医療ニュース

2015年11月2日 マニキュアに含まれるホルムアルデヒドの実態

 すでに各マスコミで報道されているように、100円ショップ「ザ・ダイソー」を展開する大創産業(広島県東広島市)が、2015年8月に発売したマニキュア「エスポルールネイル」全148種類の販売を中止し、自主回収すると発表しました。理由は、「ホルムアルデヒドが検出されたから」というものです。

 大創産業によりますと、件のマニキュアは中国の工場から大阪市の会社を通じ約576万個を仕入れたそうです。76種類からホルムアルデヒドが検出され、10月16日に大阪府健康医療部薬務課に販売中止が指示され、22日より製品回収と返金をおこなっているようです。

 実際に、このマニキュアを使用した消費者から「手荒れ」「爪の変色」などの被害が寄せられているようで、回収は適切な判断であり、このマニキュアを使用したことがある人はしばらくの間注意が必要でしょう。(爪の変化、変色などは時間がたってから生じる可能性があります) 

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 一連の報道から分からないことがあります。ホルムアルデヒドは、かつて建材に含まれていることからシックハウス症候群の原因になることが指摘され、規制が厳しくなったという経緯があります。現在の規制は(一般人からみると)非常に複雑であり、たとえばホルムアルデヒドを発散する建築材料を使用するときには一定の面積制限が設けられており、また一定の条件で換気設備を設けなければならないという規則もあります。しかしながら、ホルムアルデヒドを発散する建材が一切禁止されているわけではありません。

 他の製品も同様です。家庭用品からもホルムアルデヒドは検出されることがあり、これらは規制値以下であれば問題ないとされています。たとえば、乳幼児用のおしめや寝具(枕や毛布)では16ppm以下、大人用のシャツや靴下、パジャマでは75ppm以下、かつらやつけまつげも75ppm以下と規定されています(注1)。

 ホルムアルデヒドには防腐作用があり、また速乾性ですから、おそらくマニキュアには(健康被害のリスクを除外すれば)適しているのでしょう。しかし被害の報告が世界中であるのも事実です。

 私が調べた限り、マニキュアのホルムアルデヒドの検出の規制値に触れた情報はありません。ここは消費者庁、または厚生労働省が上記に記したおしめやパジャマなどと同じように規制値をきちんと公表し、各メーカーが発売時に数値を発表すべきだと私は思います。

 ちなみに、ニューヨークでもマニキュアを含むネイルサロンでの健康被害が問題になったことがあり、「三大毒素(toxic trio)」として、トルエン、ホルムアルデヒド、フタル酸ジブチルが挙げられています(注2)。


注1:この規定は東京都福祉保健局の下記のページに掲載されています。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/iyaku/anzen/law_qa/horu_kisei.html

注2:Reuterの下記の記事が参考になります。タイトルは「New York City needs to step up nail salon inspections: watchdog(ネイルサロンへの検査を厳しくすべき)」です。

http://www.reuters.com/article/2014/09/15/us-usa-new-york-nails-idUSKBN0HA26D20140915