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2012年11月26日(月) 糖尿病人口、日本は世界9位

 去る11月14日は「世界糖尿病デイ」でした。参加された方もおられると思いますが、この日は日本全国でブルーライトアップがおこなわれました。世界糖尿病デイは2006年に制定され(注1)、毎年国内外の多くのイベント会場でブルーライトアップがおこなわれています。

 この世界糖尿病デイに合わせて、IDF(国際糖尿病連合、International Diabetes
Federation)は、世界の糖尿病人口に関する疫学データを公表しました(注2)。

 IDFによりますと、2012年の20~79歳の世界の糖尿病人口は3億7,100万人にのぼり、医療費は4,710億ドル(約38兆円)にもなるそうです。

 IDFは、世界の糖尿病罹患者の半数が診断を受けていないことが問題であると指摘しています。特にアフリカでは診断されていない人が81%にもなるそうです。糖尿病が原因で死亡するのは世界中で480万人にのぼり、その半数が60歳以下で死亡すると推定されています。

 国ごとの糖尿病罹患者数と有病率(人口に占める糖尿病患者数)のトップ10は以下の通りです(いずれも20~79歳)。

罹患者数(単位:百万人)
 1位 中国 92.3
 2位 インド 63.0
 3位 アメリカ 24.1
 4位 ブラジル 13.4
 5位 ロシア 12.7
 6位 メキシコ 10.6
 7位 インドネシア 7.6
 8位 エジプト 7.5
 9位 日本 7.1
 10位 パキスタン 6.6

有病率(%)
 1位 ミクロネシア連邦 30.1
 2位 ナウル共和国 30.1
 3位 マーシャル諸島共和国 27.1
 4位 キリバス共和国 25.5
 5位 ツバル 24.8
 6位 クウエート 23.9
 7位 サウジアラビア 23.4
 8位 カタール 23.3
 9位 バーレーン 22.4
 10位 バヌアツ共和国 22.0

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 罹患者数のトップテンをみると、人口の多い国ばかりでこれは納得しやすいといえるでしょう。トップテンのなかでは、エジプトとメキシコが日本より人口が少なくて罹患者は多い国で、残りはすべて日本よりも人口が多い国です。

 興味深いのは有病率の方です。1位から5位と10位が太平洋に浮かぶ小さな国々で、6位から9位が中東の国々です。(ちなみに日本の有病率は5.12%です) これらの国々では人口の3~4人に1人が糖尿病ということになります。

 太平洋の島国が糖尿病大国と言われると違和感を覚える人が多いのではないでしょうか。こういった国々では、小麦色に日焼けしたスリムな男女が幸せそうに暮らしている・・・、というイメージが私にはあったのですが、これはステレオタイプ的な幻想なのでしょうか・・・。

 特に、バヌアツ共和国は、2006年にイギリスの環境保護団体であるFriends of the Earthが公表した「地球幸福度指数(The Happy Planet Index)」第1位で、「地球上で最も幸せな国」として世界中から注目を浴びた国です。その国が糖尿病大国だったとは・・・。

 ちなみに糖尿病とは何の関係もありませんが、有病率1位から4位の、ミクロネシア、ナウル、マーシャル諸島、キリバスは、いずれも太平洋戦争のときに日本軍が上陸しています。

(谷口恭)

注1:世界糖尿病デイの11月14日はインスリンを発見したフレデリック・バンティングの誕生日です。バンティングは1921年にインスリンを発見しました。

注2:詳しくは下記URLを参照ください。
http://www.idf.org/sites/default/files/5E_IDFAtlasPoster_2012_EN.pdf