はやりの病気

第88回 簡単でない高尿酸血症の食餌療法 2010/12/20

健康診断で尿酸値が高いと言われて・・・、という訴えで私の元を受診する患者さんがいます。また、当院に元々かかっている患者さんに対して、何らかの理由で血液検査をおこない、たまたま尿酸値が高いことが分かった、ということもしばしばあります。

 尿酸値が高ければそれだけで、とりあえずは「高尿酸血症」という病名が付いてしまいます。一般的には血液中の尿酸の値が7.0mg/dLを越えれば、年齢・性別にかかわりなく高尿酸血症と診断されることになります。

 では、高尿酸血症という診断されれば治療を開始しなければならないのでしょうか。

 これはそう単純な話ではなく、例えば尿酸値が7.0mg/dL未満でも治療が必要になることがあれば、9.0mg/dLを超えていても治療を見合わせることもあります。詳しく説明していきましょう。

 まず、高尿酸血症という病名がつくだけでは痛くも痒くもありません。高尿酸血症を放置しておくと、一部の人は「痛風」と呼ばれる関節が痛くなる症状がでたり、尿路結石(腎臓から尿道までの間の尿路のどこかで石ができて血尿や疼痛が生じます)が起こったりすることがあり、これは(どちらも激痛ですから)治療しなければなりませんし、その原因となっている高尿酸血症も治していかなければなりません。

 つまり、痛風(発作)や尿路結石といった合併症を一度でも起こすと、尿酸値は注意深くみていくべきなのです。

 では、一度も痛風や尿路結石を起こしたことのない人はどうすればいいのでしょうか。

 一般に、高尿酸血症がある人というのは、他にも健康診断や血液検査で異常があることが多いといえます。具体的には、肝機能障害(特にアルコール性肝炎や脂肪肝)、高血圧、高血糖、高脂血症(コレステロールや中性脂肪が高い)などです。それから、忘れてはならないのが、高尿酸血症がある人には肥満が多いという特徴です。

 これらがあると、尿酸ではなくこういった異常に対する治療を優先します。なぜなら、心疾患(心筋梗塞など)や脳血管障害のリスクとしては、高尿酸血症よりも、高血圧や高血糖、高脂血症の方が大きいからです。(メタボリックシンドロームの診断基準には、血圧、血糖値、コレステロール値はありますが、尿酸値は含まれていません)

 しかし、血圧や血糖値、コレステロールの値に異常があるからといって、直ちに投薬開始となるわけではありません。まずは、食事療法や運動療法といった生活指導が中心となります。

 特に太融寺町谷口医院は、若い患者さんが多いこともあり、私はよほどのことがない限り初めから薬を薦めることはしません。若ければ、その気になれば積極的な運動をできますし(高齢者の場合は膝や腰を痛めていることが多く運動しにくいのです)、そもそも血圧や血糖、コレステロールの薬は、いったん飲みだすとかなり長期に服用しなければなりませんから、経済的にタイヘンなのです。(当院には「お金がないから薬はできるだけ少なくして!」という人が非常に多いのです)

 当院に多い尿酸値が高い典型的な患者さんは、男性であれば、肥満とまでは言えないけれども少し体重が多くて、少しだけ血圧やコレステロールの値が高い、というタイプです。つまり、メタボリックシンドロームの人、あるいは診断基準はみたさないもののメタボの予備軍に入るような人です。

 女性であれば、当院に多い尿酸値が高いのはお酒をよく飲む人です。肝機能(トランスアミナーゼ、ASTやALTのこと)が高いという人もいれば、それらは正常だけどγ(ガンマ)GTPだけが高いという人もいます。中性脂肪も高くなっていることがあります。このタイプの人は、必ずしも体重過多というわけではなく、むしろやせている人も少なくありません。このような人たちに対しては、もちろん節酒をすすめることになりますが、そう簡単にはいきません。何しろ当院の患者さんは、例えば「ビールならどれくらい飲みますか」という私の質問に対して、「毎日○リットルは飲みます」と答える人(女性です)が少なくないのです。普通は、よく飲む人でも「中ビン2本と・・・」という答え方をすることが多いと思うのですが、いきなり「まずはビールを4リットル飲んでから焼酎を・・・」という答え方をされますからときに圧倒されてしまいます。

