医療ニュース

2010年3月23日(火) AED使用で3割が社会復帰!

 AEDの有用性はこのサイトでも何度か紹介しています。現在は世界の多くの国で公共の場に置かれており、日本でも次第に駅や空港などで目にする機会が増えているように思われます。AED(自動体外除細動器、Automated External Defibrillator)は、簡単に言えば心臓に電気ショックを与える器械のことで、2004年7月から一般市民でも使うことができるようになっています。

 京都大学保健管理センター(予防医療学)の石見拓助教授らの研究で、公共の場に置かれているAEDを市民らが使用することによって心停止患者が社会復帰できる割合が2倍以上に高まることが分かりました。医学誌『New England Journal of Medicine』オンライン版2010年3月18日号に論文が掲載されています。(下記URL参照)

 研究チームは、2005年から2007年の消防庁などの全国統計から、AEDが必要と考えられた18歳以上の心停止患者12,631人について分析しています。12,631人のなかでAEDが使用されたのは462人で、1ヵ月後に31.6%の146人が社会復帰していたことが分かりました。一方、AEDが使用されなかった12,169人のうち社会復帰できたのは13.7%の1,669人にとどまっています。

 AEDを使って電気ショックを与えるまでの時間が1分早まるごとに、社会復帰できる率が9%ずつ増加するといわれています。研究グループは、AEDが普及しだしたことを評価すると同時に、さらに設置台数を増やす必要があることを主張しています。

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 以前、私もAED普及の活動をお手伝いさせてもらっていたことがあるのですが、このニュースを書いていて石見先生にお世話になったことを思い出しました。日本のAEDは2004年以降、各地で急速に普及していますが、これは石見先生らの啓蒙活動によるところが大きいのは間違いありません。

 私個人としても、AEDがもっともっと普及し、そしてAEDを使いこなせる一般市民が増えることを願います。

(谷口恭)

注:上記論文のタイトルは「Nationwide Public-Access Defibrillation
in Japan」で下記のURLでabstractを読むことができます。

http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/362/11/994


参考:
医療ニュース2009年12月21日 「AEDの使用が3年連続で増加」
メディカルエッセイ第48回(2007年1月) 「あなたはAEDが使えますか」