メディカルエッセイ

38  わいせつ医師を排除せよ!① 2006/5/1

帝王切開で29歳の患者さんが死亡したことで議論を呼んでいる福島県の産婦人科医の話や、人工呼吸器を外したことで注目を集めている富山県の外科医の話が、マスコミでよく語られていますが、これらの事件は医師を非難する論調がある一方で、医師を擁護する意見も少なくありません。特に後者の事件では、患者さんや医療従事者でない一般の方々からも医師を弁護するような意見が相次いで出されているようです。

 こういった問題は、一般論で片付けられるような単純なものではなく、症例ごとにじっくりと検証しなければなりません。

 これに対して、こういった問題とはまったく別の次元で問題提起しなければならない医師の行動があります。例えば、覚醒剤中毒の医師やわいせつ事件を起こす医師です。シャブ中ドクターの話は拙書『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』でも述べていますが、私自身としては、覚醒剤に手を出さざるを得なかった医師の気持ちをも理解する必要があるという意見を持っています。「覚醒剤は危険だからやめましょう」というキレイ事だけでは真実が見えて来ずに何の解決にもならないからです。

 しかしながら、わいせつ医師についてはまったく同情の余地がありません。患者さんに対してわいせつ行為を働く医師など、もちろん私の周囲にはいませんし、想像もできないのですが、ときおりマスコミの報道でとんでもない事件を聞くことがあります。

 今回はわいせつ行為で報道された医師の実態をみていきたいと思います。

 まずは、東京のある病院の外科部長がおこなった「全裸撮影事件」を振り返ってみましょう。52歳のこの心臓外科医は、2000年から2004年までの5年間、心臓の超音波検査を施行する際に、患者さんに「全裸にならなければ検査できない」と言い、看護師を退席させた上で、患者さんの全裸をデジタルカメラで撮影していたそうです。

 心臓外科医がおこなう超音波検査で、全裸になる必要があるはずがない、ということは我々医療従事者であれば常識ですが、患者さんのなかには「大病院の心臓外科部長が言うんだから・・・」のような気持ちが働いて、疑いながらも同意せざるを得なかったのかもしれません。

 普通の感覚をしていれば、患者さんを全裸にするということなど考えもしないのですが、例えそのようなことを考えついたとしても、「患者さんのなかには全裸の撮影を疑う人もいて自分は写真という証拠を残しているんだから見つかれば逃れられない」、という単純なことがなぜこの外科医には理解できなかったのでしょうか。

 まあ、それが分かるくらいの常識を持ち合わせていれば、初めから患者さんを撮影しようなどとは思わないでしょうが・・・。

 もっと悪質なものもあります。

 2002年に強制わいせつ罪で逮捕された福岡県のある病院の理事長(当時73歳)は、自らが覚醒剤をキメた上で、27歳の女性に強制わいせつ行為をはたらいたのです。しかも、この医師は覚醒剤などの薬物中毒を専門としていたといいますから驚きます。

 わいせつ医師の被害者は患者さんだけではありません。

 昨年(2005年)、東京のある大病院の47歳の脳神経外科医が、病院の部長室で製薬会社の26歳の担当女性社員の体を無理やり押さえ付け、約15分間にわたって下半身を触るなど、わいせつ行為をおこない、「強制わいせつ罪」で逮捕されました。

 自分の職場で強制わいせつをおこなっても逮捕されることがない、と、この外科医は考えていたのでしょうか。もちろん、「逮捕されたくないから強制わいせつをしない」というのはおかしな理屈で、まともな人ならそんなことを考えなくてもこのような犯罪行為を思いつくことはありません。

 このような犯罪行為を犯す人間は精神的な異常をきたしているとしか考えられず、よく47歳まで外科医をつとめてこられたな、と感心してしまいます。

 次に、昨年「準強制わいせつ罪」で逮捕された岩手県の42歳の精神科医についてみてみましょう。報道によりますと、この精神科医は勤務先の病院から睡眠薬を持ち出し、それを知人である飲食店勤務の18歳の女性に、「ビタミン剤だから・・・」と嘘をついて無理やり服用させ、身体を触るなどの行為をおこなったそうです。

