医療ニュース

2013年9月13日 ロドデノールの被害に対する"誤報"

 塗ると色が白く抜ける「白斑」を起こすという理由で、カネボウなどの化粧品会社が自主回収を開始したというニュースは先日お伝えしました。(下記医療ニュース参照)

 自主回収は2013年7月上旬から始まり、2ヶ月経過した9月上旬で、白斑を訴えている人が1万人を超えているそうです。

 この事件については各マスコミも頻繁に取り上げており、特集番組も組まれているようです。しかし、マスコミの報道には偏りがあるようで、例えば2013年9月2日に放送されたNHKの「クローズアップ現代」では、視聴者に誤解を与える表現が少なくなく、ロドデノール含有化粧品の安全性に関する「特別委員会」が反論をおこないました。

「クローズアップ現代」の"誤報"に対する「特別委員会」の反論は以下のようになります。

①「1年経っても治らない」との報道について

多くは化粧品使用中止後8週間で明らかな改善がみられている。2年経過しても白斑が残っている症例が数例あるのは事実だが、これらも原因を突き止めて治療をおこなうことは可能。

②「2割の患者しか治らない」との報道について

現時点でのカネボウ社の見解では「完治に近い人が2割いる」であり、「2割の患者しか治らない」わけではない。現時点では化粧品を中止しきちんと経過を追えている症例数が少ない(ので統計的な数字は算出しにくい)。(化粧品自主回収から2ヶ月しかたっていないのですから当然です)

②「色をつくる細胞がなくなっている」という報道について

実際に皮膚を生検してみると、多くの症例で色をつくる細胞(メラノサイト)は残っている。(生検とは皮膚組織を一部採取して、どのような細胞が存在しているのか顕微鏡で調べる検査のことです)

 現時点での治療について委員会では、ステロイドやタクロリムスの外用、トラネキサム酸やビタミン剤の内服、光線療法などについて言及しています(注1)。

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 特別委員会の委員長は藤田保健衛生大学の松永佳世子先生です。私は皮膚科関連の学会などで過去に何度も松永先生のご講演を拝聴していますが、いつも深い感銘を受けます。松永先生は「茶のしずく」などの小麦アレルギーの調査の際にも大変ご活躍されています。(当院は「茶のしずく」については協力施設としてお手伝いさせていただきましたが、「ロドデノール」については現在パッチテストに対応していないことや光線療法の設備がないことなどから他施設を紹介させてもらっています)

「クローズアップ現代」への反論で松永先生が最も強調されているのが、患者さんに対する「不安にならないで!」というメッセージです。反論の文書の冒頭に「(マスコミの心ない)言葉に深く傷付き、不安になられたのではないでしょうか。心配しております」と記載されています。何よりもまず患者さんの立場にたった視点から対処されていることが伝わってきます。

 ロドデノールの被害に会われた方は大変つらい思いをなさっているかと思いますが、委員会の先生方や、実際に患者さんを診ている専門の先生方は一生懸命に取り組まれていますのでどうか不安にならないでください。

(谷口恭)

注1:これらの治療は患者さんの判断でおこなうのではなく医師の指導の下でおこなうべきです。現在当院では対応していませんが、適切な医療機関を紹介しますので、当院にかかりつけ医の方でロドデノールの被害に会われた方は相談ください。(メールで相談されてもかまいません。また適切な医療機関をご存じであれば当院への連絡なしに直接受診されてもかまいません)

参考:医療ニュース2013年7月6日「カネボウなどの化粧品の一部で白斑のトラブル」