はやりの病気

第129回 さっさとダニをやっつけよう 2014/5/20

 ダニにはいろんなタイプがあって、吸い込んで鼻水が出るものから刺されて死亡するものまであり、「ダニ」という言葉で思い浮かべる病気は人それぞれで、対策はダニの種類によってまったく異なる、ということを以前紹介しました。(詳しくは、下記コラム「ダニほど誤解だらけの生物はいない」を参照ください)

 今回は「ダニ」を徹底的にやっつけて予防していく方法を紹介したいのですが、今回ターゲットにしている「ダニ」はヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニと命名されている「ヒョウヒダニ」です。さらに「ハウスダスト」もほぼ同じものと考えて差し支えありません。

 下記コラムでも述べましたが、ヒョウヒダニの糞や死骸がハウスダストの原因物質となります。またホコリの一部はハウスダストです。つまり、「ヒョウヒダニ(ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ)≒ハウスダスト≦ホコリ」と便宜上考えて問題はありません。言葉が増えるとややこしくなりますから、ここからは「ヒョウヒダニ」で統一したいと思います。(「ハウスダスト」とすべきかもしれませんが、厳密にはハウスダストには細菌や人間の皮膚も含まれますし、後に述べる「防ダニグッズ」は「防ハウスダストグッズ」とは呼びませんので、今回のコラムでは「ヒョウヒダニ」に統一します)

 まず押さえておきたいのは、ヒョウヒダニはどのような家にも必ず発生するものであり、完全に死滅させてそれを維持することは不可能、ということです。古い家屋に住み着いているネズミは駆除することが可能ですし、マンションのある程度の高層フロアであればゴキブリの発症をなくすことはできると思います。しかし、ヒョウヒダニは人が住んでいる環境であれば完全にゼロにすることはできません。

 しかし発症を抑えていくことは可能ですし、また、あなたやあなたの家族の持っている疾患や体質によっては徹底的に防いでいかなければなりません。どのような疾患や体質かというと、アレルギー疾患、具体的には、喘息(咳喘息含む)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎・結膜炎などです。

 ダニ(ヒョウヒダニ)の対策って本当に大切なの?と聞かれることがありますし、ダニ対策に躍起になり治療を怠れば本末転倒になりますが、ダニ対策は大変重要です。以前私がみたアトピーの患者さんで「ステロイドを一切使わずに高額な布団だけで治そうとして破産しかけた」という人がいました。ここは大切なところなので強調しておきたいのですが、ダニ対策だけでアレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎が治ることは(ほぼ)ありません。しかし、再発や病状の悪化を防ぐためにダニ対策は絶対に必要なのです。

 ちなみに、1歳時にヒョウヒダニに多くさらされると11歳時に喘息を発症しやすい、とする研究や、3歳までにネコやハウスダストにさらされると呼吸機能低下をきたしやすい、という研究があります。また、経験的にダニの量が多いと喘息が悪化するのは自明ですし、防ダニ枕カバーで喘息の吸入ステロイドの使用量が減少した、という報告もあります。

 ではここからは具体的な対策について述べていきたいと思います。

 まずは「部屋をきれいにする」ということで、当たり前じゃないの?と言われそうですが、「部屋はきれいにしています」と言う患者さんに詳しく話を聞いてみると、毎日のように掃除機をかけるという人もいれば、月に一度しか掃除機を使っていないのに「きれいです」と答える人もいます。「空気の入れ換えをしていますか」と聞くと、これまた「きれいです」と言う人でも毎日入れ替えをしている、という人から「気が向いたときにしかしていない」という人もいます。

 では、どれくらいの割合で掃除をし、窓を開けて空気の入れ換えをすればいいのか、という疑問がでてきますが、これはケースバイケースで「正解」はありません。お子さんがコントロール不良の気管支喘息があるような場合は、可能な限り毎日でも掃除をすべきでしょう。喘息があり、さらにネコを飼っているような場合はなおさらです。このようなケースでは、ネコは飼わないに超したことはありませんが、現在一緒に暮らしているネコと離ればなれになるのは無理、という人も多いでしょう。

 すべての人がまず検討すべきなのは「床はフローリングにする」ということです。わざわざ、フローリングの上にカーペットや絨毯を敷いている人がいますが、これではヒョウヒダニに「繁殖してください」と言っているようなものです。フローリングにしていてももちろんヒョウヒダニは発生しますから掃除は必要です。このときに注意したいのは、掃除のときにヒョウヒダニやヒョウヒダニの糞が空中に舞う、ということです。ですから、子どもが喘息やアトピーがある場合は、掃除は子どものいない時間帯におこない、あなたがアレルギー疾患を有している場合は、他の誰かに掃除を替わってもらうべきです。

