医療ニュース

2010年5月1日(土) 両親のDV目撃が子供の脳に悪影響

 最近、児童虐待のニュースがマスコミを賑わせていますが、児童を虐待するだけではなく、両親のDV(家庭内暴力)を見るだけで、子供の脳の発達に悪影響がでるという研究が発表されました。

 熊本大学医学の友田明美准教授らが研究をおこない、4月23~25日に盛岡でおこなわれた日本小児科学会で発表されたようです。(報道は4月23日の読売新聞)

 この研究は米国ハーバード大学と共同でアメリカ人を対象に実施されています。3~17歳時に、「自身は虐待を受けなかったけれども日常的に父親が母親に殴る蹴るなどの激しい暴力をふるう姿を目撃した」18~25歳の男女15人と、虐待のない家庭で育った33人を選び、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の様子を比較しています。

 その結果、虐待を目撃していたグループでは、視覚の情報を処理する右脳の「視覚野」の容積が、目撃していないグループに比べて、20.5%も小さかったそうです。

 また、視覚野の血流量を調べると、目撃経験者の方が8.1%多く、これは神経活動が過敏になっていることを示しています。学力や記憶力についても、目撃を経験していたグループの方が低い傾向となったそうです。

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 これはショッキングな報告だと思います。今回の研究を、言葉を変えて端的に言えば、「両親の仲が良いと子供は優秀になり、仲が悪いと落ちこぼれるかもしれない」ということになります。

 ただ、この研究では対象者数が少ないようにも思えます。今後の研究報告を待ちたいところです。しかし、待つまでもなくDV防止対策については本腰を入れて取り組まなければなりません。行政に頼るのではなく、身近にDVの被害者がいないかどうか、ひとりひとりが注意を払うべきでしょう。

(谷口恭)