医療ニュース

2010年2月22日(月) 神戸の9ヶ月男児がポリオを発症

 2月19日、神戸市が市内在住の9ヶ月の男児がポリオを発症したことを発表しました。(報道は同日の共同通信)

 厚生労働省によりますと、国内でポリオが発症したのは2008年12月の三重県での報告以来だそうです。

 神戸市によりますと、2009年11月にポリオワクチンの集団予防接種を実施しましたが、この男児は体調不良で受けていなかったとのことです。現在、男児には左足の麻痺(まひ)が認められるそうです。周囲への二次感染の可能性はないと神戸市はみています。

 男児は2009年12月28日に発熱があり2010年1月1日に医療機関を受診しています。その後、麻痺(まひ)が現れ1月7日に入院となり、2月5日にポリオウイルスが検出されたと報告されています。

 この男児から検出されたポリオウイルスを国立感染症研究所が調査したところ、野生株(自然界に生息しているウイルス)ではなく、ワクチン株(ワクチンとして使われている弱毒化したウイルス)であることが判明しています。感染経路は断定することはできないものの、他の乳児に実施した予防接種のワクチンに含まれていたウイルスが何らかのルートで感染した可能性が考えられています。

 神戸市は、「ワクチン未接種の男児がワクチン型に感染したまれなケース。集団で免疫を付けることが大事なので、集団予防接種はしっかりと受けてほしい」とコメントしているそうです。

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 現在国内でおこなわれているポリオのワクチンは経口ワクチン(シロップを飲むタイプ)です。このワクチンは弱毒化したウイルスを用いるため、ごく稀にポリオに感染したときと同様の副作用が出現することがあります。また、便から排出されたワクチン由来のウイルスが家族に感染することもあると言われています。(ただし麻痺などの症状が出現する確率は非常に低く、およそ580万回に1回との研究があるそうです)

 また、この経口ワクチンは成人では副作用の危険性が高まるため、原則として成人には投与(接種)できません。

 ポリオのワクチンは、今のところ経口生ワクチンが主流ではありますが、世界的には生ワクチンではなく不活化ワクチン(注射型)に切り替わりつつあります。例えば、米国では現在は不活化ワクチンのみ使用されるようになり、すでに経口ワクチンは過去のものとなっています。

 日本でも不活化ワクチンへの切り替えが検討されてもいいのではないでしょうか。

(谷口恭)