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2011年1月23日(日) 米国の塩分摂取基準は1日3.81グラム未満!

 2010年4月に改定された厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で、塩分の適正摂取量が男性9グラム未満、女性7.5グラム未満と改定されました。これは、従来の日本人の塩分摂取量を考えれば随分と厳しい基準となっています。最近は健康志向が高まり、塩分の摂りすぎに注意する人が増えたとはいえ、それでも現在も日本人の塩分摂取量は11~13グラムはあると言われています。

 2011年1月13日、AHA(American Heart Association、米国心臓協会)が行動勧告(call to action)を発表しました。その勧告によりますと、ナトリウムの摂取目標は1,500mg未満となっています。これは塩分摂取量で言えば、1日あたりわずか3.81グラム未満ということになります(注1)。

 AHAは2020年までに全米国人の心血管障害や脳卒中による死亡を20%減らすことを目標としています。AHAのガイドラインは、心血管の健康状態を理想状態に保つには、血圧を120/80mmHg未満とし、ナトリウム摂取量を1,500mg/日未満に抑えることが重要としています。

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 食塩摂取量が増えると血圧は上昇し、高血圧が継続すれば、心血管疾患、脳卒中、腎障害などのリスクとなります。しかし、血圧の上昇は食塩摂取量を減少させることで予防することができます。いったん上昇した血圧を高価な降圧剤を服用して下げるよりも、初めから塩分を控えて高血圧を予防すれば、コストをかけずに国民が健康になれる、というのがAHAの考え方です。

 ちなみに、親子丼(並盛)を食べればそれだけで4.2グラムの塩分をとることになります。身体に優しいとされている幕の内弁当でさえも1食で4.2グラムの塩分が含まれています(注2)。ということは、我々日本人は和食を放棄しない限りは、1日あたり3.81グラム未満の塩分などというのは到底実現不可能ではないでしょうか。

(谷口恭)

注1:AHAの論文には塩分ではなくナトリウムの量が記載されています。一方我々日本人はナトリウムよりも塩分で表記する方に馴染みがあるでしょう。ナトリウムと塩分の換算式は、ナトリウム量(ミリグラム)×2.54÷1000=食塩相当量(グラム)です。

注2:どの食品にどの程度の塩分が含まれているかは、いろんなサイトでみることができますが、厚生労働省の下記のサイトがおすすめです。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/himan/meal.html

注3:この発表(論文)のタイトルは、The Importance of Population-Wide Sodium
Reduction as a Means to Prevent Cardiovascular Disease and Stroke:
A Call to Action From the American Heart Associationで、下記のURLで全文(PDF)を読むことができます。

http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/CIR.0b013e31820d0793v1?maxtoshow=&hits=10&
RESULTFORMAT=&fulltext=call+to+action&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT


参考:はやりの病気第81回(2010年5月) 「慢性腎臓病と塩分制限」