医療ニュース

2009年5月1日(金) 高血圧はメタボより危険!

 脳卒中や心筋梗塞など循環器疾患の予防には、メタボリックシンドロームよりも高血圧の対策が重要である・・・。

 厚生労働省の研究班が大規模調査に基づきこのような発表をおこないました。(報道は4月23日の読売新聞)

 この調査は、全国の40歳から69歳の男女約2万3千人を平均で11年間にわたり追跡しています。対象者の693人が循環器疾患を発症しています。

 もしも、全員の血圧が正常であれば、男性で48%、女性で45%、心筋梗塞や脳梗塞を減らせると分析されています。

 一方で、高血圧ではなく、メタボリックシンドロームを解消したときには、男性で12%、女性で8%しか改善効果がないそうです。

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 メタボリックシンドロームを患っている多くの患者さんが高血圧をもっていますが、高血圧は"必ず"あるわけではありません。

 少し整理してみましょう。

 まず、メタボリックシンドロームと診断されるためには「肥満」が必須です。ウエストラインで男性85cm以上、女性90cm以上なければなりません。(しかし、85cm、90cmというこの数字に異議を唱える学者は少なくありません)

 メタボリックシンドロームと診断されるには、上記ウエストラインの基準を満たした上で、高脂血症、高血圧、高血糖のうち2つ以上を満たす必要があります。2つ以上ですから、高血圧は必須条件ではありません。ということは、高血圧がないメタボリックシンドロームもあるということになります。

 一方、重症の高血圧があったとしても、男性でウエスト85cm未満、女性で90cm未満であれば、メタボリックシンドロームとは診断されないわけです。

 そもそも85cm、90cmという数字は、身長や体脂肪率も考慮していませんからひとつの目安にすぎません。こうして考えると、メタボリックシンドロームの診断基準を満たすかどうかに敏感になるよりも、高血圧、高脂血症、高血糖、それぞれについての対策をしっかりおこなう方が重要なのかもしれません。

(谷口恭)