 とはいえ、当院に長く通院されている人は、酒豪であってもそれなりには健康に気を使っていて、定期的に患者さんの方から「そろそろ血液検査をしてください」と言ってこられる場合が多いようです。

 話を戻しましょう。血圧やコレステロールが少しだけ高いような人に対しては、食事療法について説明しますが、私はこのとき、高尿酸血症に対しては(痛風や尿路結石のエピソードがなければ)重要視しません。なぜなら、尿酸値を下げることに躍起になるより、血圧やコレステロールを正常にすることの方がはるかに重要だからです。

 それに、血圧、血糖、コレステロール、中性脂肪はだいたい同じようなことに気をつけて食事をすればいいのですが、尿酸値に関しては気をつける食べ物が異なるのです。

 一般的に生活習慣病やメタボリックシンドロームを防ぐ食事というのは、一言で言えば「和食マイナス塩」です。揚げ物や肉などあぶらっこいものを避け、米を中心とし、根野菜や海草、魚介類、豆類などを中心とした和食を中心にし、塩分の過剰摂取に気をつければ、自然にカロリー過多となることを防げ、血圧や血糖、コレステロールを正常に保てます。

 一方、尿酸値が高くならないようにするにはプリン体を避ける必要があり、プリン体を多く含む食品というのが、例えば、イワシの干物、カツオ節、干ししいたけ、などで、これらは一般的に「体に良い」というイメージがないでしょうか。また、「健康のために緑黄色野菜をしっかりとりましょう」と言われることがありますが、緑黄色野菜の代表であるホウレンソウはプリン体を多く含みます。

 西洋から入ってきた肉類など脂っこいものはダメで、なおかつ尿酸値を上げないためにイワシの干物やホウレンソウ、干ししいたけもNGです!、と言われればいったい私たちは何を食べればいいのでしょうか。

 というわけで、私は痛風や尿路結石を起こしたことがない尿酸値が高い人には、プリン体を制限するような食事療法をあまりすすめていません。ただし、水分摂取は励行します。プリン体をたくさん摂っても、水分摂取がきちんとできていれば尿酸は体外に排出されるからです。

 ここで私が日々実践している高尿酸血症の患者さんに対する治療をまとめてみたいと思います。


1、まず、尿酸値が高いすべての人に水分摂取をしっかりするよう助言します。
2、 痛風(発作)や尿路結石など合併症のエピソードがある場合は、尿酸値をある程度厳格にコントロールする必要があります。   食事療法に加え、薬を使って尿酸値を7.0mg/dL、できれば6.0mg/dL以下にもっていきます。
3、合併症のエピソードがなく、血圧やコレステロールに異常がある人、あるいは肥満のある人は、
  食事をできるだけ「和食マイナス塩」にし、総摂取カロリーに気をつけてもらいます。このとき、
  プリン体についてはそれほど重要視しません。
 4、合併症のエピソードがなく、血圧やコレステロールも正常で、肥満もない人で、
  過剰に飲酒する人に対しては、ときどき飲酒量の確認と血液検査をおこないます。
5、合併症のエピソードがなく、血圧やコレステロールも正常で、肥満もない人で、
  過剰飲酒もない人(単に尿酸値が高いというだけの人)には、水分摂取の励行以外には特に何もしません。
 
 最後にひとつ。尿酸値が高いかどうかは検査をしてみないことには分かりません。痛風発作を起こして初めて自分が高尿酸血症であることに気づいた・・・、そういう人も少なくありませんので、目安として男女とも30歳を超えれば一度どこかで尿酸値を調べておくべきでしょう。

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