医療ニュース

2014年6月16日 梅毒が増えていると言うけれど・・・

  ここ1~2ヶ月の間、梅毒が増えているという新聞記事を目にする機会が多いように思われます。記事のタイトルの例(すべてオンライン版)を少し紹介すると・・・

「梅毒、若い男性に増加 妊婦通し胎児にうつる恐れも」 日経新聞(2014年5月23日)
「梅毒、都市部の男性中心に拡大 昨年、21年ぶり千人超」 朝日新聞(2014年6月6日)                                                             「梅毒が東京でアウトブレイク」 読売新聞(2014年5月20日)
「梅毒が若年層に増加 昨年1000人超、「過去の病気」ではない!」産経新聞(2014年4月6日)
「梅毒、なぜか急増 3年で倍、国が注意喚起 検査拡大が必要」共同通信(2014年5月27日)

 なぜこのような報道がおこなわれているかというと、2013年の梅毒の届出件数が例年に比べて増加しているからです。

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 しかしこれは実態を反映していないと私は考えています。つまり、梅毒が突然急激に増えたのではなく単に届けられる件数が増えただけです。感染症の発生動向は、その感染症の種類によって充分に注意をしなければなりません。一般に、重症となりうる感染症については発表される感染者数は比較的正確です。なぜなら診断した医師は届出をおこなわなければならないと考えるからです。HIVがその代表でしょう。ですからHIVについては、医療機関で診断がついた人数と届出された人数にそれほど差はないといえます。(ただし検査を受けておらず感染していることに気付いていない人は大勢います)

 一方梅毒は、治療をすれば比較的簡単に治る疾患ということもあり、医師が届けていないことがまあまああるのです。届出を怠れば(たしか)50万円以下の罰金則があったと思うのですが、実際にこれを払った医師というのは聞いたことがありません。届出を怠るのは医師の怠慢ではないか、という声があるでしょうが、届出義務があることを知らない医師も少なくないというのが実情です。

 梅毒の届出数が実態を反映していない理由は他にもあります。例えば、医師が梅毒の診断をつけられなかったけれど、リンパ節の腫脹や皮膚症状から抗菌薬を処方して結果的に治った、というケースも少なくないと思われます。また、梅毒がHIVと異なるのは、自然治癒もありうるということです。いつのまにか感染していつのまにか治っていたというケースではそもそも医療機関を受診しません。あるいは細菌性扁桃炎や細菌性腸炎など他の理由で抗菌薬の投与を受け、たまたま感染していた梅毒も治ってしまったと思われる例も少なくありません。

 もちろんHIVと同じように、感染していて治療が必要だけれども、無症状のために検査を受けていない、という人も大勢いるに違いありません。

 では、現在日本に梅毒に感染している人は実際にはどれくらいいるかというと、発表されている人数の数倍から十数倍にはなるのではないかと私はみています。日本ではHIV陽性者の多くが男性同性愛者であるのに対し、梅毒は女性やストレートの男性にも珍しくありません。実際、太融寺町谷口医院の患者さんをみてみても、梅毒は性別や性指向に関係なくみつかります。

梅毒は簡単に治る病気ではありますが、発見が遅れると、脊髄まで進行して車椅子の生活を余儀なくされたり、母子感染で奇形が生じたりすることもあります。

 新しいパートナーができれば性交渉を持つ前に検査、が最善ですが、突然生まれるロマンスもあるでしょう。今からでも遅くはないので交際しているカップルは二人で検査を受けるべきです。現在パートナーがいないという人でも思い当たる行為のある人は検査を受けるべきでしょう。

(谷口恭)

参考:「増え続ける梅毒」(NPO法人GINAウェブサイトより)


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2018/05/16

2018年4月17日より本ページで予告していましたように、2018年5月16日より麻疹風疹混合ワクチンの接種は、当院をかかりつけ医にしている方(及び当院に一度でも受診したことのある方)に限定させていただきます。