 こういう事件はたしかによくあって、そのため裏市場では睡眠薬がそこそこの値段で取引されています。患者さんのなかにも、強力な睡眠作用に加え幻覚作用のあるような薬を名指しで欲しがる人がいて、私は「怪しい」と思えば、そういった薬剤はできるだけ処方しないようにしています。しかし患者さんのなかには、簡単に薬剤を処方してくれるクリニックを複数箇所受診している人もいるようです。

 睡眠薬はもちろん有用な薬剤ですから市場から無くすわけにはいきません。したがって、不正な使用をなくすためには、我々医師が処方に厳重な注意を払わなければならないのです。その医師、しかも睡眠薬のプロフェッショナルである精神科医が、自らの低次元な欲望を満たすために睡眠薬を使用したというのですから、呆れると言うほかはありません。

 もうひとつ、強制わいせつで逮捕された事件をみていきましょう。

 国立のある研究所に勤めていた51歳の医学博士が2005年6月に逮捕されました。この事件は、先にみてきた事件に比べると少々手が込んでいます。(この事件の詳細は『裏モノJAPAN』という雑誌の2005年9月号でレポートされています。)

 まず、この医学博士は「安藤健二」という偽名を使って、《医師限定》出会い系サイトに登録をしました。この男は妻とふたりの子供と共に千葉県のマイホームに住んでいますが、出会い系サイトに登録した際には「独身」としていたそうです。

 そして40代の女性とメール交換を繰り返して1ヶ月が経過した頃、ようやくアポイントメントに成功し都内で会うことになりました。仙台出身のこの女性がその晩都内に泊まることを知った<安藤>は、口八丁手八丁で女性の部屋に入りこみました。ふたりが会うのはこの日が初めてということもあり、この女性は執拗に言い寄る<安藤>をかわしていましたが、ついに<安藤>は「実力行使」に出たそうです。

 次の瞬間、悲鳴とともに払いのけられた<安藤>は、一応謝罪をし、そのまま部屋を飛び出したそうです。

 普通ならここで終わりそうなものなのですが、なぜか<安藤>はその後もこの女性にメールを続けます。謝罪のメールを何度も送り、そのうちにこの女性の方からも反応の悪くない返事が来るようになり、二度目のデートの話もまとまりかけていたそうです。

 このあたりの<安藤>の心理が私には理解できないのですが、エリート街道をひたすら歩んできた<安藤>にとっては他人からの「拒絶」を受け入れることができず、謝罪してでもこの女性をモノにしなければプライドを満たすことができなかったのでしょうか。それともこの女性に「恋」をしてしまったのでしょうか。

 再デートも時間の問題と思われた頃、<安藤>が致命的なミスを犯します。他人に送るはずのメールを誤ってこの女性に送信してしまい、その内容から<安藤>が妻帯者であることがバレてしまったのです。

 騙されていたことを知ったこの女性は<安藤>を許すことができませんでした。警察に被害届けを出したのです。2005年6月4日の早朝、<安藤>の自宅に刑事が訪問し、強制わいせつ罪で逮捕となりました。

 《医師限定》出会い系サイトなどというものを私はこの事件が報道されるまで知りませんでしたが、そもそも登録の際、医師であることをどうやって確認するのでしょう。もしも医師免許証の提出などで、医師であることの証明をするなら偽名は使うことができないでしょうから、おそらくこのサイトでは、誰でも簡単に医師になりすまし登録をすることができたのではないかと予想されます。

 おそらく本当の医師であれば、こういうサイトには登録しないと思われます。普段から我々の元には、やれマンションを買えだの、高利回りの投資信託を始めろだの、いかがわしい電話やメールが頻繁に届きます。いったいどのようにして個人情報を入手しているのか分かりませんが、こういった迷惑なセールスが我々医師の悩みのひとつです。そんな悩みを持つ医師が、わざわざ《医師限定》の出会い系サイトなどに登録するでしょうか。そんなサイトへの登録は、デート商法や絵画商法の女性詐欺師に対して、ネギをしょって歩くカモになるようなものです。そういうリスクを冒してまでこういうサイトを利用するのは初めから「下心」がある<安藤>のような男だけではないでしょうか。
 
 次回はさらに悪質な「わいせつ医師」をみていきたいと思います。

つづく

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2018/09/25

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