医療ニュース

2016年11月17日 寒いところに住めばうつ病になりやすい?

 南国に住んでいる人は陽気で楽天的。うつ病とは無縁の人生...。

 こういうイメージを持っている人が多いと思います。私自身もこのような印象があり、実際、タイ人やフィリピン人の底抜けの明るさに感動を覚えたことが何度もあります。日本でも、沖縄で「おばー」に「なんくるないさー」と言われて心が洗われるような経験をしたことがあります。

 一方、寒い地域の人たちに対するイメージは、笑顔が少なく、行動範囲が狭く(雪のせいで仕方がないのですが)、陽気な印象はあまりありません。

 もちろん、これは一種の「偏見」であり、南国に住む人全員が陽気というわけではありませんし、北国に住む人の大半が陰気というわけではないでしょう。ただし、世界的な統計をみてみても、タイやフィリピンは自殺の少ない国にランクされます。日本でも、東北地方は比較的自殺率が高いことはよく知られています。(警察庁の2015年の統計(注1)では、沖縄は自殺率が低いランキングで19位。ずば抜けて低いわけではなさそうです)

 今回、カナダで緯度と自殺率の高さの関係が調べられた研究が報告されたのでお伝えしたいと思います。その研究では、「緯度が高いほどうつ病の罹患率が上がる」、つまり「寒い地域に住むとうつ病になりやすい」という結論がでています。医学誌『Canadian journal of psychiatry』2016年10月11日号(オンライン版)に掲載されています(注2)。

 この研究は、全国規模でおこなわれた2つの調査(The National Population Health Survey、the Canadian Community Health Survey)を解析することによりおこなわれています。調査期間は1996~2013年で、全回答者のうち、495,739例については「うつ」の調査がおこなわれており、これらのデータと緯度との関係が調べられました。緯度は郵便番号で解析されています。

 結果、緯度が高くなれば、うつ病の有病率が増加することがわかったそうです。また、この傾向は北緯55度未満で発生する傾向があったとされています。

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 カナダは地理的に最も南の都市がトロントになると思います。調べてみると、トロントで北緯43度でした。ちなみに、北緯55度に近い有名な都市となると、エドモントンで北緯53度です。この研究は、だいたい北緯43度から緯度が上がるにつれてうつ病の有病率が上昇し、その傾向は北緯55度まで続く、と読むことができます。

 となると、気になるのは、北緯55度以北はどうなのか、ということと、北緯43度まではどうなのかということです。北緯55度以北の国となると旧ソ連と北欧が該当し、厚労省のデータ(注3)によれば、たしかに旧ソ連の国は人口あたりの自殺率が高いような傾向があります。しかし北欧については、以前は自殺が多い国と言われていたこともありましたが、現在はそうではありません。

 では、北緯43度以南はどうなのでしょう。先に述べたように東北地方の自殺率が高いことは有名ですが、北海道ではそうでもありません(注1)。

 この研究を聞いてもうひとつ気になるのは、北緯43~55度までなら日本で同じことが言えるのか、ということです。ちょうど札幌が北緯43度くらいです。カナダのこの研究が普遍的なものだとしたら、札幌より北部に住むとうつ病になりやすい、ということになりますが、実際はどうなのでしょう...。


注1:警察庁の下記ページを参照ください。
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H27/H27_jisatunojoukyou_01.pdf

注2:この論文のタイトルは「Major Depression Prevalence Increases with Latitude in Canada」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://cpa.sagepub.com/content/early/2016/10/03/0706743716673323.abstract

注3:下記を参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/hoken-sidou/dl/h22_shiryou_05_08.pdf



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