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2015年5月15日 リベリア、エボラは終息するもコンドームは永遠に

  2015年5月9日、WHO(世界保健機関)はリベリアにおけるエボラ出血熱流行の終息を宣言しました。同国では今回の流行で合計10,564人が感染し、そのうち4,716人が死亡しています。3月27日に最後の感染者が死亡し、その後42日間が経過しても新たな感染者の報告がなかったために終息したと判断されました。

 このリベリアの終息宣言については外務省のウェブサイトにも掲載されていますし、マスコミでも報道されました。しかし、日本のマスコミはほとんど報じていないものの、このリベリアでの<最後の死亡者>で注目すべきことがあります。

 2015年3月28日の『New York Times』によると、リベリア政府は、エボラ出血熱ウイルスに感染して治癒した男性全員が性交渉においてコンドームを「永遠に」着用しなければならない、という通達を出したのです(注1)。(「永遠に」は原文ではIndefinitelyです)

 同紙によると、リベリアで3月27日に死亡したのは44歳の女性で、診断がついたのは3月19日です。エボラ出血熱ウイルスの潜伏期間は最長21日であり、感染したのは2月26日以降ということになります。感染源はパートナーからとしか考えられず、そのパートナー(男性)はそこからみて3ヶ月前に「完治」しています。

 研究者は、このパートナーの男性の精液を分析しウイルスを検出したようです。ウイルスは精液のなかではかなり長期で生息することが判り、リベリア政府は「永遠に」コンドームを使用することを義務づけたのです。

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 エボラ出血熱ウイルスの感染力は強く、世界中から支援に集まった複数の医療者も治療行為を通して感染しています。

 2015年5月10日には、イタリアの人道支援のNGOに所属しているイタリア人男性がエボラ出血熱を発症し現在入院治療を受けているそうです。この男性も回復後「永遠に」コンドームを装着しなければならない、ということになるでしょう。精液からウイルスを完全に除去する技術が確立されない限りは、この男性は生涯出産を諦めなければならなくなります。


注1:『New York Times』のこの記事のタイトルは「Liberia Recommends Ebola Survivors Practice Safe Sex Indefinitely」で、下記URLで読むことができます。
http://www.nytimes.com/2015/03/29/world/africa/indefinite-safe-sex-urged-for-liberia-ebola-survivors.html?_r=0


参考:はやりの病気第132回(2014年8月)「エボラ出血熱の謎」