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2013年11月2日 糖尿病予防になるフルーツは?ジュースは逆効果?

  果物は身体によくて糖尿病の予防にもなる・・・。いや、果物には果糖が多く含まれておりGI値(グリセミック指数)が高いから糖尿病にはよくないはずだ・・・。

 このように、果物と糖尿病の関係は以前から良いとするもの悪いとするものの双方があり、医学会のなかでも統一した見解がありません。

 糖尿病の予防にいいのは、1位はブルーベリー、2位ブドウ、3位リンゴ、ジュースは逆に糖尿病を悪化させる・・・。

 これは米国ハーバード大学公衆衛生学教室による疫学調査の結果で医学誌『British Medical Journal』2013年8月30日号(オンライン版)に掲載されています(注1)。この論文は日本の新聞や雑誌にも紹介されましたのですでに有名になっているかもしれませんが、ここでも確認しておきたいと思います。

 この研究は、米国の医療者を対象とした3つの大規模調査を再解析し、フルーツの摂取量・種類と糖尿病(2型糖尿病)のリスクについての関連性を調べています。対象者は合計で187,382人になり、このうち12,198人が糖尿病を発症しています。

 まず総論で言えば、フルーツの総摂取量が多いほど糖尿病のリスクは低下しています。各フルーツでの分析結果をみてみると、ブルーベリー、ブドウ・レーズン類、リンゴ・洋ナシ類、グレープフルーツで有意なリスク低下が認められています。

 興味深いのはここからです。リンゴ、オレンジ、グレープフルーツなどのフルーツジュースについて分析してみると、摂取量が増えるごとに糖尿病のリスクが上昇するというのです。

 さらに興味深い分析が続きます。フルーツジュースを同じ量のフルーツに置き換えたとすると、全体でみれば糖尿病のリスクは7%低下するとの結果がでています。それぞれのフルーツでみてみると、ブルーベリーによるリスク低下は33%でこれが最大です。ブドウ・レーズン類、リンゴ・洋ナシ、グレープフルーツでは12~14%低下していたそうです。一方、イチゴとカンタループ(メロン)では明らかなリスク低下は認められなかったそうです。

 この論文には最近の流行の「糖質制限」の観点からの考察もあります。糖質制限の考え方からすればGI値(グリセミック指数)が高ければ糖尿病のリスクが高く、GI値が低ければリスクが低下するはずです。しかし、今回の研究での結果は、高GI値のフルーツでリスク上昇がなく、低GI値でリスク低下がなく、中等度のGI値で有意なリスク低下が認められたそうです。

 これらをまとめると、次のようになると思います。

・全フルーツ(原文ではwhole fruits、要するにいろんなフルーツをまんべんなく食べることと考えていいと思います)をジュースにせずにそのままのかたちで摂取するのが糖尿病のリスク低下につながる。

・フルーツジュースが健康全般に悪いとは言えないが、摂り過ぎは糖尿病のリスクになる可能性がある。

・糖尿病のリスク低下となるフルーツを個別に検討すると、1位ブルーベリー、2位ブドウ・レーズン、3位リンゴとなる。

・GI値が高いほどリスクが高いとは言えない。

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 フルーツをまんべんなく摂取するのが糖尿病を含めて生活習慣病のリスク低下につながるということはイメージしやすいと思います。しかし、新鮮なフルーツをそのままのかたちで幅広く摂る、などというのは、高級ホテルに毎日泊まる、とか、毎日買い物にそれなりの時間を割く、とかいったことができなければ現実的にはむつかしいでしょう。

 ですから簡単に果物を摂れる(と考えられている)ジュースに頼りたくなる(というか、ジュースはそもそも美味しいものです)のは誰もが同じでしょう。この論文を受けて、ジュースは一切やめにして毎日違った果物をそのままのかたちで・・・、とまでは思わなくてもいいと思います。

 食事は美味しく楽しく摂らなければ意味がありませんから(少なくとも私はそう考えています)、①フルーツジュースは摂りすぎない、②可能な範囲で果物をそのままのかたちでまんべんなく摂る、③血糖値が高い人は定期的な検査をおこなう、という3つに気をつけていればいいのではないかと思います。

 私がこの論文を読んで疑問に思ったのは、あの酸っぱいブルーベリーをアメリカ人はどうやって食べているのだろう?ということです。ブルーベリーはジャムにすれば美味しいですが、そうすると大量の砂糖を同時に摂取することになりますから糖尿病のリスクは上がるはずです。また、日本人がよく食べるミカンやスイカはどうなるのでしょう。米国のオレンジと日本のミカンは別のものと考えた方がいいのではないかと思うのですが・・・。


谷口恭

注1:この論文のタイトルは、「Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/347/bmj.f5001


参考:医療ニュース2009年3月17日「肝癌予防には野菜はよくて果物はNG」