 しかし、家族全員にアレルギーがある、という場合や、専業主婦でアレルギーを持っている人が毎回夫に掃除を替わってもらう、というのは無理な話でしょう。家政婦を雇ったり、プロの業者に毎回来てもらったり、というのも現実的ではないでしょう。

 そこで掃除の仕方を工夫していく必要があります。まずマスクは必携です。そして窓を開けて換気をよくしましょう。ただし、季節によっては花粉や黄砂が部屋に入ってこないかどうかに注意しなければなりません。換気をした結果が、布団を花粉まみれにした、ということになれば本末転倒です。したがって、花粉や黄砂、さらにPM2.5などを考慮すると、窓を開けるべきではない、ということになります。しかし、窓を閉め切って掃除をすると全身にハウスダストを大量にあびることになります。ですから、空気清浄機が必要ということになります。

 ここ数十年でアレルギー疾患が激増しているのは間違いなく、その原因はいろいろと指摘されています。スギ花粉が増えたことは間違いありませんし、いきすぎた清潔志向が原因と言われることもあります。また一部の学者は寄生虫感染がなくなったことを指摘しています。これらは私自身も正しいと考えていますが、もうひとつ指摘しておきたいのは家屋の形態が変わってしまった、ということです。

 昔の日本の典型的な家屋、つまり縁側があって動物が庭で飼われていた(勝手に住み着いていた)ような家屋であればアレルギーが発症しにくいのです。通気性にすぐれていますし、適度にクモなどのダニを食べてくれる生物がいます。ネコやイヌも室内で飼うと多量の抗原(アレルギーの元)にさらされることになりますが、外で飼っている分にはさほど問題になりません。アレルギーがあるから昔ながらの日本式家屋に引っ越すというのは現実的ではありませんが(日本式家屋は大量に増えた花粉には不向きかもしれません)、マンションと日本式家屋の構造的な違いを考えてみることには意味があるでしょう。

 話をヒョウヒダニに戻しましょう。フローリングにして、マメに掃除をして、換気をする(もしくは空気清浄機を用いる)、というところまで話をしました。次に見直すのはダニが潜んでいるものが室内にないか、ということです。よくあるのが布製のソファやぬいぐるみです。ぬいぐるみを捨てることはできないでしょうが、少なくとも寝室には置くべきではありません。もちろん衣服を積み上げて放置すればそこがダニの溜まり場になるのは時間の問題です。

 そして最もダニが生息しやすいのは布団と枕です。枕については、一番簡単なのは枕を使わずに毎日洗い立てのタオルを重ねて枕代わりにする、という方法です。それでは熟睡できないという人は防ダニ枕カバーを使用するのがいいでしょう。布団については一番おすすめなのは防ダニ布団を使うということです。値段が高すぎて・・・、という人は防ダニシーツを検討すればいいと思います(注1)。

 布団の手入れについては、防ダニシーツや防ダニ布団のメーカーに相談するのがいいと思いますが、ここでは一般論について述べておきます。まず、布団の丸洗いは大変有効です。このときに可能であれば60度以上の熱水を使いましょう。あるいは(お金はかかりますが)クリーニングに出すのも有効です。クリーニング屋に防ダニ対策も頼んでおくと、熱水での洗浄、もしくは熱風での乾燥をしてくれます。布団乾燥機を使うなら、布団の中に入れるタイプではなく、布団全体を包み込むタイプのものが有効です。50度で20分が基準と言われています。

 こうしてみてみると、ダニ対策というのはかなり大変です。時間もお金もかかります。「こんなことできるはずない!」と感じる人もいるかもしれません。そういう人におすすめなのは「転地療法」です。転地療法とは、アレルゲンが少ない地域、もっと簡単にいえば「環境のいいところ」に引っ越してしまうという"治療"です。例えば、喘息やアトピーに悩んでいる人の多くは、ハワイのコンドミニアムで3ヶ月も過ごせばかなりよくなるはずです。あるいはタイの東北地方(イサーン地方)やラオスに行っても多くの人は改善するでしょう。

 しかし、そのようなことを実際に実行できる人はほとんどいないでしょう。ということはある程度の時間とお金を費やしてダニ対策をするしか方法はないわけです。面倒くさい、と感じる人は、将来ハワイのコンドミニアムに居住することを夢にして、ハワイでくつろいでいる自分の将来の姿を空想しながら取り組んでみてはいかがでしょう・・・。


注1:念のために断っておくと、私はどこかの防ダニグッズメーカーから供与を受けているわけではありませんし、特定の会社を推薦しているわけでもありません。しかし、診察室で患者さんから質問を受けたときは、ヤマセイ株式会社を紹介することがあります。同社は私が所属している日本皮膚科学会、日本アレルギー学会の双方が賛助会員にもなっています。興味のある方は下記を参照ください。
http://www.drdanizerock.com/product/hq-futonset.html

 

参考:
はやりの病気第118回(2013年6月)「ダニほど誤解だらけの生物はいない」