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2010年2月1日(月) ビタミンDの不足は大腸ガンのリスク

 大腸ガンは、元来は欧米人に多く日本人にはそれほど多くないとされていましたが、近年日本でも罹患者が急増しています。過去30年間で5倍にもなっており、2015年には他のガンを抜いて1位になるとの試算もあります。

 その大腸ガンの予防にビタミンDが有用であろうということは以前から指摘されていたのですが、フランス国際ガン研究機関(IARC)が、これを裏付ける疫学的研究を発表しました。医学誌『BMJ』オンライン版2010年1月21日号に掲載されています(下記注参照)。

 研究では、欧州10ヵ国を対象とし、大腸ガンと診断された1,248人と同じ数の健常者の血中ビタミンD濃度を測定しています。年齢、性別、BMI、生活習慣なども考慮しています。

 その結果、血中ビタミンD濃度が最も少ないグループでは、最も多いグループに比べて大腸ガンのリスクが40%も上昇することが分かったそうです。そして、興味深いことにビタミンDを経口摂取することでこのリスクが軽減するそうです。

 尚、大腸ガンを結腸ガンと直腸ガンに分けて考えたとき、ビタミンD不足によるガンのリスクは結腸ガンで強く、直腸ガンではリスク上昇が認められなかったそうです。

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 ビタミンDの経口摂取で大腸ガンが予防できるなら、今後サプリメントなどで積極的な摂取が勧められることになるかもしれません。ビタミンDが不足すると、骨粗しょう症や骨軟化症といった骨が弱くなる病気が起こりやすくなったり、免疫力が損なわれたりする可能性も指摘されています。

 ただし、ビタミンDは脂溶性のビタミンであり、過剰摂取は高カルシウム血症、肝機能障害などのリスクになります。

 今後の研究を待ち、ビタミンD摂取に関する何らかのガイドラインが作成されることを望みたいと思います。

(谷口恭)

注:この論文は下記URLで要約を読むことができます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20093284