医療ニュース

2010年6月22日(火) 5歳未満の子供の死亡数は世界で約880万人

 日本では少子化が問題となっていますが、世界に目を向けると、5歳まで生きられない子供がいかに多いかということがわかります。

 医学誌『Lancet』2010年6月5日号(注1)に掲載された論文によりますと、2008年に世界193ヶ国の5歳未満の子供の死亡数は8,795,000人とされています。1990年には、年間約13,000,000人の5歳未満の子供が死亡していましたから、18年間でおよそ3分の2に減少したことになります。
 
 しかしながら、国連ミレニアム・サミットで採択された「ミレニアム開発目標4(MDG4)」では、「2015年までに5歳児未満の死亡率を 1990年の水準の3分の1に削減する」とされており、これを達成するのはむつかしい状況だと言わざるを得ません。

 8,795,000人もの5歳未満の子供たちが亡くなっている状況を少し詳しくみてみましょう。まず、世界の5歳未満の子供の総数は、日本ユニセフ協会が発行している『世界子供白書』(注2)によりますと、約6億3千万人となっています。これを単純計算すると、世界の5歳未満の子供の約1.4%が1年間に死亡していることになります。

 死因をみてみると、68%(5,970,000人)が感染症で、その内訳は、肺炎が18%(1,575,000人)、下痢が15%(1,336,000人)、マラリアが8%(732,000人)となっています。また、死亡した子供の41%(3,575,000人)が新生児(生後1ヶ月未満)であり、新生児だけで死因をみると、早産合併症が12%(1,033,000人)、新生児仮死が9%(814,000人)、敗血症が6%(521,000人)、肺炎が4%(386,000人)となっています。

 死亡数の多い国トップ5は、インド、ナイジェリア、コンゴ、パキスタン、中国で、これら5ヵ国で5歳未満の子供の死亡数の49%を占めます。

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 『世界子供白書』によりますと、後発開発途上国に生まれた子どもが生後28日以内に死亡する確率は、先進工業国で生まれた子どものほぼ14倍になるそうです。

 今回の論文では詳しく触れられていませんが、周産期医療を語るときには、妊産婦死亡率も考えなければなりません。5歳未満の子供の死亡が多いことに驚かされますが、それでも1990年から比べると3分の1は減っています。ところが、妊産婦の死亡数はほとんど減っておらず50万人を下回りません。

 「少子化」が問題になっているわが国と世界の状況はまったく異なります。いかに子供を産むかだけでなく、いかに産まれた子供を大切にするか(主には感染症から守るか)、いかに妊婦に安心して出産してもらえるか、ということが世界的な観点から検討されなければならないというわけです。

(谷口恭)

注1 この論文のタイトルは「Global, regional, and national causes of child mortality in 2008:
a systematic analysis」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2960549-1/fulltext#article_upsell


注2 日本ユニセフ協会が発行している『世界子供白書』は下記のURLで読むことができます。

http://www.unicef.or.jp/library/library_wdb10.html