医療ニュース

2009年12月16日(水) 不規則な生活で血圧上昇

 昼夜交代性の職場で働く人は高血圧になりやすい・・・

 これはこれまでも経験的に分かっていたことですが、なぜ血圧が上がりやすいかについての鍵となる研究結果が京都大学の研究チームによって発表されました。(報道は12月14日の日経新聞。尚、この研究は科学誌『ネイチャー・メディシン』電子版に掲載されるそうです)

 研究チームは、遺伝子組み換え技術で体内時計を働かなくしたマウスを作り、塩分の多い食事を与えました。すると、体内に食塩と水をため込むホルモンを作る「Hsd3b6」という酵素の活動が活発となり、その結果血圧を上昇させるホルモンが過剰に働くことが分かりました。

 この研究により、昼夜逆転など体内時計が狂うような生活をしていると人間でも同様に血圧を上昇させるホルモンが過剰に働くことが予想されます。

 研究チームは、この血圧上昇ホルモンの働きを抑える降圧剤を使うとマウスの血圧が下がることも確認しています。ただ、人間では同じ薬剤が副作用を引き起こす可能性があるようで、そのまま人間に応用するわけにはいかないようです。

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 現段階ではマウスを用いた実験のみで、今後は昼夜逆転などで体内時計が狂っていると思われる人に対しても、この酵素や血圧上昇ホルモンを調べる研究がおこなわれるのかもしれません。

 降圧剤はマウスでは有効であることが分かっているとのことですから、人間での安全性の調査が今後おこなわれることになるでしょうが、今回の研究から導き出された最も重要なことは、「昼夜逆転の仕事は分担するなどして、できる限り体内時計が狂わないような生活をこころがける」ということではないかと思います。

(谷口恭)