定産業医であり、スポーツ医であり、大阪プライマリケア研究会の世話人でもあります。

 そして、もちろん忘れていないのが家族や仲間に与えるプライベートな時間です。昨年(2010年)の課題とした「仲間との時間を大切にする」は今年も継続したいと考えています。

 今年も多忙な一年になりそうです・・・。

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2018/09/25

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