医療ニュース

2012年9月15日(土) ダニに刺されて発症する新しい感染症

 2009年、米国ミズーリ州で57歳と67歳の男性が相次いでダニに刺され高熱がでる原因不明の疾患に罹患しました。二人の男性は、命はとりとめましたがその後2年間にわたり頭痛、倦怠感、記憶障害などに苦しめられたそうです。最終的には症状は回復しましたが原因は不明のままでした。

 この疾患の原因となった病原体は新種のフレボウイルスで「ハートランドウイルス(heartland virus)」と命名された。

 医学誌『New England Journal of Medicine』2012年8月30日号に掲載された論文(注1)でこのことが公表されました。

 研究者らは電子顕微鏡検査でこの病原体がブニヤウイルス科のウイルスであることを確認し、いくつかの精密検査を駆使してこのウイルスがフレボウイルス属に属する新種であることを証明しました(注2)。

 この新種のハートランドウイルスについて分かっていることはあまりありません。人から人へ感染するのか、感染すると全員が発症するのか、どのような経過をとるのか、後遺症を残すことがあるのか、といったことは現時点では分かりません。

 媒介するダニは、A. americanumと呼ばれるダニで、背中の1つ星模様が特徴だそうです。

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 ダニに刺されて発症するのは、刺されたときにダニの体内に棲息していた病原体が侵入するからです。このようなダニが媒介する感染症はたくさんあり、日本でも日本紅斑熱、ライム病、ツツガムシ病などは今でもときおり報告があります。
 
 海外では、ロッキー山紅斑熱(北米)、クリミア・コンゴ出血熱(アフリカ・中東など)、ダニ媒介性回帰熱(イベリア半島やアジア西部の半島)、ダニ媒介性脳炎(ロシア春夏脳炎ウイルス、中部ヨーロッパ脳炎ウイルスなど)があります。これらには死に至ることもあり、発生している地域に渡航する際には注意が必要です。

 また、ダニ刺されは、こういった感染症に罹患しなかったとしても激しい痒み(ときに痛み)に苦しめられますから、野外に出かけるときは、露出部位を減らし、虫除けスプレーをする、などの対策をとるべきです。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは「A New Phlebovirus Associated with Severe Febrile Illness in Missouri」で、下記のURLで読むことができます。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1203378

注2:少し補足しておきます。生物の分類は、大きなグループから「界」「門」「綱」「目」「科」「属」「種」となります。例えばヒトであれば、動物界・脊椎動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・ホモサピエンス種となります。新種のハートランドウイルスは「ブニヤウイルス科・フレボウイルス属」ということになります。尚、ブニヤウイルス科は、ブニヤウイルス属、フレボウイルス属、ナイロウイルス属(Nairovirus)、ハンタウイルス属などに分類されます。フレボウイルス属は約30種あるとされています。

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