医療ニュース

2017年10月6日 歯科医院の半数は依然医療器具使い回し

 院内感染とは、医療機関内で不潔な医療器具などを通して感染症に感染させられることを言います。致死的な感染症になりうるB型肝炎(HBV)、HIV、C型肝炎(HCV)などに感染させられるようなことは絶対に避けなければなりませんが、日本の歯科医院ではいつ起こってもおかしくありません。

 なんと日本では、歯の治療で使われるハンドピース(歯を削るドリル)の滅菌をおこなっていない歯科医院が異常に多いのです。私はこれは大きな問題だと考え、過去に2回問題提起したことがあります(注1)。

 当たり前の話ですが、ハンドピースの使いまわしなど絶対にあってはならないことです。それが過去のコラムで紹介したように、2012年の時点で何と7割もの歯科医院がきちんと滅菌していなかったのです。そして、今回、厚労省が研究班の新たなアンケート結果を2017年5月に公表しました(読売新聞2017年9月27日)。

 結果は、半数が依然使いまわしをしていることが判りました。7割から5割に改善した!、と考えるわけにはいきません。きちんと滅菌する歯科医院が100%でなくては、一般市民が安心して受診できないからです。100%の歯科医院がきちんと滅菌していることが当然なのです。

 読売新聞の報道から数字を取り上げてみましょう。アンケートに回答したのは700施設。下記が回答です。

患者ごとに交換、滅菌: 52%
感染症患者の場合交換、滅菌: 17%
血が付いた場合などに交換、滅菌: 16%
消毒薬で拭く:  13%

 過去のコラムでも述べたように、「感染症患者の場合交換」と回答すること自体が信じられません。これも過去に述べましたがHIV陽性者が歯科医院を受診するとき、大半が感染していることを隠しています。また、HIV感染に気付いていない人も少なくありません。

「血が付いた場合などに交換」も呆れる回答です。血液は微量なら見ても分かりませんし、HBVは唾液にも含まれているからです。

 では、どのようにしてきちんと滅菌している歯科医療を見つければいいのでしょうか。実は、この答えは簡単です。滅菌してますか?と滅菌していない医療機関に尋ねても、真実は話さないでしょう。そこで、「この歯科医院ではHIV陽性者も診ていますか?」と尋ねればいいのです。きちんと対策をとっているところであれば「もちろん診察しています」という答えが返ってきます。

 私が患者として受診している歯科医院もHIV陽性の患者さんが受診し、もちろん滅菌は完璧におこなわれています。

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注1:下記の2つのコラムです。

毎日新聞「医療プレミア」2016年11月6日「歯科医院での院内感染を防ぐには」

GINAと共に第95回(2014年5月号)「HIVを拒否する歯科医院と滅菌を怠る歯科医院」