医療ニュース

2011年2月4日(金) 1日1万歩で糖尿病のリスクが低下

 毎日1万歩歩けば週5日3千歩歩くより糖尿病のリスクが低下する・・・

 オーストラリアでウォーキングと糖尿病の関連性についての研究がおこなわれ、このような結果がでたようです。詳細は医学誌『British Medical Journal』2011年1月13日号(オンライン版)に掲載されています(注1参照)。

 この研究では、オーストラリアの成人男女592人が対象とされ、2000年及び2005年に調査がおこなわれています。対象者は調査開始時に健康状態に加え食生活や生活習慣をチェックされ、万歩計が与えられています。

 5年間の経過観察をした結果、1日の歩行数が多ければ多いほど、BMI(注2)もウエスト/ヒップ比も小さく、またインスリン抵抗性(注3)が良好であることがわかりました。これらは、食生活、喫煙、飲酒などの影響を取り除いた後でも同様の結果となっています。

 具体的には、毎日1万歩を歩けば、1日3,000歩を週に5日歩く場合に比べ、インスリン感受性が3倍向上することが算出されたとのことです。

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 1日1万歩と言われてもウォーキングに馴染みのない人にはわかりにくいと思いますので少し解説してみます。

 おおまかに言えば、やや早歩きの状態で1分間に80メートルくらい歩くことになります(分速80メートル、時速なら4.8キロメートル)。歩幅は性別や身長で差が出ますが、だいたい65cmくらいとすると、1分間に123歩歩くことになります。85分間この歩幅・スピードで歩いたとすると10,455歩となりますから、やや早歩きで1万歩歩くにはおよそ85分間のウォーキングをすればいい、ということになります。

 ついでに消費カロリーもみてみましょう。時速4.8キロメートルでウォーキングをすれば消費カロリーはだいたい1分間で3.5Kcal程度になることがわかっています。85分間このスピードでウォーキングを続けると297.5Kcal(≒300Kcal)となります。

 だいたい白いご飯1杯やや軽盛りで300Kcalですから、1日1万歩=85分のウォーキング=ご飯1杯のダイエット=糖尿病予防、と覚えてみてはいかがでしょうか。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Association of change in daily step count over five years with insulin
sensitivity and adiposity: population based cohort study」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://www.bmj.com/content/342/bmj.c7249.full?sid=a40271ba-dc39-4cb4-9172-ae2b9280eacf


注2:BMIはBody Mass Indexの略で、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って算出します。例えば、体重88キログラム、身長2メートルの人であれば、88÷2の2乗=88÷4=22となります。

注3:インスリン抵抗性とは、わかりやすく言えばインスリンの効きやすさ(効きにくさ)のことです。糖尿病(もしくは糖尿病予備軍)の人は、せっかくインスリンが分泌されても(あるいはインスリンを注射しても)血糖値がなかなか下がってくれません。今回の研究では、しっかり歩けばインスリンがよく効いて血糖値が下がりやすくなる、といっているのです。