医療ニュース

2016年1月9日 妊婦のダイエットで子供が脂肪肝

 無理なダイエットなどでやせている妊婦から生まれてくる子供は脂肪肝になりやすいことが以前から指摘されていました。このメカニズムを分子レベルで解明し、さらに改善させる方法についても言及している論文が医学誌『Scientific Reports』2015年11月19日(オンライン版)に掲載されました(注1)。日本人による研究です。

 エサを40%少なくすることで栄養不良にした妊娠マウスから生まれた子供マウスの肝臓が調べられています。肝臓には、異状な形態をした役に立たないタンパク質が蓄積し、これを除去するために免疫をつかさどるマクロファージの一種が増え、結果として炎症が生じ脂肪肝となっているようです。

「シャペロン」という最近注目されている物質があります。これは、わかりやすく言えば、形状がおかしくなって本来の機能が発揮できなくなったタンパク質に働きかけ、おかしくなった形を元に戻してあげることのできる物質で、形が元に戻ったタンパク質は機能を取り戻すことができるのです。

 今回の研究では、このシャペロンを脂肪肝の子供マウスに投与しています。結果、タンパク質が本来の機能を取り戻し、脂肪肝が大きく改善したそうです。

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 シャペロン(chaperon)の元々の意味は「若い女性が社交界にデビューするときに付きそう年上の女性」のことです。形が崩れて正常の機能を無くしてしまったタンパク質(若い女性)に働きかけ元に戻すことができる(シャペロン)ことからこの名前が付けられたと言われています。

 (ヒトの)若い妊婦さんから生まれた子供(もしくは妊婦)にシャペロンを投与すれば、脂肪肝が防げるのではないかという意見もあるようですが、シャペロンに過度の期待をするのは筋違いでしょう。

 つまらない正論に聞こえるかもしれませんが、妊娠中こそ、過度なダイエットを避け、適正な体重を維持することに努めなければなりません。


注1:この論文のタイトルは「Undernourishment in utero Primes Hepatic Steatosis in Adult Mice Offspring on an Obesogenic Diet; Involvement of Endoplasmic Reticulum Stress」で、下記URLで概要を読むことができます。

http://www.nature.com/articles/srep16867