医療ニュース

2010年5月18日(火) うつ病と喫煙の深い関係

 うつ病を持っている人には喫煙者が多くて、うつ病でない人に比べると禁煙が難しい・・・。

 これはほとんどの医療者が持っているうつ病と喫煙の関係のイメージですが、これを科学的に実証した研究結果が報告されました。

 CDC(米国疾病管理予防センター)管轄のオンライン版医学誌『National Center for Health Statistics(NCHS)Data Brief 』2010年4月号にその論文が掲載されています。

 この研究では、2005~2008年に実施された全米健康栄養調査(NHANES)の情報を分析することによって、うつ病と喫煙の関連性が検討されています。

 その結果、2005~2008年では20歳以上の米国成人の約7%にうつ病が認められ、調査時にうつ病を認めた55歳未満の成人の43%が喫煙者でした。一方、同年齢のうつ病のない人では喫煙者は22%にとどまっています。20~39歳の女性でみてみると、うつ病の女性の50%が喫煙するのに対し、うつ病でない女性は21%のみでした。

 臨床的にうつ病と診断されない軽度の抑うつ症状が認められる成人においても、症状のない人に比べて喫煙する可能性が高いという結果もでています。また、うつ病が悪化するにつれて、喫煙者の割合が増大する傾向も認めました。さらに、喫煙量は、うつ病の人の方がうつ病でない喫煙者よりも多く、うつ病で喫煙する成人はうつ病でない喫煙者に比べて禁煙する可能性が低いという結果も出ています。

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 今回の研究結果は、我々医療者が日頃抱いているイメージとほぼ完全に一致します。すなわち、うつ病(もしくはうつ状態)があれば、うつがない人に比べて喫煙者であることが多く、1日のタバコの本数も多く、禁煙に成功しにくい、というものです。

 私が知りたいのはこの先です。つまり、タバコを吸うからうつ状態になりやすいのか、あるいはうつ状態になると人はタバコに手を出しやすくなるのか、そして、うつ+喫煙がある人の治療は、うつの治療が先なのか、禁煙治療が先なのか、あるいは双方同時に始めるべきなのか・・・、などです。もちろん、実際には個々の症例によって変わってくるでしょうが、こういった点に関する大規模調査の結果を待ちたいと思います。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Depression and Smoking in the U.S. Household Population Aged 20 and Over, 2005?2008」で、下記URLで全文を読むことができます。

http://www.cdc.gov/nchs/data/databriefs/db34.pdf