マンスリーレポート

2011年4月号 強力なリーダーシップが必要なとき

東日本大地震が発生した2011年3月11日から1ヶ月近くがたちました。あれだけの惨劇が起こりながら、冷静に行動する被災者の方々に対して、国内外からお見舞いや賞賛の声が寄せられていることが繰り返し報道されており、世界中の人々が被災者を応援していることがよく分かります。

 3月12日に設置した太融寺町谷口医院内の募金箱にもたくさんの方からの寄附金が集まり、3月末でいったん集まった金額を日本赤十字社に寄附しました。これからも当分の間、被災者に対する寄附金をクリニックで集めていきたいと考えています。

 私自身は今回の震災で現地に訪れていませんが、現地に赴いた医師からの報告はメーリングリストなどで伝わってきます。いくつかの報告をまとめてみると、まず今回の震災は阪神大震災のときとは様子がかなり異なるようです。

 阪神大震災では、家屋の下敷きになる人が多く、医師の側からみれば、外傷に対する治療、つまり出血や骨折、打撲などに対する処置が多くの場面で必要とされました。一方、東日本大震災では、地震よりもむしろ津波による被害が多かったこともあり、外傷ではなく、高血圧や糖尿病の悪化など慢性期の疾患に対する治療が求められることが多いようです。このため、被災地に赴いた外科医のなかには、活躍の場がなく早々と引き上げた者もいたそうです。また、家族を亡くした喪失感や災害のシーンが蘇ることなどから「眠れない」「不安がとれない」といった症状が現れるケースが多く、心のケアも必要となっているようです。

 内科的な慢性疾患や精神症状は、かなり長期にわたりケアしていかなければなりません。現場に赴いた医師の感想で最も多いのは、「支援は長期にわたっておこなわれなければならない」というものです。

 医療面以外をみてみても、まず原発の問題の解決に相当時間がかかりそうですし、被爆については風評被害も含めて長期で取り組んでいかなければなりません。被災地の復興には、おそらく阪神大震災のときよりも時間がかかるでしょうし、電力の問題をどうするのか、日本経済はどうなるのか、・・・、と山積みされた問題はどれも長期的な視点から考えていかなければならないものばかりです。

 災害後の心理状態を少し学術的にみてみると、まず災害直後に「茫然自失期」という期間があり、その次に「ハネムーン期」と呼ばれる一種の躁(そう)状態のような心理となります。今回の震災では、「茫然自失期」から「ハネムーン期」への以降はすぐに起こり、国民全体あるいは世界中がハネムーン期になったように私は感じています。

 問題はここからです。ハネムーン期が終わると、今度は「幻滅期」と呼ばれる無力感に覆われる期間がやってくると言われています。被災地以外の人々からは次第に関心が薄れ、ハネムーン期には他人に対する思いやりと正義感から自然にできていた団結力も徐々に薄まっていくかもしれません。

 被災者の方々を支援するためには、「長期的な視点」が絶対に必要です。そして、現在の国内外の盛り上がりを風化させないためには、ひとりひとりが「自分に何ができるのか」を長期的に考えていかなければなりません。

 しかし、戦後最大の危機とも言われている今回の震災に対しては、ひとりひとりの考えだけでは充分ではありません。どうしても必要なのが「強力なリーダーシップ」です。

 では、誰がリーダーシップを発揮すべきか、ですが、これは首相以外にありません。首相が強いリーダーシップを発揮して国民をまとめていかなければこの国の明るい未来はない、と私は考えています。

 この点で私は、震災後のマスコミの報道や知識人のコメントなどに違和感を覚えています。なぜこの時期に首相を批判するような意見を掲載しなければならないのでしょうか。もしも与党や首相がマスコミの批判を気にして、思い切った政策がとれなくなったり、いつも世論を気にするようになったりすれば、結果として困るのは被災者ではないでしょうか。

 参考までに、私は特定の支持政党を持っておらず、選挙で投票する政党は一定していません。そして、ここ何年かの選挙では(詳細は伏せておきますが)少なくとも比例区に関しては民主党に投票していません。しかし、それでも今は菅首相にがんばってもらいたいと考えています。菅首相には世論やマスコミの報道を気にすることなく、信念を持って強いリーダーシップを発揮してもらいたいのです。

 「職場におけるリーダーシップ」というのは、私が関西学院大学社会学部を卒業(1991年)するときに書き上げた卒論のタイトルなのですが、実は今でも私はリーダーシップに関する勉強(というか単なる趣味ですが・・)を続けています。もちろん、学問としてのリーダーシップがそのままリーダーシップの実践につながるわけではありませんが、それでもどのような状況のときにどのようなリーダーシップが求められるか、ということに思いを巡らせることがしばしばあります。

 リーダーシップ論にはいろんなものがありますが、「危機的な状況のときには強いリーダーシップが求められる」という認識は共通しています。もう少し具体的に言えば、今回の震災のような危機的な状況のときは、「和気あいあい型」のリーダーではなく、「厳しい意見も言うことができる専制型」のリーダーが求められるのです。もちろん、その前提としてリーダーが人格者でなければなりませんが、民主的な選挙で国民が選んだ首相は人格者と考えるべき(考えなければならない)でしょう。

 菅首相は震災発生の翌日(3月12日)に「全身全霊、命がけで取り組む」と宣言していますから、何をどのようにやるのかをしっかりと国民に提示して、「みんな、ついてきてくれ!」というような態度を期待したいと私は考えています。

 もうひとつ、これはどのようなリーダーにも要求されることですが、リーダーは今後のビジョンを示す必要があります。人間は将来のビジョンがあれば少々の困難に立ち向かうことができます。そして、そのビジョンが仲間と共有されていれば、さらに頑張ることができます。

 太平洋戦争敗戦後、この国は驚くほどの勢いで復興が進み、戦争終了10年後の1955年には、国民1人あたりのGNP(国民総生産)が戦前の水準を超えました。そして翌年(1956年)の経済白書には「もはや戦後ではない」と記述され、これは流行語にもなりました。戦争終了から19年後の1964年には東京オリンピックが開催され、東京から大阪まで新幹線で移動できるようになったのです。

 この歴史を思い出せば、我々日本人は再び奇跡を起こせるのでは、と考えたくなります。そして、世間にはとにかく早い復旧を求める声も多いようです。しかし、私は個人的にはゆっくりと着実な復興でかまわないと考えています。特に被災者の心理状態を考えると、正常な状態になるには長い時間が必要になるからです。

 この国の首相には、強いリーダーシップを発揮し、国民みんなが共有できる着実でしっかりとしたビジョンを示してもらいたいと思います。そして、そのビジョンを踏まえた上で、国民ひとりひとりが自分に何ができるか何をすべきかを考えていくべきだと思います。

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2018/09/25

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