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2015年10月6日 「酒さ」の原因は生活習慣と遺伝

 医療者にとっては「よくある疾患(common disease)」と認識されているけれども、一般の人にはあまり知られていない病というのがいくつかあります。

 酒さはそのひとつで、これを正しく読めない人もいるのではないでしょうか。酒さは「しゅさ」と読みます。英語はrosaceaで、無理矢理カタカナにすると「ロゼイシア」となります。

 我々医療者が不思議に感じるのは、酒さを患っている患者さんは決して少なくないのに、なぜかマスコミなどであまり取り上げられず知名度が低いということです。

 酒さとは一言で言えば「顔面に生じる慢性の炎症性疾患」です。単に赤くなるだけのこともあれば、一見ニキビのような小さな腫瘤ができることもありますし、重症化すれば鼻が変形することもあります。

 原因については「不明」と言われることが多いのですが、おそらくそのことが原因ではないか、あるいは少なくともそれが悪化因子になっているだろう、という印象を受けるものはいくつかあります。

 最も多いのがステロイド使用です。長期間ステロイド外用薬を顔面に塗布すると酒さが生じることがあるのです。ただし、ステロイドのせいで「酒さの様になった状態」は「酒さ様皮膚炎」と呼び、酒さと区別することもあります。興味深いことに、ステロイドによる酒さ(酒さ様皮膚炎)はステロイド外用を使用しているときだけでなく、中止した後に生じることもあります。そして治療に難渋します。また、ステロイドは外用だけでなく、過去に内服や注射をしていたことで酒さ(酒さ様皮膚炎)が生じることもあります。

 ステロイドの使用以外の酒さの原因はいろいろあるだろうと考えられますが、実態はよく分かっていません。また遺伝的な要因もあるのではと考えられていますが、これまできちんとしたデータがありませんでした。

 酒さの原因の46%は遺伝である・・・

 このような研究発表がおこなわれ、医学誌『JAMA Dermatology』2015年8月26日号(オンライン版)に掲載されました(注1)。

 酒さをきたす遺伝子が特定できたわけではありませんが、この研究では対象者を双子としているために信憑性は高いと言えます。対象者の双子は米国在住18~80歳の合計275組で、一卵性双生児が233組、二卵性が42組です。

 研究の結果、酒さのリスクの46%に遺伝が関与していることがわかりました。遺伝以外のリスクとしては、生涯の紫外線曝露、加齢、肥満、喫煙、飲酒、心疾患、皮膚がんがあることがわかったそうです。

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 現在の医療技術では遺伝子を変えることはできません。つまり46%の要因はどうにもならないわけです。しかし残りの54%は努力次第でリスクの減少を図ることはできます。たとえば、若いうちから紫外線対策をおこない、太らないように気をつけ、禁煙し、深酒をしない、といったことで酒さのリスクの半分を下げることができるわけです。

 そして、これはおそらく酒さの診断がついた後も、こういったリスクの低減に努めることにより、完全治癒には至らなくとも改善させることが期待できると考えるべきです。

 酒さは治療に時間がかかることもあり、諦めてしまっている人やドクターショッピングを繰り返している人が少なくありません。しかし、治療が功を奏し、「完治」にまでは至らなくてもかなり「いい状態」を維持できる人も多いのも事実です。様々な治療法がありますから、決して諦めるべきでない疾患です。


参考:トップページ「ニキビ・酒さ(しゅさ)を治そう」


注1:この論文のタイトルは「Genetic vs Environmental Factors That Correlate With RosaceaA Cohort-Based Survey of Twins」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://archderm.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2429555&resultClick=3