医療ニュース

2008年8月4日(月) 波紋を呼んでいるタミフル調査結果

 「インフルエンザ治療薬のタミフルを小児に使っても問題がない」という報告が厚生労働省の研究班から発表されたことを以前お伝えしましたが(2008年7月14日(月)「タミフルは異常行動に関係なし」)、これが波紋を呼んでいます。

 まずは、タミフル服用後に飛び降りなどの異常行動で死亡した人の遺族らでつくる「薬害タミフル脳症被害者の会」が厚生労働省の発表を批判しました。

 7月27日、「薬害タミフル脳症被害者の会」は、今回の厚生労働省の調査結果は誤りだとし、タミフルと異常行動との因果関係を認めて被害者を救済するよう求め、近いうちに舛添厚生労働大臣に要望書を提出する予定です。(報道は7月29日の共同通信)

 被害者の会は、「研究班の集計方法は間違っている」と批判し、「間違った結論に基づき10代への投与が解禁されれば薬害の再発は確実だ」と指摘しています。「被害の拡大を防止し、被害者の救済を求める」として、関係者に対する法的措置を取らざるを得ないと訴えているようです。

 厚生労働省研究班の見解を批判しているのは被害者の会だけではありません。複数の医師が研究班のデータ解析の方法が誤っていることを指摘しています。(報道は7月31日の毎日新聞)

 この調査は2006年12月から2007年3月にインフルエンザで医療機関を受診した患者約1万人を対象に実施されています。タミフル服用と、うわごと、おびえ、泣き出すといった軽い症状も含めた「異常行動」との関係を調べています。

 厚労省の研究班は、タミフル使用者7,487人のうち、服用後に異常行動を起こした人を889人(11.9%)とし、非使用者2,228人のうち異常行動を起こした人は286人(12.8%)としています。(これだけをみるとタミフルを飲まなかったグループの方が異常行動を起こしやすいということになります)

 ここからが問題です。タミフル非使用者のうち99人は、実際にはタミフルを飲んだけれども、飲む前に異常行動を起こしている患者です。これらを除外すると全く飲まなかった患者だけの人数は2,129人となり、異常行動は187人(8.8%)となります。これとタミフル使用者で異常行動を起こした人の11.9%を比較すると、飲んだ方がおよそ5割異常行動を起こしやすいという結果になります。

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 どちらの解析方法がより適切かは意見の分かれるところだと思います。(これが統計学のおもしろいところかついい加減なところなのかもしれません)

 私個人の意見としては、以前にも述べましたが、インフルエンザの疑いがあろうとなかろうと、タミフルを飲んでいようがいまいが、高熱を出している10代の子供をひとりにしないことが大切だと思います。

(谷口恭)