医療ニュース

2010年5月31日(月) 携帯電話で発ガン性は一応認められず・・・

 携帯電話で長時間話をすると脳腫瘍になりやすいかもしれない・・・。これは以前から指摘されていたことですが、きちんと検証した調査はこれまでありませんでした。この問題に対する完全な答えになるかどうかは断定できませんが、過去最大規模の国際調査が発表されました。その結果は、

 5~10年程度の通常の使用ではリスクは上昇しない

 というものです。この研究は、国際共同研究グループ(INTERPHONE Study Group)が約10年の年月をかけて、日米欧など世界13ヶ国で脳腫瘍の患者(5,117例)と健康な人合わせて約13,000人を対象として調査をおこないました。

 その結果、日常的に携帯電話を使用している人の割合は、患者のグループよりも健康な人のグループの方でむしろ多く、携帯電話使用と脳腫瘍の間に相関関係は認められなかった、とされています。
              
 しかし、研究をよくみると、通話の累積時間が最も長い「1,640時間以上」使用した人でみると、神経膠腫(グリオーマとも呼ばれます)という脳腫瘍の発症率が1.4倍になっています。

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 この研究結果を受けて、WHO(世界保健機関)やFDA(米食品医薬品局)は一斉に「通常の携帯電話の使用では脳腫瘍のリスクは上昇しない」とコメントしています。

 しかし、本当にそうでしょうか。研究者らは、「累積1,640時間以上など現実的でない」というようなことを述べていますが、仮に、1日30分通話したとすると、1年間で182.5時間、約9年で1,640時間を越えてしまいます。

 実際、FDAは、「引き続き長時間の使用を避けるべきで、通話時のスピーカーモード、ヘッドセット使用などにより頭部と携帯電話の距離を保つべきである」、と勧告しています。

 携帯電話の歴史はそう古くないわけですから、引き続き今後の研究結果に注目したいところです。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Brain tumour risk in relation to mobile telephone use: results of the INTERPHONE international case?control
study」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://www.oxfordjournals.org/our_journals/ije/press_releases/freepdf/dyq079.pdf


参考:医療ニュース2010年1月23日「携帯電話がアルツハイマーを予防?」