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2008年6月24日(火) 警察庁の発表では自殺者が10年連続3万人超

 日本の年間の自殺者について、厚生労働省の発表では、2006年に3万人を切っていたのが2007年には再び3万人を超えた、というニュースをお伝えしましたが(2008年6月6日「自殺者が再び3万人超え」)、警察庁の発表では、10年連続で3万人を超えていることが明らかとなりました。

 まず、なぜ厚生労働省と警察庁で自殺者の人数が違うかについて説明しておきます。厚生労働省は、「死亡届」を基に人口動態の統計を取ります。一方、警察庁は、死亡届が出された後に、自殺と判明したケースも「自殺者」に含めます。また、警察庁の統計には、日本国内で自殺した外国人も含まれています。

 警察庁の発表を少し詳しくみていきましょう。

 まず、2007年に自殺した人は前年比938人増の33,093人です。これは、過去最悪となった2003年の34,427人に次ぐ過去2番目です。

 年代別では、60歳以上と30歳代で過去最多となっています。60歳代は前年比987人増の12,107人、50歳代は7,046人、40歳代で5,096人です。一方、19歳以下は前年比75人減の548人で、このうち「いじめ」が原因なのが10人、「友達との不和など」が25人です。

 性別では男性が71%を占めています。

 原因をみると、「うつ病」が6,060人で最多。2番目が「身体の病気」で5,240人、次いで「多重債務」が1,973人、「その他の負債」が1,656人です。これら以外には、「仕事疲れ」672人、「孤独感」593人、「失業」538人、「職場の人間関係」514人、「介護・看病疲れ」265人、「借金の取立て苦」169人、「自殺による保険金支給目的」151人、「子育ての悩み」121人、「倒産」97人です。また、総数は多くないものの、20~30代で「結婚」「失恋」「不倫」などの理由もあります。

 地域別では、山梨県が人口10万人あたり39人で、前年の秋田県に変わり最悪となっています。
 
 職業別では、「無職」が18,990人と全体の57.4%を占め、そのうち「年金・雇用保険生活者」が4,982人、「失業者」が1,756人です。一方、「被雇用者・勤め人」は9,154人です。

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 山梨県が最悪となっているのは、「自殺の名所」として知られる「青木ケ原樹海」を抱えているからで、これを除くと秋田県が最悪となります。尚、秋田県は、厚生労働省の発表する人口動態統計では1995年から13年連続で「全国最悪」となっています。

 一方、自殺の少ない都道府県トップ3は、奈良、愛知、三重で、地理的につながっているのが興味深いと言えます。

 それにしても、「うつ病」「多重債務」「仕事疲れ」「孤独感」「人間関係」などといった理由をみていると、現代日本の社会的病理が浮き彫りになってくるように思えます・・・。

 (谷口恭)