医療ニュース

2010年9月8日(水) 5歳未満の睡眠不足は肥満になる

 夜遅い時間にファミリーレストランで小さな子供をつれている若い夫婦が非難され始めたのは90年代の終わりくらいからでしょうか。今ではそのような光景をみても別段驚かなくなっている人も多いでしょう。

 小さな子供を寝かさなくて問題はないのか・・・。常識的にはそのように感じられますが、やはり問題はありそうです。

 5歳未満の小児の夜間睡眠時間が短ければ、5年後に肥満になるリスクが1.8倍に・・・。

 これは、米国ワシントン大学のJanice F. Bell氏らによる研究結果で、医学誌『Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine』2010年9月6日号に掲載されています。(詳細は下記参照)

 この研究は1997年に開始されています。研究開始時、0~13歳の子供1,930例が対象とされています。0~59か月(5歳未満)が822例、5~13歳が1,108例で、この時点で極端に痩せている症例は除外されています。

 そして5年間の追跡調査がおこなわれました。その結果、調査開始当時5歳未満だった小児については、夜間に睡眠不足があれば5年後に肥満になるリスクが1.8倍にもなると算出されています。興味深いことに、昼間の睡眠時間の不足によって肥満となるリスクは上昇していないそうです。

 一方、調査開始当時0~13歳だった子供は、夜間の睡眠不足とその後の肥満には有意な関連性が認められていません。しかし、興味深いことに、5年たった時点で夜間に睡眠不足があれば肥満になるリスクが上昇する可能性があるとされています。

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 「寝る子は育つ」と言われるように、成長期の子供は夜間就寝時に分泌される成長ホルモンのおかげで大きく成長します。したがって、夜間の睡眠時間が不足すれば成長ホルモンの分泌が減り、充分に発育しなくなる可能性があります。

 今回の研究では、夜間に睡眠不足があると肥満のリスクが上昇すると言っています。これら2つを合わせて考えると、子供が夜にしっかり寝なければ、将来「背の低い肥満児」になるかもしれない、ということになります。

 やはり、子供は夜間にしっかり寝かせましょう・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Shortened Nighttime Sleep Duration in Early Life and Subsequent Childhood Obesity」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://archpedi.ama-assn.org/cgi/content/abstract/164/9/840?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Janice+F.+Bell&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT