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2011年2月14日(月) 新規エイズ患者がまたもや過去最多

 厚生労働省のエイズ動向委員会は2月7日、2010年のHIV新規感染者、エイズ発症者などを発表しました。

 同省によりますと、新たにエイズを発症した患者(HIV感染が発覚したときにすでにエイズを発症していた患者、いわゆる「いきなりエイズ」)が453人で過去最多となります。2008年と2009年はいずれも431人で過去最多でしたが、2010年はさらに増えて記録を塗り替えたというわけです。

 まだエイズを発症していないHIVが新たに判ったケースは1,050人で、2009年の1,021人より増加しています。(2008年は1,126人)

 保健所などでの無料抗体検査を受けた数は130,930件で、2009年は150,252件ですから約13%減っています。2008年は177,156件ですから、2年間でみると実に26%も減少していることになります。

 感染経路は同性愛の性的接触によるものが63%と最多ですが、異性間での感染も少なくはなく、さらに「不明」としているものも目立ちます。また、2010年は4年ぶりに母子感染が2例報告されています。母子感染は適切な対策で防げるはずなのに、です。

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 上記をまとめると、①検査数や相談数が大きく減少、②新規感染者は微増、③いきなりエイズは過去最多、④4年ぶりに母子感染が発覚、となり、いかに、HIVに対する関心が薄れているかということがわかります。

 実は最近、当院でも2010年にHIV感染が発覚したケースをまとめてみたのですが、なんと新たにHIV感染が判った症例の半数以上が、検査のときに「患者さん自身はまさか自分がHIVに感染しているとは思っていなかった」というケースです。つまり、原因不明の皮疹、リンパ節腫脹、かかっている病気がなかなか治らない、などの理由で、こちらからHIVの検査の必要性を説明し同意を得て検査をおこなったというケースなのです。

 当院では2007年と2008年は、患者さんの方から「HIVの検査をしてください」といって感染が発覚するケースの方が多かったのですが、2009年にはちょうど半数が「患者さんが希望したのではなくこちらから検査をすすめたケース」で、ついに2010年にはこの割合が過半数を超えたというわけです。

 さらに(関心が薄れていることとは無関係かもしれませんが)、HIVに対する誤解・偏見は一向に改善されていません。何らかの理由でHIVの検査をすすめても、「陽性であれば結果を受け入れられない」「検査を受ける決心がつかない」などの理由で、患者さんが拒否するケースも依然として少なくありません。

(谷口恭)

注:厚生労働省の公表した内容は下記のURLで参照できます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000121rr.html

参考:医療ニュース2010年2月17日「検査件数減少で新規HIV感染者も減少」