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2012年8月31日(金) 血液型で心疾患のリスクが異なる

 今も昔も「B型の性格は・・・」「だからAB型のやつは・・・」といった話が好きな人は少なくないようですが、血液型による性格診断が科学的に実証されたことはありません。しかし、血液型により(心筋梗塞や狭心症といった)虚血性心疾患のリスクが異なる、という興味深い研究が、医学誌『Arteriosclerosis,
Thrombosis and Vascular Biology』2012年8月14日(オンライン版)に掲載されました(注)。

 この研究は米国ハーバード大学公衆衛生学教室によっておこなわれています。研究の対象者は米国看護師健康調査(the Nurses'Health Study, NHS)に参加した62,073人の女性と、米国医療従事者追跡調査(the Health Professionals Follow-up Study, HPFS)に参加した27,428人の男性です。20年以上にわたり追跡調査をした結果、NHSでは2,055人が、HPFSでは2,015人が虚血性心疾患を発症しています。

 そこで発症者を血液型で分析してみると、O型の人のリスクが最も低いという結果がでています。最も高いのはAB型で、O型の人に比べると23%も心疾患のリスクが高くなっています。B型では11%、A型では5%のリスク上昇が認められています。

 虚血性心疾患の明らかなリスクに喫煙、体重、病歴(高血圧や高コレステロール血症)などがありますが、今回の研究ではもちろんこのような他のリスクは除外してあります。なぜ、このように血液型で差が出るかについて、研究者は「O型には血をサラサラにして固まりにくくする未知の因子があるのではないか」と推測しているようです。

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 今回の研究の対象者はほとんどが白人であるために、他の人種でも同様の結果がでるかどうかは不明です。したがって日本人であてはまるかどうかは分かりません。仮に日本人でも同様のことが言えるとしても、虚血性心疾患のリスクが血液型よりも、喫煙、体重、運動不足、糖尿病、高血圧などの方がはるかに高いのは自明です。

 自分はO型だから安心・・・、などとは決して考えないように・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「ABO Blood Group and Risk of Coronary Heart Disease in
Two Prospective Cohort Studies」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://atvb.ahajournals.org/content/32/9/2314.abstract?sid=839f8123-6b58-4f41-9b4b-ac4acefa33fd