医療ニュース

2010年6月7日(月) 4時間以上の残業が心臓発作のリスク

 1日3時間以上の時間外労働をする人は、心臓疾患による死亡や心臓発作などのリスクが60%高い・・・

 これは、フィンランド労働衛生研究所のMarianna Virtanen氏らによる研究結果で、医学誌『European Heart Journal』オンライン版5月12日号に掲載されています。(下記参照)

 研究は、6千人以上の英国公務員を対象とし11年間にわたり追跡調査されています。この間、369人に心疾患での死亡、心臓発作などが確認されています。年齢、性別、配偶者の有無、職種などの因子を考慮した結果、1日に(1~2時間ではなく)3~4時間の時間外労働をしている人では心疾患のリスクが60%増加していることが判ったそうです。また、「時間外労働」以外の危険因子(リスクファクター)を検討したところ、心疾患のリスクは見つからなかったそうです。

 では、なぜ長時間の時間外労働をおこなうと心疾患のリスクが高くなるのでしょうか。

 この点について、研究者らは、「長時間働くことを選択する人は、攻撃的な性格であり、競争心が旺盛ないわゆるタイプAである」ということを述べています。また、「長時間労働が高血圧、睡眠不足、運動不足、抑うつ状態などと関連している可能性がある」とも述べています。

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 長時間労働→心筋梗塞などの心疾患、というのはイメージとしてつかみやすいと思います。おそらく日本人なら身の回りに1人や2人、このような人がいるのではないでしょうか。

 この研究では長時間の労働を3~4時間としており、「それ以上働いている人は?」と気になりますが、おそらくこれ以上働くのは日本人(韓国人も?)くらいであり、英国では充分なデータがないのでしょう。

 タイプAというのは、上に述べたように「攻撃的で競争心が旺盛」と表現できますが、少し言葉を変えると「真面目で責任感が強く努力家」とも言えるわけで、日本人には多い性格ではないかと考えられています。そして、タイプAは以前から心疾患のリスクの1つであることが指摘されていました。(念のために補足しておきますが、タイプAは血液型のA型とは何の関係もありません)

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Overtime work and incident coronary heart
disease: the Whitehall II prospective cohort study」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2010/05/04/eurheartj.ehq124.abstract?sid=260e2c9a-9c42-4b90-9e8d-5ebb21432b41