医療ニュース

2010年2月11日(木) メタボ腹囲を巡って報道に違いが・・・

 以前よりメタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)の診断基準のひとつである腹囲を巡って様々な議論が展開されていました。現在の腹囲の基準は、男性85センチ以上、女性90センチ以上ですが、「女性が男性より多いのは国際的にみて異例」、「腹囲の基準を設ければやせていて高血糖や高血圧がある人を見逃してしまう」、あるいは「基準より腹囲が多い人でも健康な人は少なくない」、といった意見もあります。

 日本の診断基準では、腹囲が必須で、血糖・脂質・血圧の3項目のうち2つ以上の異常でメタボリックシンドロームの診断がなされることになっています。一方、米国では、腹囲(男性102センチ以上、女性88センチ以上)は、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、血糖値を含めた5つの診断基準の一項目とされています。(日本の基準では、腹囲が「必須」なのに対し、米国では「一項目」とされているというわけです)

 2月9日、厚生労働省研究班は、腹囲の基準をめぐる大規模調査の結果を報告しました。調査では、全国12ヶ所の40~74歳の男女約31,000人について、心筋梗塞、脳梗塞の発症と腹囲との関連が調べられています。

 興味深いのはマスコミによって伝えられるニュアンスが異なっていることです。

 2月9日の読売新聞は、「腹囲の数値によって、心筋梗塞や脳梗塞の発症の危険性を明確に判断できない(と厚労省が発表した)」と報道しています。

 これに対し、2月10日の日経新聞は、「女性の腹囲を(現行の90センチから)80センチに厳しくすれば、より多くの脳卒中や心疾患を予防できる(と厚労省が発表した)」と報道しています。

 読売新聞では「腹囲の基準を設けるのは困難」とし、日経新聞では「女性の基準を厳しくすれば予防につながる」としているのです。

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 2つの報道機関で内容のニュアンスが異なっているのは興味深いですが、双方とも「(腹囲の基準を設けるべきかどうかは別にして)肥満が心疾患や脳卒中のリスクになりうる」という認識は一致しています。

 腹囲の基準は、国内でも議論が分かれ、国際的にもバラバラです。我々としては、いつ変更されるか分からない細かい数字に注目するよりも、「太りすぎはよくない」という常識的なセンスを忘れないことが大切でしょう。

(谷口恭)