医療ニュース

2015年10月30日 睡眠不足で風邪のリスクが4倍以上に

 毎日同じ時間に起きて同じ時間に寝るようにしましょう・・・

 これは私が多くの患者さんに伝えているメッセージです。(聞き飽きたという人も少なくないはずです・・・) この「習慣」は非常に大切で多くの疾患を予防することができます。長期で続けると生活習慣病の予防になりますし、ほんの1~2ヶ月実施しただけで片頭痛が大きく改善したり、うつ病がよくなったり、ということは決して珍しくはありません。適切な睡眠時間を確保し、可能な限り起床時間と就寝時間を同じにすることが大切なのです。

 今回お伝えしたいのは、睡眠不足が風邪のリスクになる、ということです。これだけを聞けば、経験的にもそうだろうなぁ~、という気がしますが、今回紹介したい研究の結論は、なんとそのリスクが4倍以上にもなるというものです。

 医学誌『Sleep』2015年9月号(オンライン版)に掲載された論文(注1)の概要を紹介したいと思います。この研究の被験者は、米国ピッツバーグ在住の健康な男女164人(18~55歳)です。この研究に驚かされるのは、ライノウイルスという鼻風邪の病原体を被験者の鼻に注入していることです。わざと感染させるのは人道的にどうなのかな、という気がしないでもないですが、ここは話を進めましょう。

 被験者はライノウイルスを鼻腔に注入された後5日間ホテルに隔離され、風邪症状の有無が調べられました。その結果、睡眠時間が7時間以上の人に比べると、5~6時間の人は風邪をひくリスクが4.2倍に、5時間未満の人は4.5倍にもなったのです。

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 この研究が興味深いのは、単に睡眠時間でグループ分けして、どの睡眠時間のグループが風邪をひきやすいかを調べたわけではないからです。ライノウイルスを実際に注入したということは被験者全員に同じ条件を与えています。そしてホテルに隔離していますから、他から感染する可能性が極めて低くなっているのです。ですから、この研究は科学的な確証度はかなり高いといえます。

 それにしても4倍以上というのは驚かされます。これからの風邪の予防は「うがい・手洗い」ではなく、「うがい・手洗い・睡眠を」というキャッチフレーズにするのはどうでしょうか。

注1;この論文のタイトルは「Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.journalsleep.org/ViewAbstract.aspx?pid=30153

参考:メディカルエッセイ第128回(2013年9月)「同じ時間に起きて同じ時間に寝るということ」